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神楽  作者: しのぶ
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1-4

「いくら攻撃してもまるで意味がない。これじゃあこっちが先に体力の限界がきちゃうよ」


 火蓮(かれん)は目の前の障害に冷や汗をにじませていた。その隣には同じように息が上がった寿(ことぶき)もおり、2人とも切り傷を負ってはいるが、今のところ致命傷のようなものはない。原因はその障害——鬼蜘蛛と名乗った『鬼』であった。


「……手段を変えないと」

 寿も焦りを覚え始め次の行動を考える。


 短くない時間の間、2人は鬼蜘蛛に対しさまざまな攻撃を行っていた。寿は主に素手での攻撃だが、その威力は凄まじく、すでに部屋のあちこちには重機で掘ったような穴があり、その威力が伺える。また、火蓮も自身の持てる多種多様な銃を取りだし、それを鬼蜘蛛に対して使っていたが、どれも致命傷を与えたとは思えない。それの理由は————。


「手段って言っても、いくら攻撃しても回復されちゃ、やりようがないよ」


 火蓮の言うとおり、2人の攻撃は確かに鬼蜘蛛へ届いているが、その全てが回復されている。傷を負ってもその回復力でなかったことにされてはいずれこっちの体力が尽きるのは目に見えていた。


「……だったら、回復できないくらいに」


 寿は人海戦術のように多数の攻撃を繰り出すと判断する。だが、それをしているのは寿1人なのだが。それでも寿ならそれを可能にしてしまうほどの戦闘力があることを今までの戦いで火蓮は理解していた。


 火蓮は寿にアイコンタクトを送るように目を合わせるとサポートをする。

 前衛が寿、後衛が火蓮のような形になるように。これまでの戦いで2人は十分な連携ができるようになっていたが、そのことごとくを自身の回復力で凌駕するのが鬼蜘蛛だった。


「作戦会議は終わったか、あぁ? でも、もう気がついているように俺様にいくら攻撃したとこで無駄だぜ」


 嫌味な笑みを浮かべながら寿の攻撃をいなす鬼蜘蛛。手には自身で構築した刀を持ち、四方八方から繰り出される寿の攻撃を防いでいた。

 余裕そうに見える鬼蜘蛛に対し、火蓮はそろそろ限界を迎えていた。

 体がだんだんと重たくなるのを感じる。視界が歪みはじめ、思考がまとまらなくはじめていた。


「ちょっと体力がやばいかもなぁ……」

 呼吸が苦しくなってきた火蓮の体力は、寿よりも長く戦っているせいか体力の消耗が激しい。いや、それだけではない。

「……大丈夫?」

 火蓮の様子が気になったのか寿が鬼蜘蛛の隙をついて側にくる。

「ごめん。ちょっとね……。でも、大丈夫だよ」

「いい。ちょっと休んでて」

「1人じゃ無理だよ。大丈夫。すぐ終わらせればいいだけだから」


 だが、そんな火蓮の様子は強がっているようにしか見えない。それは寿でも分かるほどに。

 自分の武器である銃を使いすぎたのか、手が震えていた。これでは狙いを定めるのもできそうにない。

 かといって、確かに寿1人ではどうにもならない。今、鬼蜘蛛となんとか渡り合えているのは火蓮と寿、2人で戦っているからだ。もし今、火蓮のサポートがなければ寿だけでは太刀打ちできないだろう。


 どうすればいいのか悩んでいる寿の前に鬼蜘蛛がいきなり大きな笑い声をあげる。


「どうだ? そろそろだろう、あぁ?」

「……なにが」

「なにってそいつだよ。てめえの隣で今にもぶっ倒れそうな————」


 鬼蜘蛛の差す方向には火蓮が。火蓮の体力切れを狙っていたかのように。


「狙ったんだよ。俺様がなにも考えずにここまできたと思ってんのか? 俺様はこう見えて慎重な性質でな。いろいろ調べさせてもらった」

「……なんのこと」

「てめえらの周辺のことさ。そういえばもう2人、ここに迷い込んだやつがいるようだが、あのバカ2人は絶賛迷子中。助けにきたのかもしれんが、これでは助ける前に終わっちまう。バカすぎるぜ、あぁ?」


「————っ!?」


 鬼蜘蛛言ったことが信じられないとばかりに先に反応したのは火蓮だった。


「ど、どういうこと?」

 動揺する火蓮の問いかけは鬼蜘蛛ではなく寿へと向く。

 火蓮は寿が1人できていると思っていた。そして今、鬼蜘蛛が言った2人とは火蓮が知っている限りあの2人しかいない。いつもだらけた生活をした白髪頭の男と周りに迷惑を振りまくシスター服の少女しか。


「……新也とアリシアもきてる」

「っ! な、なんで! なんで、みんな……。私の問題なのに……」

「もう遅い。みんなきたし、それにもう私は火蓮と一緒に戦ってる。だからこれはもうみんなの問題。火蓮一人の問題じゃない」


 初めてだった。寿のはっきりとした意思表示は。それは火蓮の胸に大きく突き刺さる。がんじがらめになった鎖を解くように。


「……だからここで死ぬわけにはいかない。火蓮も私も」

「寿……。いや、ありがとう……」

「? これは私のため。私がそうしたい思ったから」

「それでも、だよ。そう思ってくれた寿の気持ちが嬉しいから」

「………………そう」


 少し悩んだように見えた寿はそれだけつぶやくとまた鬼蜘蛛を見やる。気を引き締め、これが最後と言わんばかりに。


「そうだよね。私もここで死ぬわけにはいかないから……」


 例え体力が限界を迎えようと、手が震えて銃がうまく握れなくても、照準が合わせれなくても、でもまだあきらめるわけにはいかない。なにせ2人はまだ生きているのだから。己が死ぬまであきらめるわけにはいかないのだから。


「なにちょっといい感じになってんの、あぁ? 俺様は別にてめえらを元気づけるために言ったわけじゃねえんだがな」

「だったら、あんたの失敗だね。そろそろ決着をつけさしてもらうよ!」


 火蓮は寿に目で合図を送るとそれに合わせ寿が走りだす。身を引くくし全体重を前へ。寿の大ぶりな拳で揺動をする。その間に火蓮は新たな武器を懐から取りだす。それは小柄な火蓮の半分はある大きな銃——ショットガンだった。


「そろそろ同じ手には飽きてきてんだよなぁ、あぁ?」

 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と寿を(かわ)し、更に攻撃を加える鬼蜘蛛だったが、逆にそれが隙を作ってしまう。


 寿を頭から切りつけようとした鬼蜘蛛は、遠距離から銃で撃ってくるであろう火蓮を注意していた。しかしその姿がない。どこから撃ってくるのか。狙撃手に警戒していたが、鬼蜘蛛の考えより火蓮の方が一枚上手をいっていた。


「こっちだよっ!」


「————っ!」

 気がつけば火蓮は鬼蜘蛛の顔面へと蹴りを入れていた。突然の行動に対処が遅れてしまう鬼蜘蛛。たがこのぐらいなら問題ない。なにせ鬼蜘蛛には脅威の回復力があるのだから。


 しかしそれは火蓮も寿も承知の上。この隙を逃すまいとさらに攻撃を加える。

 寿の強烈な一撃は鬼蜘蛛の腹を貫き、そこからおびただしい血が溢れる。


「まだまだ!」

 火蓮は手にしていた身の丈の半分ほどのショットガンで再度、顔面を殴りつける。それなりの重量があるショットガンで頭を殴られた鬼蜘蛛は一瞬意識が飛びかけるが、歯を食いしばりなんとか耐える。

「っく!」


 一旦距離を取ろうと離れる鬼蜘蛛だったが、それを寿が許さず、鬼蜘蛛の腕を掴むとそのまま引き寄せ心臓を目掛けその拳を貫こうとする。

 

 火蓮と寿による連撃で翻弄(ほんろう)される鬼蜘蛛。2人は例え回復するとしても心臓さえ潰せば倒せると判断したのだ。そのための連撃、連携。それはきれいに決まり、最後の一手にまで鬼蜘蛛を追い詰める。


「いい加減にしろォ!」


 しかしそれは鬼蜘蛛が自分の腕を切り離し、避けてしまう。驚異の回復力がなければできない芸当に寿は驚きの声をあげるが、後ろから火蓮の冷静な声がかかる。

 

「いいや、チャックメイトだよ。寿、下がって!」


 火蓮はさらに先のことを考えていたのだ。それはこれまでの経験。教え込まれた戦闘技術だった。いや、それだけではない。火蓮の戦闘スキルがもとから高いのだ。人間の何倍も。


 意図を察した寿はすぐさま鬼蜘蛛から距離を取る。

 寿の後ろからいきなり姿を現した火蓮は先ほどと同じショットガンを構え、それを鬼蜘蛛に向けていた。


 そして部屋に今までとは比べ物にならないほどの銃声が鳴り響く。


「あがっ!」

 それは鬼蜘蛛の顔を貫く。いや顔だけではない。肩や胸、腹にまで、いたるところに当たっていた。


「私の改造ショットガンだよ。危険すぎるから使うの怖かったけど、化け物相手なら関係ないよね」


 火蓮のショットガンは威力が上げられ、さらに散弾銃になっていた。鬼蜘蛛の体を貫通した弾は部屋の壁にまで埋まっているほどだ。


「それに、————まだだよ!」


 火蓮は未だ倒れない鬼蜘蛛に対して続けてショットガンを打つ。何度も何度も何度も何度も。その度に重たい銃声が鼓膜を刺激し、そして鬼蜘蛛はその形を失い、赤い液体へと姿を変えていった。最後には穴だらけに、さらには頭はもうなくなっていた。残ったのは穴だらけの上半身と下半身ぐらいでそれは力なく地面へと倒れていく。


「はぁ、はぁ、はぁ、こ、こんだけやれば……」


 緊張の糸が切れたのか、火蓮はショットガンを床に落とすとそのまま倒れそうになるが、それを寿が支える。

「あ、ありがとう、寿。私のせいでごめんね」

「いい。それより体力を回復させないと」


 寿の言うとおり、火蓮の体力は限界をすでに過ぎていた。もう立っていられなくなるほど。


「そうだね。こんなところ新也に見つかったらバカにされちゃう」

 もう帰ることはないと思っていたのに、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。それに思ったより新也達に会えるのが楽しみになっているなんて————。


「ああ。死体になってたらバカにされるだろうよ、あぁん?」


「——火蓮っ!」


 後ろから声が聞こえた瞬間、寿は条件反射で火蓮を突き飛ばしていた。しかしそのおかげで火蓮は助かった。助かったのだが……。


「寿!」

 火蓮の視線の先には壁に打ちつけられた寿が頭から血を流している。苦しそうにしているが、それでも一応まだ意識はあるようだ。


「まさかそこから防御姿勢をとりやがるとは、大した反射神経だぜ、あぁん?」


「————っ!? な、なんで……」

 声のする方を火蓮は視線を移すが、その目に映ったものが信じられず声が出なくなる。

「あの程度で俺様が死んだとでも。はっ! ンなわけねえだろ、あぁん?」


「……鬼……蜘蛛」


 そこには上半身は原型を留めず、頭は吹き飛ばされたはずの鬼蜘蛛の姿があった。いや、あれが本当に鬼蜘蛛なのか火蓮は信じられなかった。なぜなら、鬼蜘蛛の姿が以前と変わっていたからである。


「なんで、どうなって……」


 声にならない声を出す火蓮。その様子を面白そうに口の端をゆがめる鬼蜘蛛の姿は銃弾のあとはまったくなく、それどころか成長したように見える。体は人間大だったはずなのに今ではもう見る影もない。皮膚は黒く染まり、獣のように体毛が生えており、そして額の角は己を主張するように大きくなっていた。赤く光る八つの目は同じだが、口は大きく開きそこから牙が覗いている。これでは人間はもとより鬼でもないように見えてしまう。どちらかと言えば蜘蛛に近い存在になっていた。


「……に、逃げて……火蓮……」


 薄れる意識の中、寿は必死にその体を起こそうとしていた。しかし思うように体が動かない。先ほどまでの鬼蜘蛛の攻撃とは比べ物にならないほどの威力があった。こんなもの体力が尽きている火蓮が食らえばひとたまりもない。それに避けることもできないだろう。


「寿! いますぐ————っ!?」


 火蓮は寿の駆け寄ろうとしたがしかし、それに立ちふさがるように姿形を変えた鬼蜘蛛が歩みでる。

「おいおい、俺様を無視してんじゃねえよ、あぁン? こっからが本番だぜ」

「くっ! あんたなんか!」


 懐から拳銃を取りだし、それを鬼蜘蛛へ向けて放つがしかし、撃たれた鬼蜘蛛は怪しく笑うだけだった。


「う、うそ。銃弾が通らない……」

 黒く染まった鬼蜘蛛の皮膚は硬化したのか、銃弾が通らないほどになっていた。

 すぐに拳銃ではダメだと判断するが、火蓮にはそれ以上に武器を扱う力が残っていなかった。先ほどと同じショットガンを使えればあの皮膚を通せる可能性があったのだが、今はその体力が残っていない。


「ああ、知ってるぜ。それがてめえの弱点だってな」

「……な、なんで」

「だから俺様は慎重に調べてんだよ、あぁン。確かにてめえは比べ物にならないほど強いのかもしれない。だが、それは短期決戦での場合だ」

「っ……」

「体力が少ないんだよなぁ? それがてめえらの弱点だ。だから俺様はこの力を使っててめえの体力をずっと削っていたんだよ、あぁン」


 鬼蜘蛛に図星をつかれ、反論できなくなってしまう。全てを知ったうえで鬼蜘蛛は戦っていた。火蓮の体力が少ないことを知り、そして自分の回復力を計算に入れ、そしてそれを狙った。完全に先を読まれてしまった。ただでさえ勝てる見込みが薄かった相手にここまで用意周到にされては火蓮でも太刀打ちできない。


「そして! 体力がつきたてめえを俺様はなぶり殺してやる! あぁン!」

「————がはっ!」

 体力が尽きた火蓮は避ける暇もなく壁に殴りつけられてしまう。

「ゆっくり殺してやるからな、あぁン」


 鬼蜘蛛は手から糸状の繊維を出すとそれを刀に変え、火蓮へ歩み寄る。


 ゆっくりと、楽しむように、やっと願いが叶うと。やっと目的が果たせると。心底うれしそうに。自然と刀に力が入るほど。


「————やめろ」


 か細い声。しかししっかりと聞こえた。その声は鬼蜘蛛の真横からしたかと思うと、その瞬間、鬼蜘蛛の視界が歪む。


 気がつくと鬼蜘蛛の体は床にうつぶせで倒れていた。


「て、てめえ……」

 自分の目的を邪魔され怒りが湧き上がる鬼蜘蛛の視線の上には寿の姿があった。


 壁に打ちつけられ昏倒(こんとう)していると思ったが、どうやらそこから一気に飛翔(ひしょう)し、鬼蜘蛛の顔面目掛け蹴りを加えたらしい。


 しかしそんな寿もフラフラで立っているのもやっとの様子。寿の一撃を食らいはしたが、鬼蜘蛛は自身の回復力でダメージは少なく、すぐに立ち上がると寿を睨みつける。

「邪魔してんじゃんねえぞ、あぁン。殺すぞ」


 今までのように人をバカにしたような感じはなく、本気の怒りがそこにはあった。しかしそれでも引こうとはしない寿。たとえ自分の命に代えても火蓮は守るように。体に力を込める。


「いい加減てめえには飽きてんだ、そろそろ死ねや」

 鬼蜘蛛は火蓮から今度は寿へと標的を変え、ふらついている寿へ蹴りを入れる。


 体に力を込めたが、しかし鬼蜘蛛による蹴りは避けられず、もろに腹に食らい、そのまま横に吹き飛ばされる。

 倒れる寿はすぐに起き上がろうとするが、手に力が入らない。視界はどんどん悪くなっていくばかりで、体の感覚も遠のいている。すでに痛みも薄れている気がする。それでも歯を食いしばり立ち上がろうとするが、意志とは逆に床から体が離れなかった。


 そこへ鬼蜘蛛が歩み寄ってくると、寿の頭を掴み持ちあげる。

「あがっ……」

 力なく持ちあげられた寿の全身は力なくだらんとぶら下がっているようになり、鬼蜘蛛の力があればその命はすぐに消されるだろう。


 だが、それを許せないものがいる。

 みすみすやらせるわけにはいかない。ここで寿を傷付けるわけには。これが巻き込んでしまった自分への命令。これだけは破るわけにはいかない。

 例え体力がなくても、例え体が動かなくても、無理をしてでも、火蓮は動く。今の自分にはそれしかできないのだから。いや、それをやらなければならないのだから。


「は、はなせ……」

 火蓮は自分の体に鞭を打ち、懐から2丁の拳銃を取りだす。例え銃弾をはじくとしても、それでも寿だけは取りもどすと走り出す。


 だがその時、鬼蜘蛛の口角が上がるのを寿は見逃さなかった。掴まれてい頭を必死に振りほどこうとしながら声をあげる。


「……だ、だめ。きちゃ……だめ……」

 しかし、その声は火蓮には届かなった。それより先に鬼蜘蛛の刀は振りおろされていたのだから。


「————え、糸」


 鬼蜘蛛が振りおろした剣先からは糸のようなものが出ており、それは刀の軌道を描き、床に切れ目を作っていた。まるで見えない風の刃のように、床を切り裂き、壁を切り裂き、そして火蓮の体おも切り裂き。


「火蓮っ!」


 寿の声は確かに音になっていた。しかし今度は別の理由で届いていない。床に落ちる火蓮の左腕、そして倒れる火蓮自身。

 鬼蜘蛛の不可視の刃は火蓮の肩を抉り、そして火蓮の左腕を切り落としていた。あふれる鮮血が倒れる火蓮を呑みこんでいく。


「火蓮!」

「うるさい!」

 頭を掴まれたまま叫ぶ寿だったが、鬼蜘蛛の作った刀の柄で殴られ苦悶の声をあげる。


 今ここで意識を失うわけにはいかない寿は必死にもがこうとするが、鬼蜘蛛は寿を床に叩き付け、そのまま背中を踏みつける。


「——っあが、ぎっ!」


 背中を踏みつけられた寿は一気に体内の空気がなくなり、呼吸が苦しくなる。なおも鬼蜘蛛の足には力が増していき、背骨がミシミシと音をたてはじめる。


「————」


 その時、鬼蜘蛛の頭に衝撃がくる。でもそれは鬼蜘蛛の頭が少し傾く程度で……。


「は、放せ……、寿を……」


「さすがだぜ。その傷でまだ動けるとはな、あぁン」

 そこには左肩から大量の血を流しながら、意識を失いかけた火蓮がいた。右手には拳銃を握っており、震える手で鬼蜘蛛を狙っていた。


「だが、それでなにができる。早くしてねえとこいつ、死んじまうぜ、あぁン」

 まるでこの状況を楽しむように口角を上げ、足に力を込める鬼蜘蛛。


「……や、やめ、ろ……」


 火蓮はゆっくりとだが、確実に鬼蜘蛛へと近づいていく。ふらつく足取りで、意識だけを頼りに寿の元へ。


「ざんねんだったな」


 しかし、火蓮のその足は止められてしまう。いや、足だけではない体のどこも動かない。首を回そうにも、引き金を引こうにもまったく動かない。

「さぁ、こっちにこい」

 かと思うと、動かない体は宙に浮き、そのまま十字架に(はりつけ)られたように鬼蜘蛛の目の前へ。


「ぐっ……ま、また、糸……」


「ああ。俺様は蜘蛛だぜ。獲物を蜘蛛の巣で(から)めとるのは本能だ、あぁン」

 火蓮の体の周りには光る糸が無数にあり、それが火蓮の体を拘束していた。よく見なければ分からないほどの糸によって。


 その状況を遠目で見ていた寿は、すぐにでも火蓮を助けようと手に力を込めて立ち上がろうとする。踏みつけられた足ごと。


「おっと、まだこんな力残ってんのかよ。てめえはそこでじっとしてろっ!」

「がはっ」

 しかし鬼蜘蛛が足に力を込めるとそのまま床に押し付けられてしまう。それでも寿は抵抗をやめず、なんとか立ち上がろうとする。


「あ、足を、ど、けろ……」

「ちっ。てめえらのタフさには驚くぜ。だがもう遅い」

 床との距離を離しながら、寿は火蓮の方へ視線を向ける。今すぐにこの足をどけて火蓮を助けるために。


 だが、火蓮の胸元には光る刃が——鬼蜘蛛の凶器がすぐそこにあった。


「や、やめろっ!」

「さあ、これで終わりだ。やっと俺様の悲願が達成できる」


 鬼蜘蛛はその凶器を一度引くとそのまま火蓮の胸へ—————。


「やめろぉぉぉぉおおおおお」


 こんな大声出しことないかもしれない。そんな寿の声の後には静けさだけが残っていた。


「…………」


 聞こえるのは滴る水の音。そしてその水の音は滝の音に変わったかのように大きくなる。

 それは鬼蜘蛛が刀を火蓮の胸から抜き、そしてそこからあふれる火蓮の大量の血液だった。


「死ねばただの肉塊だな、あぁン。……なんとか言ってみろよ! あぁン!」


 鬼蜘蛛は動かない火蓮を怒鳴りつけるように声を大きくするが、すでに火蓮の意識はなく、そこには火蓮の形をした塊だけがあった。

 そして火蓮の周りにまとわりついていた糸が切れたのか、火蓮の体は水しぶきと共に床に落ちる。大量の血の海に沈むように眠る火蓮。半分開かれた火蓮の目には光がなく、服は真っ赤に染まっていた。


「ああああああああああああああ!」


 寿は目の前の光景が信じられないとばかりに叫ぶ。

 さっきまで一緒に話し、一緒に手を取り、そして一緒に戦っていた火蓮の姿が、今ではもう動かない塊に。


 ————嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だぁ!


 しかし、いくら現実逃避をしようとも目の前の現実が寿の精神を砕いていく。

 なにもかも暗く、絶望の淵へと。

 なぜこうなった。なにがいけなかった。そもそもなんで自分はこんなところに居るのか。なんで自分はうつぶせに寝ているのか。手の届く場所にいたのに。助けると決めたのに。守れなった。守るために戦ったのに。


 ————初めてできた大切な人なのに……。


 絶望に落ちていく寿の耳へさらに追い打ちをかけるように死神の声が聞こえる。

「もう、てめえも用済みだ。さっさと死んじまえ」


 鬼蜘蛛の手に握られた刀が光る。そしてそれが寿の首元へと振りおろされた……。



「ぎゃー――。ちょ、ちょっとなんでこっちに来るんですの! 追いかけてこないでくださいぃぃぃぃ!」

「てめえはバカか! なんでもっと慎重に動かねえんだよ! うおっ!? まだついてきやがる。つか、何匹いんだよ!」

「だって、だってやっと到着したと思ったんですの! 普通部屋にあんなものがいるなんて思わないじゃないですの!」


 場所はずっと同じ。地下の通路だった。そこで新也(しんや)とアリシアは相変わらず迷っていたのだが。


 アリシアの趣味……のような遊びによって目的地——火蓮の元へたどり着こうとしていた矢先だった。

 GPSによるストーカー、(もとい)、追跡が最終局面を迎えたと思ったアリシアはある部屋の前へ到着したのだが、アリシアがその部屋の扉を開いたその先には黒々としたうごめく物体が無数にいたのである。


「だとしても部屋の中がどうなってるか先に確認しろよ!」


 その物体は部屋への侵入者——新也とアリシアを発見するなり獲物を見つけた猛獣のように追いかけてきた。いや、食料を見つけた蜘蛛が。それもその数10や20ではない。もしかしたら100匹近くいるのではないだろうか。数もさることながらその大きさがまた2人の恐怖を増長していた。


「いーー-やーー---。このままでは本当に食べられてしまいますわ!」

「あんな蜘蛛見たことねえぞ! どこの世界に人間大の蜘蛛がいんだよ!」

 そう。その蜘蛛は1匹1匹がさまざまなサイズではあるが、人間と同じかそれ以上の大きさだったのだ。

 そんなもの恐怖以外のなにものでもない。もしかしたら新也の中で人生最大の恐怖かもしれない。


「誰に追いかけられたとしてもこれ以上の恐怖はねえぞ!」

 蜘蛛は小さくても生理的に受け付けない姿をしている新也にとって、そんなものが人間大になれば言わずもがな。どうしてここに大量の蜘蛛がいるとか、なぜそこまで大きいのか、そんなこと今はどうでもいい。とにかく今はその恐怖から逃げなければ。


 そう思いながらとにかく逃げ回る新也とアリシア。その間、一応火蓮の場所を確認しながら逃げ道を探っていく。


「し、新也! あれ、どうにかできないんですの! そ、その、刀で一刀両断とか!」

「バカ言え! 誰があんなもんに近づきたいと思うんだ! だったらてめえがやれ!」

「嫌ですわよ! そもそもわたくし刀なんて持ってませんもの。それにこんな可憐(かれん)な少女にそんなことをやらせるんですの! 外道ですわ!」

「うっせーわ! 誰が可憐じゃ! てめえなんてただの似非(えせ)シスターじゃねえか!」

「似非じゃないですわよ! そろそろ信じないと罰が当たりますわよ!」

「罰だ〜? はっ! 上等じゃねえか! 当てれるもんなら当ててみやがれ! それよりてめえが似非じゃねえんだったら祈りとかでこの状況どうにかしてみろよ!」

「新也はバカですの! シスターにそんな力があるわけないじゃないですの。これだから無神論者は!」


 こ、こいつ。こんな状況じゃなかったら今すぐ置いてって蜘蛛の餌にしてやるのに……。つか、いつ俺が無神論者などと言ったのだろうか。いや、今はそんなことどうでもいい。


 しかし、これでなぜ村が滅んでいたのか分かった。獣の干からびた死骸も、倒壊した建物の原因も。あの大きさの蜘蛛が村を蹂躙(じゅうりん)すればあんな家はつぶれて当然だろう。そして、生き物はあの蜘蛛たちの餌になったと考えるべきだ。だったら予想以上に厄介なことが起こっているに違いない。


 新也は嫌な予感を覚えながらさらに足を速めることに。


「おい、火蓮の場所にはまだつかねえのか」

「わ、分かりませんわ。近づいているとは思うんですけど……」


 はっきりしないのも仕方ないだろう。なにせ火蓮の場所が分かると言っても距離しか分からないのだ。どこをどう行けばいいなどきちんとした地図があるわけでない。たどり着こうにもなかなかたどり着けない原因がそれだ。


 焦る気持ちと嫌な予感が過る新也にとってはより一層悪い方向へと進んで行く。


「わぁぁぁぁ! な、なんか、い、糸を吐きだしましたわ! わたくしたちを糸で捕まえる気ですわ!」

「ちょ、くっつくな! てめえにくっつかれても嬉しくねえんだよ! 走りにくいだろ! いいから離れろ! そして蜘蛛の餌食になってしまえ!」

「嫌ですわよ! そんなこと言っていいんですの! 今わたくしが握っているものがなくなれば次は新也ですわよ。ここで共倒れをするとでも」


 くっ! こんなときだけ無駄に頭が回りやがる。


 今、アリシアが手にしているもの。それはこの暗闇を生き残る生命線——懐中電灯。そして火蓮の居場所を示すGPSのレーダー。今の新也はアリシアに生殺与奪を握られていると言っても過言ではない。まあ、そのアリシアは後ろから追いかけてくる蜘蛛に生殺与奪を握られているのだが。


 だが、いつまでもこんなことをしていては先に進めない。すこし無茶をしてでも切り出さなければ。

そう思った新也は力技に出る。


「おい、アリシア。ちょっと我慢しろ」

「なっ? い、いきなりなにをするんですの! というかどこを触っているんですの!」


 今までアリシアの足に合わせていたが、それではいずれ追いつかれると判断した新也は、苦肉の策としてアリシアを小脇に抱えて走ることに。できれば寿を、それにおんぶをしたいところだが、今は四の五の言っていられない。アリシアもただの女の子だと思えば……。


「今、失礼なこと考えてませんの? あと変なところ触ったら火蓮に言いつけますわよ」

「だったら暴れるな。それと舌噛むから口閉じてろよ」


 新也は足に力を込めると、先ほどまでとは違う勢いで走りだす。アリシアはその速さに目を回しそうになるが、なんとか耐える。だが、その代わりアリシアの別の限界が迎えてしまう。それが大惨事を招くとは知らずに。


「お、おい、アリシア。顔色悪いが。まさかとは思うが……」

「は、話しかけないでくださいまし。じゃないと、夕飯が……うっ……」

「や、やめろよ。マジでやめろ。振りじゃないからな。もし今そんなことしたら————」


 今、新也はアリシアを抱えている状況。そんなところで昨夜のご飯を吐きだされでもしたら……。


「うっ……。げ、げ……かい……」

「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!」


 後ろからは大量の殺人蜘蛛が。今ここで足を止めるわけにはいかない新也は少しでも抱えているアリシアから遠ざかりながら叫ぶ。

 しかし、新也の願いは空しく、決壊したダムのようにアリシアの口からは昨夜のご飯が……。


 足を止めるわけにはいかない新也は体中から(ただよ)う酸っぱい臭いを感じながら走り続ける。


「うっ。臭いのせいでこっちまで吐きそう……」


 脇に抱えられるアリシアは吐いたことによる羞恥と申し訳なさ、そして未だに続く気持ち悪さで今までにないくらい大人しくなっていた。新也にとって唯一の救いはそこだろう。


「蜘蛛に嗅覚があるかは知らんが、これで逃げてくれたりは……」

 走りながら後ろを確認する。果たしてこの臭いを被った成果はあるのか……。


「全然追いかけてきてるじゃねえか!」

 どうやら蜘蛛には臭いの耐性があったようだ。いや、そもそも嗅覚が存在しないのかもしれない。そこら辺は新也は別に詳しくないし、知りたいとも思っていない。


「ちっ、こうなったら。おい、アリシア。もうちょい我慢してろ」

「…………」


 完全に死んでいる。いや、生きてはいるけど、まるで生きる目的をなくしたような目をしていた。

 まあ、それはそれで行幸(ぎょうこう)。文句を言われないのだから、好きにできる。今はアリシアより自分の命優先だ。


 さらにスピードを上げる新也と追いかけてくる蜘蛛の距離は確実に開いていった。これなら逃げ切れると新也は判断する。

 そしてある程度距離を取った新也は少しだけスピードを緩めアリシアに問いかける。


「アリシア。おい、おーい。いい加減にしろ!」

 意識を覚醒させるためにゲンコツをと思ったが、それでもは面白くない。恐怖による思考力の低下と日頃迷惑をかけられていることから新也の考えは最底辺へといっていた。


 もにゅもにゅもにゅもにゅもにゅもにゅ————。


 お、案外大きい。普段シスター服を着ているからか分かりにくかったが、アリシアも案外いい体しているんだな。


「んっ、ああっ……ん」


 お、おいおいこいつ変な声、出し始めたぞ。ちょ、ちょっとやべーかも。


「うっ、ん……へっくしゅん!」


 と、思っていた新也だったが、どうやらアリシアはくしゃみを我慢していたようだ。それになぜかアリシアは新也の顔、目掛け盛大にくしゃみをする。新也の顔面にはいろいろなものが飛散っていた。


「おい、……てめえなにしやがる、おっぱい」

「あれ? 新也。ここは……。ってどこを触っているんですの!」

「こ、これは違くて! って話を逸らそうとすんじゃねえ! てめえこそ、なにしてくれてんだ!」

「話を逸らそうとしているのは新也じゃないですの! 結局はわたくしの体に欲情したんですのね。汚らわしい」


 違うとは言えない新也。だが、別にアリシアに欲情したわけではない。そう。アリシアではなく、おっぱいに興奮しただけだ。よってアリシアがというわけではないので大丈夫。


 などとなにが大丈夫なのかよく分からないこと考えながらさらに足を進める。


「で、火蓮の居場所まではあとどのくらいなんだ?」

 未だアリシアを脇に抱えてまま尋ねる新也。

「そうですわね。あと少しだとは思うのですが……。ほら、わたくしたちがこの画面の中心で、すぐそこに火蓮の発信器の反応がありますので」


 アリシアの見せてくる画面には確かにすぐそこで光っている点がある。

「もしこれで火蓮がGPSに気づいて途中で捨てたとかだったら俺、お前をぶん殴るからな」

「そ、そんなこと言われても、それは火蓮がしたことですので、わたくしは知りませんわ」


 とにかく、今は頼れるものがそのGPSしかないので、それに従うことに。道が分かればすぐにでもたどりつけるのだが……。


「あ、あそこじゃないですの?」

 アリシアの視線の先には確かに部屋がある。それに発信器の通りの場所に。それに今までと行った場所とは異なるものが。


「明かりがついている」


 そう。その部屋からは明かりが漏れていた。今まで、どこに行っても明かりは一切なく真っ暗だったのに、ここにきてようやく明かりのある部屋にたどり着いたのだ。しかもその部屋からは誰かの気配がする。少なくとも新也には気がつけるほどに。


「いや、人だけじゃないな……」


「新也? どうしたんですの?」

 勘違いならいい。だが、これは勘違いとは思えないと新也の本能が訴えていた。いや、本能だけではない。これは新也の経験が訴えていた。いくつもの戦場で感じていた感覚。五感全てで伝わるこの感じ。それになにより新也は確信できることが1つだけある。


「…………血、か……」


 新也の嗅覚にはあの嗅ぎなれた鉄の臭いが。もう飽きるほど嗅いできた臭いがその部屋からしていた。

 嫌な予感がする。この部屋に入れば確実に地獄に落ちるような。だが、その部屋からは引力に吸い寄せられるように体が勝手に動く、急げと。焦れと。そして、——もう遅いと。


「新也?」


 いきなり険しい顔つきになった新也を(いぶか)しむように(のぞ)きこむアリシア。だが、そんなアリシアに対して、「いや」とだけ返すと、新也は走り出した。



 体が勝手に緊張している。そしてそれはだんだんと大きくなり、足が腕が体全体がもっと早く動けと新也を叱咤(しった)していた。それに答えるように新也はさらに走るスピードを上げる。


 そして扉の前にたどりついた新也は勢いに任せ、部屋に入ると言葉を失う。


「こ、これは……」


 アリシアですらどう表現していいのか分からなくなっていた。

 その部屋にはいたるところに破壊あとが。地下を保っているのも不思議なぐらいひび割れ、そして穴だらけになっていた。


 だが、今はそんなところに目はいかない。もっと重要なことがある。


 ところどころに飛散った鮮血、そしておびただしい量の血液が部屋の床を汚し、その海の中に1人の少女が倒れ動かなくなっていた。さらには部屋の中心には大男が少女の背中を踏みつけ今にも刀を振りおろそうとしていた。


 そんな光景が新也とアリシアを支配し、次の行動を支配していた。


 アリシアはわなわなと震え、だが、すぐさまこの原因を作ったであろう人物に駆け寄ろうとする。しかしそこで自分は新也に抱えられていることに気がつく。

 アリシアは新也の腕を解こうと声をかけようとするが、それは声にならなかった。

 アリシアの喉は動かず、まるで呼吸の仕方も忘れたように体が硬直していた。

 それは部屋の中心が原因ではない。ましてや大男が原因ではない。もっと近く。そう、アリシアを抱きかかえている人物——新也にあった。


 いつもの新也ではないことはすぐに分かる。いつもふざけて、だるそうに日々を過ごしている新也ではない。半分しか開いていない垂れ目が今では見開きつり上がっているように見え、充血しているようにも見える。今にも血管が破裂しそうなほど。


「いっ!」


 アリシアはお腹に痛みを感じ思わず声をあげてしまう。抱きかかえる新也の手がアリシアのお腹に食い込んでしまったのだ。


 そう思った瞬間、アリシアの体は浮遊感に包まれ、そして落下する。そのまま床に落ちるとつんざくような音がアリシアの鼓膜を破裂させるほど響き渡る。




「なにやってんだ、てめえええええええええ!」


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