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神楽  作者: しのぶ
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1-2

 気がつけば夜も遅くなっていた。今から家に帰ると朝方になるとのことだったので、新也(しんや)達は家に帰る前に前日泊まった宿に一泊することにした。


 夜、そこはまさに戦場と化していた。


「いいからそこをどけ。俺にはやらなければならないことがあるんだ」

「絶対にだめ。そんな下心丸出しの男を部屋に入れるわけないじゃない」

 場所は火蓮(かれん)寿(ことぶき)、アリシアの部屋の前。アリシアはどうやら帰る場所がないらしいので、とりあえず一緒に泊まってもらうことにしたのだ。一見するとアリシアのことの方が問題だったが、今の新也にとってはどうでもいいこと。そんなことよりも人生を左右する大切な案件が残っていたのだ。


「俺は約束をたがえない男なんだよ」


 そう。それは寿と交わした契約——報酬のことだった。つまり————。


「俺は今すぐ寿とヤりたいんだ!」


「そんないいこと風に言っても内容がふしだらすぎる!」

 新也は宿に着くなり、そわそわした気持ちを胸にすぐさま風呂へと向かった。これはマナーであり男のエチケットなのだ。

 入念に体を洗い、しっかりと歯を磨き、ついでに爪を切って、準備万端。そして寿が待っている部屋へと(おもむ)いたのだが、そこには立ちはだかる小さな壁があった。


「そもそも三人部屋なのにそんなことさせられるわけないでしょ!」

 火蓮は顔を真っ赤にして部屋の扉から新也の侵入を拒んでいた。


「確かにそうだな。ヤっている最中に他の視線があるのは俺も嫌だ」

「ヤってっ!? そ、そうじゃなくてもそんなことさせるわけないでしょ! いくら仕事の報酬だからってそんなことは人間としてどうかしてるでしょ!」

「はっ! 人間としてどうかしてるだ〜? そもそも人間なんてヤる生き物だろうが! 子孫を残す。それは人間の本能じゃねえか。それをどうかしてるなんててめえの方がどうかしてんじゃねえか。人間かどうか疑わしいな」


 ひどい言われように火蓮は奥歯を噛みしめる。


「そ、それは……。だとしても同じ部屋なんて私が嫌だよ! 本能とかの前に常識がどうかしてるよ!」

 火蓮の言っていることはもっともだ。例え行為に及ぶとしてもそこに傍観者がいるような状況は新也としても共用出来ない。


 ——するなら2人だけでじっくりとしたい!


 そんなよこしまな考えの末、新也は一つの答えを導き出した。


 ——そうだ。別にこの部屋でする必要はないじゃねえか。これなら問題はない!


 なぜそんな簡単な答えが出せなかったのか、案外新也も初めてのことに戸惑い、そして興奮して思考が思うように働いていなのかもしれない。

 さっそく新也は行動に移す。

「分かったよ。今からってのは諦めてやる」

「はぁ。やっと分かってくれた。言っとくけど今後もダメだからね!」

 安心した火蓮だったが、それは火蓮の早とちりである。なにせ新也はまだあきらめていないのだから。


「なに言ってんだ。その部屋ではしないってことだ。俺の部屋なら別に問題ねえだろ」


「全然分かってないじゃん! 新也の部屋でもダメだから!」

「なぜだ。お前らの部屋だと問題なんだろ? だったら俺の部屋だと問題ねえだろ。じゃ、さっそく寿を呼びに行こうか」

「ダメだってば! 絶対に入れないから!」

 部屋の前でもみ合う2人。そこへ新たな声が乱入してくる。


「ちょっとうるさいですわよ。他のお客様の迷惑ですわ」


 なぜ今から寝ようとしているやつがシスター服を着ているのだろうと疑問に思ったが、今はいい。確かにアリシアの言う通りこんなに騒いでは迷惑極まりない。それこそ宿を追い出されてはごめんだと思った火蓮は力技に出ることにした。


「アリシアの言う通りかもね。だったら————」


 火蓮はいきなり懐から1丁の拳銃と取り出すとそれを新也に突きつけた。


「お、おい。それはマジでシャレにならねえからな……」

「言うことを聞かない新也が悪いんだよ」

「う、撃つなよ。マジで撃つなよ。芸人の振りとかじゃないからな!」

「はいはい。芸人のボケでしょ。準備はいい?」

「よくねえよ! つかボケで撃たれてたら芸人はどんだけ命かけてんだよ! マ、マジでやめっ————」


 しかしその先に続いた音は新也の胸を的確に貫いていた。揉み合っていた二人の距離は近く、新也は避けるすべもなく至近距離から火蓮によって火花の餌食とされ、そのまま床に倒れ伏す。


「ちょ、ちょっと、火蓮。やり過ぎじゃないですの?」

 そんな光景を目の当たりにしたアリシアは倒れる新也を目に顔を青くした。しかし当の火蓮はすまし顔、特に気にする様子もなく、

「大丈夫だよ。このぐらいで新也は死んだりしないよ」

 と、明らかに心臓を狙った火蓮は悪びれる様子もなかった。

「で、でもさすがにそんなもので撃たれたら普通の人間は死んでしまいますわよ。というか本当に死んでませんの?」

 アリシアは新也の生死を確認するため顔を覗きこむ。


「こ、これは……。寝ている……?」


 撃たれたはずの新也はすやすやと寝息を立てていた。

「どういうことですの?」

 不思議に思ったアリシアは火蓮に尋ねると、火蓮は拳銃を懐に納めながら、

「さっきのは麻酔銃。まっ、人間用の麻酔銃なんてないから猛獣用だったけど、今の新也は猛獣そのものみたいだったし問題ないよね」

 と、ちょっと優しい笑みを浮かべる火蓮だった。


「なんでそこで笑えるんですの? ちょっと不気味ですわよ」

「ひどい言われようだね。でもこれで問題は解決したんだし。じゃ、アリシア。ちょっと手伝って」

 火蓮は新也の腕を持つとアリシアに足を持てと視線で伝える。


「え? 嫌ですよ。そんなこと」


「なんでそんな当然のように。いいじゃん。運ぶの手伝ってくれても」

「なぜわたくしがこんな獣をお世話しなくてはならないのですの。触れるのも嫌ですわ」

「あはは……」


 散々な言われような新也。新也の行動がそうさせているのだから仕方がないとは思うのだが、アリシアもアリシアで一応助けてもらったのだからそのぐらいはやってあげてもと思う火蓮だった。


 アリシアは本当に手伝わず部屋に引っ込んでしまったので、仕方なく火蓮は1人で新也を背負って部屋まで連れて行くことに。

「まったく世話が焼けるな。最初はこんなこと思わなっかのに……」


 それは新也を最初に目にした時、思ったことだった。


 いきなり出てきたと思うと3人の男を一瞬で倒し、そして急襲した自分すらも圧倒して見せた。自分はそれなりに強いと思っていたし、まさか一般人に負けるなんて思っていなかった。それなのにこの男はそれを覆した。最初は悔しかった。でもそれと同じぐらい興味が湧いてきた。どうしてこんなにも強いのか、どうしてこんなにも冷静に対処するのか、そしてその目にどんな風に映っているのか。気になった。未だその答えは出ていないけど、いつか教えてほしいと思う。どうやったらそんな楽しいのか。


「まっ、素直に教えてくれそうにはないけどね」

 背中に新也の重みを感じながら新也の部屋に到着する。

「案外重い。ていうか普通立場が逆だと思うんだけどな」

 小柄な火蓮が1人の男を背負うなど確かに傍から見ればいびつだった。


「早く寝かせて私も寝よ。さすがに今回はちょっと疲れたし」

 火蓮は敷かれてある布団に新也を下ろそうとするが、

「全然降りてくれない。というか本当に寝ているの?」


 寝ているはずの新也なのだが、なぜが火蓮の首に回した新也の腕が離れてくれない。しっかりホールドしている。これは寝ているのか怪しいところだが、しかし麻酔銃を使ったのは確かである。それも猛獣用のものを。普通の人間ならその強さに一生目が覚めない可能性があるものなのだが、新也のこの行動は————。


「ちょっと! 本当は起きてるんじゃないの! 放てしてよ! 放し——ひゃっ!?」


 どうにか新也の手を離そうとする火蓮だったが、新也の手はなかなか離れず、むしろどんどん力が強まっていき、ついには新也のその手は火蓮の中にへ……。

「ちょっ!? どこに手を入れてるの! 本当は起きてるんでしょ! ほ、本当にダメだから!!!」


 その夜、新也の部屋には火蓮の叫び声が響いた。


 翌日、新也の目覚めは心地よい物だった。

「久々にぐっすり眠れた気がする」

 すっきりした顔で起き上がる。ひとまず顔を洗い着替えを済ますと三人の部屋へ。


「おーい、朝だぞ。いつまで寝てんだー」

 ノックをしても反応がない。仕方ないので部屋に入ることに。

「着替え中でもこれは事故だからな」

 事故と分かっていながら入るのは故意なのだが、新也にそんな倫理観は存在せず入室する。


「…………」


 しかしそんな新也の目に入ってきた光景は無人の部屋だった。着替え中でもなければ、寝坊しているわけでもない。誰もいなかった。確かに誰かが寝ていた形跡がある。しかし敷かれていた布団はきれいに畳まれ、そして荷物もなかった。

 もしかしたら誘拐にでもあったのか。だったらなぜきれいに布団が畳まれ荷物までないのか。それにアリシアを除き、火蓮と寿がそう簡単に誘拐されるとは思いにくい。いや、しかし寝ている間だったらそれは無理なのかもしれない。


 焦る新也。急いで宿の人へ確認を取りに行く。

「あの! 俺と一緒にきたちっちゃい女の子と無表情の女の子と、あとおかしな格好をした女の子を見ませんでしたか? 部屋に行ってもいなくてもしかしたら……」


 焦る新也の質問にしかし宿の人は困ったようであり、そして呆れているようだった。

「えっと……、その3人でしたら朝方にはチェックアウトされましたよ」

「え……。俺の残して?……」

「残してもなにも……あのチェックアウトの時間はとっくに過ぎてますよ。延長料金払ってくださいね」


 なぜ気がつかなったのか。部屋はきれいにされ荷物がないということ、それは簡単なこと。3人は宿を後にしただけのことだった。


「あいつら、俺を置いて行きやがったのかぁ!」


 新也の起きた時間は日が真上に上った頃。むしろ部屋の清掃の邪魔になる時間だった。昨日の騒ぎで迷惑に感じていた宿の人にとっては早く出て行って欲しい客であっただろう。


 それから新也は急いで自分の家に帰ったのだった。


「今日の晩御飯はなんですの?」

 3人は宿をあとにし、新也の家に着くころには太陽が傾き赤く染まろうとしていた時だった。

 家に着くなり夕飯の準備を始めようとした火蓮にアリシアが訪ねてくる。


「まだ決めてないけど……」

 居間に荷物を置いた火蓮は冷蔵庫の中を確認するが。

「そもそも食材がほとんどないんだよね。これじゃあ、なにも作れないよ。それに人数も増えたし……」

 悩む火蓮はなにか他にないか棚の中などを探るが、本当になにもない。あるのは無駄にそろっている調理器具と食器。普段料理をしない新也を見ていた火蓮はなぜこんなものがあるのだろうと思う。

 そこへ寿が冷蔵庫の中から飲み物を出す。昼食を食べずに帰ってきたから寿もお腹を空かせているのだろうか。


「……部屋、貸して」

 飲み終えたお茶を流しにおくと荷物を持ち居間から出て行く。


 確かに部屋は必要だ。火蓮も部屋を確保しておこうと思い居間から出て行く。部屋なら余りがあるから大丈夫なのは承知の上だ。


「あ、アリシアも好きな部屋使って。まあどこの部屋も同じようなものだけど」

「分かりましたわ。けど、わたくし別に荷物を持ってなくて、どうしましょう……」

 まるで自分の家のように振舞う火蓮にアリシアは困り顔を見せる。

「確かにあの状況じゃ荷物なんて持っているわけないよね……」


 アリシアと出会ったのは戦場の真っただ中だ。そんな中荷物など持っているはずもなく、そうなれば部屋を与えただけでは意味が無い。じゃあどうすれば……。


「よし、じゃあこのあと夕飯の材料を買いに行くついでに生活用品も買いに行こうか。私も必要な物あるし」

「それがいいですわ! でもわたくしお金が……」

 まさかの文無しだった。そのシスター服を売れば幾らかのお金になりそうだが、それを言えばアリシアは怒りそうな気がする。寝る時まで着ていたのだから。


 それに火蓮もお金があるわけではない。そもそも人からお金を奪って生活していたのだ。貯蓄などあるはずもない。だったらいっそ新也の貯蓄に。新也はどうやら金持ちらしいからちょっとぐらいいいだろうと思ったが意外なところから助け船が。


「……お金ないの?」


 それは寿だった。

「う、うん。アリシアはないだろうなとは思っていたけど、私も、その、あまり持ってなくて……」

「だったら、私が出す」

「え? い、いいの? 食材だけじゃなくて生活用品も買おうと思っているから案外高くつくかもよ?」

「大丈夫」

 火蓮の目には寿の姿が女神に見えたことだろう。一生頭が上がらない。


「そ、そう? じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」

「さっすが寿ですわ。あなたはわたくしの女神ですわ」

 どうやらアリシアにも女神に映ったらしい。

「いい」

 寿は一言だけ残すと出かける準備を始めたので、火蓮も準備を始める。エコバックを持ち、今日の晩飯のメニューを考え、それから必要な食材をメモする。

 まるでどこかの主婦だった。


 アリシアは特に準備をすることがないので鼻歌を歌いながら二人の様子を見ていた。


 それから三人は夕方の江戸の町へと繰り出したのだった。


 新也が家に着いた時はもうあたりは暗くなっていた。急いで帰ってきたが、それでも結構な時間を要した。

 そして新也は家の前に立つと、やはりというかその心配は的中していた。


 自分の家に電気が付いている。


 これはもう確実にあの3人が勝手に家に上がっている証拠だろう。

「なっ?」

 新也は更に急ぎ足で自分の部屋に入り、居間へ行くとそこには晩飯を食べた後の3人の姿が。


「おい、てめえらここでなにしてやがる」

「あ、新也。案外はやかったね。もう少し時間かかると思っていたのに」

「……おかえり」

「ちっ」


 新也の帰宅に別段焦った様子も見せず、火蓮は食器を片付けながら、寿はそれを手伝い、アリシアはお茶を飲んでいた。


「なに普通に生活してんだ! つか1人舌打ちしたやついるよな!」


 新也の講義にしかし聞こえていないのか、火蓮と寿は洗い物を始める。反応したのは唯一1人、アリシアだった。


「ちょっと、勝手に人の家に上がりこんで吠えないでくださる?」

「誰が人の家だ! ここは俺の家だ! 勝手に上がりこんでんのはてめえらだ!」

「え? そうなの?」


 本当に知らなかったのか、アリシアは火蓮と寿に尋ねる。確かにアリシアにこの家が新也の家だと説明していない。


「そうだよ。ここは新也の家兼仕事場」

 アリシアの質問に火蓮が答え、確かめるように寿に視線を移すと静かにうなずく。

「まあ、そうだったのですね。だったらお邪魔してますわ」

 まるで悪びれる様子も見せず新也に挨拶をするが、逆にそれが新也を逆なでる。

「なんでそんな顔ができる! せめてもっと申し訳なさそうにしろや!」

「今更じゃないですの。もう部屋も確保してしまいましたし」

「はぁ? そ、そんなわけ————」

 急いで他の部屋を確認する。しかし新也の希望(むな)しく、本当に他の部屋が見事できあがっていた。空き部屋としてなにもなかった部屋が、今では人が生活できるようになっている。


「ふざけんなよ! なに勝手に人の家を住処にしてんだよ!」


 居間に駆け足で戻った新也は更に声をあげるが、なにを今更というような空気が流れていた。そこへ寿が新也の前へ出てくる。


「…………」


 しかしその寿はいつもと同じように無表情、そして無言だった。寿がなにを考え、なにを思っているのかは分からない。ただなんとなく申し訳なさそうにしてる空気を感じた新也。なんとなくだが、そんな気がするだけ。


「まあ、寿はいい。お前にはまだ話すことがあるしな」

「なんで寿だけいいのかはあえて聞きませんわ。そこな下劣(げれつ)な男がなにを考えてるのか、想像するだけで気持ち悪い」

「このアマ。てめえだけは絶対に出て行け!」


 アリシアとにらみ合う新也。どうやら2人の相性は悪いらしい。


 人間合う人と合わない人が居るものだ。それに集団というものは誰か1人はハブられるもの。ただ、たったの4人を集団というのはおかしな話だが。


「まあまあ。でもアリシアは帰る家がないらしいし、それに新也の家なら十分なスペースがあるから問題ないでしょ?」

 2人を仲裁するために火蓮は2人を落ち着かせる。


「確かに俺の家はそれなりに広いが、つか帰る家がないってどういうことだ?」

「昨日の話聞いてなかったの? アリシアは両親を早くに亡くして1人旅をしながら生活してるって。ちょっとそれはかわいそうじゃない?」

「それは……」


 そんな話、記憶にないなどと言えない新也だった。なにせ昨日は寿しか頭になかったのだから。


「でもだからと言って俺の家じゃなくてもいいだろ。そもそも今の時代、両親を亡くしたやつなんて腐るほどいるだろ」

 新也のそれはひどいものの言いようだったが、それは事実だった。それに新也本人も両親とは昔に別れている。未だ争い続けるこの時代に親がいなくて生きていけないなどそれは自分が弱いからだという意見も人によっては言うだろう。

 それは火蓮にも分かるし、文句も言うことはできない。それがこの時代。失うことは当たり前の世の中なのだ。


 だが、当の本人、アリシアはそんなこと気にした様子もない。


「勝手に人のことをかわいそうな目で見るのはやめてくださる? 気持ち悪い」


 こ、こいつ……。


 この時、新也だけではなく火蓮も怒りを覚えたのだった。せっかくアリシアを擁護(ようご)しようとしたのに。


「……アリシアも泊めてあげて」

 しかし、またしても助け舟を出したのは寿だった。

「なんで寿がお願いするんだよ。お前はマジでなに考えてんだ……」

 新也の疑問はもっともで別に寿とアリシアにつながりがあるようには思えない。元からなにを考えているのか分からないのに疑問は深まる一方だ。


「……アリシアが困っているから」

「寿……。やっぱりあなたはわたくしの味方ですのね!」

 頬ずりするように寿に抱きつくアリシア。どんどんアリシアの中で寿の株が上がってきている。


「ダメ?……」

 寿はそんなアリシアを手で遠ざけながら新也に聞く。寿もアリシアの行動自体はあまり好きではないのかもしれない。その証拠にアリシアの顔を鷲掴みにし、そのアリシアは「い、痛い、痛い!」と叫んでいる。あの怪力握りつぶされたら新也でも耐え切れないだろう。


「はぁ〜。もう勝手にしてくれ」

 ついに折れた新也はとぼとぼと居間の椅子に座る。


「で、俺の晩飯は?」

 いろいろあって忘れていたが、新也も昼飯を食べていない。当然腹が減っていた。なので食事を作ったであろう火蓮に尋ねる。


「昼飯食ってないんだ。できれば早めに用意してくれ」

「ん? 新也のご飯なんてないよ?」

 しかし火蓮から返ってきた言葉は無残なものだった。

「は? お前らだけ食ったのかよ。俺の分なしで」

「だって遅くなると思ってたし、どこかで食べて帰ると思ったから」

「もういいよ……。カップ麺食うから……」


 今日はもう疲れた。というか昨日に続き今日も疲れた……。


 カップ麺を準備している新也を無視して、火蓮達は風呂の準備へと取りかかる。

「お湯張ってくるからちょっと待ってて」

 火蓮は風呂場へ向かうと湯船にお湯を溜め始める。


 この家は風呂も大きい。なぜこんな大きい風呂を作ったのか火蓮が新也に尋ねたところ「金持ちの家の風呂はでかいイメージがあるから」とよく分からない答えが返ってきたが、でも別に広いお風呂は体を癒すのに最適なので、それはそれでいいかと思い黙ってこのお風呂を使った。


 広い分貯めるのに時間がかかるので3人は各々の部屋の整理をしてお風呂に入ることに。


「こんだけ広いのでしたら、いっそのことみんなで入りましょ」

 お風呂を見てきたアリシアは2人に提案すると2人は別に構わないと返事をした。それに昨日の宿で一緒に温泉に浸かったのだから今更、気にすることはない。


 火蓮は風呂に入る前に一応新也に忠告しておく。

「絶対に除かないでよ。覗いたら殺すから」

 と、脅しを入れ3人でお風呂に入っていった。


 新也はというと、カップ麺を早々に食べ終わり自室にてくつろいでいた。

「覗くなって言われてもな〜」

 自然と立ち上がる。そして向かう場所はただ一つ。脱衣場である。


 中から3人の声が聞こえる。裸になり心も解放されたのだろうか。楽しそうな声が聞こえてくる。そんな声が聞こえては新也も混ざりたくなってしまうのは仕方のないこと。


「のけ者はよくないよな。それに俺はすでにのけ者扱いされたばかりだし」


 目が覚めると誰もおらず、自分の残して先に家に帰ったと聞いた時のショックは大きかったようだ。今度こそのけ者にはされないぞ。


 新也は自分の服を脱ぎ、腰にタオルを巻く。一応エチケットだ。

 そして風呂の扉を開く。


「誰かー俺の背中を流してくれー」


 自然に。そう自然にだ。なにもおかしなことはやってなどいない。のけ者にされないために一緒に風呂に入るだけ。たったそれだけのことだ。


「…………」


 しかし返ってきたのは無言だった。それに新也の目には誰も映ってこない。

 おかしいなと思いあたりを探すが3人の姿は見当たらない。


「あ、あれ? さっきまであんなに騒いでいたのにどこに————」


 しかしその瞬間、新也の意識は沼の底へと沈んで行った。


「まったく。やっぱりくると思った」


 新也を昏倒(こんとう)させたのは火蓮だった。続いて湯船から寿とアリシアが出てくる。どうやら新也が入ってくることを察知した3人は急いで湯船に浸かり身を隠したようだ。そして隙をついて火蓮が例の麻酔銃を使った。強力な麻酔銃を2晩連続で使用して大丈夫だろうかなど、という心配は誰もしていない。


「さて、これどうしよう」

 火蓮は新也を部屋まで運ぼうかと思うが昨日の記憶がよみがえる。火蓮の体は新也の手によってもてあそばれたのだ。例え新也に意識がなくとも、いや意識がない方が危険なのかもしれない。だから火蓮は抵抗があった。


「……私が運ぶ」


 そこへ寿が気を使ったのか、風呂から上がり体を拭き始めた。アリシアは元から近づきたくもないのか湯船から上がる気配はない。まあ元から期待していないが。


「で、でも。新也は……」

「大丈夫。問題ない」

 寿はなにも分かっていない。寝ている新也を運ぶということはそれなりの準備が必要だということを。


「じゃ、じゃあ私も手伝うよ……」


 そして火蓮が導きだした答えは2人で運べばなんとかなる、だった。もし新也が暴れても片方が対処すればいい。それに寿だったら、例え新也が暴れたとしても気にしなさそうだったもの問題だった。


 風呂から上がり、着替え終えた火蓮と寿は新也と手と足を持ち新也の部屋へ運ぶ。アリシアはまだ風呂に入るとのことだった。

 新也は火蓮が思っていたようなことはなくすんなりと寝床へついてくれた。それはそれでなにか腹が立つと心配した火蓮は思うのだった。

 自ら押しかけたとはいえ、四人での最初の夜からここまで疲れるなんて大丈夫なのだろうかと心配する火蓮だった。



 それから時は流れ、気がつけば雨が続く日々だった。なかなか太陽が顔を見せず、じめじめとした空気があたりを支配していたそんなある日の正午、新也は目を覚ました。


 短い間とは言え、すっかり3人が居る生活がなじんできてしまっていることに改めてため息をつきたくなるが、もう考えないことにしている。逆にプラスに考えようとしている。

 居候とはいえ、それは美少女。小柄だが、世話焼きで家事全般は完璧にこなす火蓮。なにを考えているか分からず常に無表情だが、その表情すら美しく案外巨乳な寿。そんな少女が居候しているなんて問題どころか嬉しいことではないか。よく物語であるパターンではないか。美少女はいきなり家に押しかけ自分を家に置いてほしいなど。エロ方面にしか考えられない。これは喜ぶべきことだ。


 一人を除いては…………。


 その一人とは——確かに見た目はいい。むしろ世間では可愛い方だろう。日本人とは思えない顔立ちにあの金髪。本当にあれは日本人ではないのだろう。ハーフではないのだろうか。じゃないとあんな顔立ちにはならない。外人など日本人の新也からして見れば羨ましい。

 今まで顔がよければ性格なんてなんでもいいと思っていた新也だったが、その考えは(くつがえ)されつつある。


 その人物の名はアリシア。フルネームは未だ覚えていない。たが、今はそんなことよりもあいつの性格だ。最初こそはまだ猫をかぶっていたのかもしれない。しかしそれも数日のこと。だんだんと本性を(あら)わにし、今では好き放題、やりたい放題である。

 一日中、自分の家のようにぐうたらと過ごし、別に家事を手伝うわけでもなく、ごろごろしている。それに暇だ暇だとうるさいし、静かになったかと思えば新也の部屋から勝手にゲームやら漫画やらを持ち出し居間で遊んでいる。それを怒れば逆切れしてこっちが疲れるハメになる。どうやればあんなにも迷惑な存在になれるのか逆に尊敬すらする。


「はぁ〜」


 新也は起きると居間で火蓮が用意してくれたご飯を目の前にため息をついた。

「寝起きからため息なんて、幸せが逃げてくよ」

 洗濯物を干していた火蓮がそんな新也に気がつく。となりでは寿も火蓮を手伝っている。どうやら火蓮の家事スキルを見よう見まねで習っているようだ。


 ここ最近の寿はそうやって火蓮からいろいろ学んでいる。寿は今まで家事などやったことがないのか相当苦戦しているようだが、きちんと家事をやろうと思うその心意気だけでも十分だと思う。なにせここにはそれ以上の問題児が居るのだから。


「ため息もつきたくなる。で、もう1人の問題児はどこに行きやがった」


 聞きたくもないことだが、ここで聞かずになにやら問題を起こされては困りものだと仕方なく火蓮に尋ねたが、火蓮も知らない様子。寿にも尋ねたが、首を振り知らないと答えてきた。


「ったく、あいつなにやってんだよ。変なこと起こすんじゃねえぞ」

 新也は火蓮が作ってくれたご飯を食べながら心配するのだった。


 と、そこへ居間の扉を蹴破るようにアリシアが戻ってきた。引き戸だから蹴るのはやめてほしい。

「お前朝っぱらからなにやってんだよ」

「朝ってもう昼ですわよ。そんなただれた生活してたら腐りますわよ」

「お前にだけは言われたくねえ! で、その荷物はなんだ?」

 アリシアは両手に大量の袋を持っており、そのどれもがぎっしりと物が入っていた。それを床に置くとなにやら缶がぶつかるような音が聞こえてくる。


「掃除をしますわよ!」


「は?」

 いきなりのことに素っ頓狂な声をあげる新也。


 それに続き火蓮も驚き顔。唯一、寿だけがいつも通り無表情だった。


 いままでまったく家事を手伝ったことのないアリシアからの発言に、ここは夢の中ではないのかと新也は思い、視線を火蓮へ向けるが、火蓮も新也の顔を見るだけだった。どうやら夢の中ではないらしい。


「お前は脈絡もなくいきなりなに言い出してんだ? 熱でもあんのか?」

「失礼ですわね。別にわたしくはおかしなことは言ってないですわよ」

「確かに内容はそうかもしれないが、お前がそんなことを言うことがおかしいんだ。明日は雪でも降るのかね」

「なんでですの! わたくしが掃除をするのはそんなにおかしなことですの!」

「ああ、おかしい。おかしすぎる」

「確かに、おかしいね。もしかしたらアリシアの偽物?」

「火蓮まで! 失礼すぎますわ! 正真正銘アイリス・リン・オナルですのよ!」


 ああ、そんな名前だったなと今更ながら思い出す新也。


「で、なんで急に掃除なんだ? それにその荷物はなんだ? 掃除道具でも買ってきたのか?」

「ええ、必要な物を買いそろえてきましたの」

「それでそんな大荷物なんだ」


 火蓮はアリシアの持っているものがなんなのか分かったが、しかしそこで疑問が一つ浮かぶ。


「でもお金はどうしたの? もしかしてアリシアどこかでバイトしてお金稼いできたの?」

 それこそアリシアにはありえない行動だと思ったのだが、アリシアが働くわけなどなかった。


「いえ、わたくしはお金を持っていませんので」

「じゃあ、どうしたの? 寿からお金もらったの?」

 火蓮は寿に視線を移すが、寿は首を横に振る。寿がお金を渡してないとなればどこからお金が出たのか。


 新也は考え、そして一つの答えを導き出す。


「お、お前まさか万引きを!?」


「そんなわけないじゃないですの!」

 ふう。よかった。さすがに犯罪は見逃せない。それにそんなやつが家にいるなんて迷惑どころではない。


「お金は新也の部屋にあったものを使いましたわ」


 なら、ちゃんとお金を払って買ってきたと。なら安心、安心……。

「今なんて?」

「だから、新也の部屋にあったお金を使いましたわ」

「てめえ、人の金勝手に使ってんじゃねえ!」

 まさかの出どころは新也だった。人の金を勝手に使っておいてまったく悪びれる様子がないアリシア。


「別にいいじゃないですの。お金持ちなのでしょう?」

「だからと言って人の金を勝手に使っていい通りにはならねえよ! てめえの倫理観はどうなってんだ!」


 いや、新也の倫理観もどうかと思う。と、火蓮はジト目を向ける。その目に言葉を詰まらせる新也だったが今はそれどころではない。


「せ、せめて一言ぐらい言えよ」

「あら、言ったらお金、くれるんですの?」

 絶対にあげない。どうして家事もせずぐうたらと生活している居候にお金の組めんまで面倒を見なければならないのか。

「でしょう。だから勝手にもらいましたの」

「なに誇らしげにしてんだ! で、なに買ってきたんだよ。これでくだらない物だったらまじで追いだすからな」


 そしてアリシアが買ってきたものをご飯を食べ終え片付けた机の上に広げる。

 ゴム手袋、マスク、ゴミ袋、ガムテープなどなど。確かに掃除に必要なものをきちんと買ってきている。しかしそれよりも目立つものが、それに大量にあった。


「これ、なにに使うんだ?」

「見て分かりませんの?」

 その一本をアリシアが掴む。それは缶のスプレーになっていて先端のノズルを押すと噴射するタイプのものだった。


「蜘蛛、ですわ」


 アリシアが言ったようにその缶にはでかでかと蜘蛛退治と書いてある。

「最近この家には蜘蛛が多すぎますの。この前だってわたくしの部屋に侵入してましたのよ」

 道理でこの前アリシアが悲鳴をあげていたのかと納得する新也。

「でもこれ本当に効くのか? なんか胡散臭いんだが」

 新也はそのスプレーを1本手に取り、説明書きを読む。

 商品名は必殺蜘蛛退治。なんとも言えない名前。しかし説明書きにはおかしなことは書かれていない。

「人に向けて噴射しないでください。吸い込まないでください。万が一目に入った場合は水で洗い流し専門医の手当を受けてください。子供の手の届くところに置かないでください。部屋の換気は十分に行ってください。火気に近づけないでください。と、別におかしなことは書かれてないな」


「まあどこにでもある害虫駆除用のスプレーみたいだしね」

 火蓮も手を伸ばしスプレーを掴もうとする。

「あ、火蓮はダメだろ。子供の手の届くところには——いえ、なんでもありません」

「次言ったら本当に撃つからね」

 どこから出したのか火蓮の手には拳銃があり、それを新也に突きつけていた。


「分かったから、そんな物騒なもんはしまってくれ。間違っても撃つなよ」

「ふん。新也が失礼なことを言うからでしょ」


 スプレーを手に取ると拳銃を懐に納める。

「つか、何本買ってんだよ。どう見ても買い過ぎだろ」

 新也の目の前には何十本もの同じスプレーが、いや、10や20などではない。もしかしら100はあるのではないだろうか。

「でも、あるのこしたことはありませんわよ」

「確かにそうだが、で、これ1本いくらだ」

「あまり値段を見ていませんでしたし、お店によって値段が違いましたので、大体ですけど、2,000円ぐらいでしたわ」

「そして地味に高い。それにこんな本数、全部でいくらしてんだよ」

「数えていませんわ。束が1つなくなりましたわ」

「お前ふざけんなよ! 普通に大金じゃねえか! つか残りの金は返せ!」

「嫌ですわよ。これはもうわたくしのお金、ちょっとわたくしの体に触らないでくださいまし! ちょ、どこに手を入れていますの! わ、分かりましたから。返しますから、服の中に手を入れないで!」


 お金を取りもどした新也は自分の部屋の金庫に厳重に保管しておくことにした。


「うっ…うぅ…わたくしの体はもう汚れてしまいましたわ」

「てめえが渡さねえの悪いんじゃねえか」

 鼻水をすするアリシアの頭を寿が撫でている。どこか母親のようだ。

「とにかく、確かに最近、蜘蛛が多いのは気になってたしな。俺の家が蜘蛛屋敷なんて御免だ。これはアリシアの珍しい正論に賛成して今日はみんなで掃除をするか」

「珍しいは余計ですわ。もっと感謝してくださいまし」

 またもや喧嘩を始めそうになる新也とアリシアだったが、そこへ寿が静かに疑問をぶつける。


「……蜘蛛ってなに?」


「え、寿、蜘蛛を知らないの?」

 火蓮は信じられないものでも見たような目を寿に向ける。だが、これは火蓮の方が普通の反応だろう。普通に生きていれば蜘蛛を目にすることなど日常茶飯事だ。それに蜘蛛なんて誰から教えてもらうものでもなく自然と知識がつくようなもの。赤ちゃんがいきなり歩き方ってなにと言っているようなもの。人間には教えてもらわずとも自然と学んでいることがたくさんある。その中に蜘蛛も入っているだろうと思っていたが、寿は例外だったらしい。


 そして近くにいたアリシアが寿に説明する。いつも誰かの世話をすることのないアリシアはちょっとドヤ顔だ。それがまたうざい。


「蜘蛛ってのはあれのことですわ。この前お風呂にもいましたでしょう?」

「お風呂?」

「そう。黒くて、足が八本あって、俊敏で、触覚が長くて、つやがあって、急に羽を広げて飛んできて、気持ち悪い虫ですわ」

「ちょっと待て。てめえのそれ、後半から違う虫になってんじゃねえか。まさかとは思うが本当にそんな虫がいたわけじゃねえよな?」

「なにを言ってますの? わたくしが見たのはこの2種類の蜘蛛ですわ」

「その1種類は蜘蛛じゃねえ! ま、マジでやばいやつが乱入してんじゃねえか!」


 新也は新たな事実に戦慄し、今すぐに掃除に取りかかろうと準備を始めた。


「……で、蜘蛛ってなに?」

 寿の疑問にアリシアが親切に答えていたが、アリシアの説明では本当の蜘蛛にはたどり着けないだろう。結局、百聞は一見に如かずとのことで実物を見るまで寿の中で蜘蛛とは未知の生き物になった。


 急いで着替え終えた新也が戻ってきてところで、本日の改題開始。

「今日は家の大掃除をする。その際、害虫駆除を完遂するように。必ず1匹残らず駆除するぞ!」

 その掛け声に珍しくやる気を見せるのはアリシアだけだった。アリシアはよほど自分の部屋にあらわれた蜘蛛が嫌だったのだろう。寿はいつも通り無表情だし、だが、家事担当の火蓮がやる気を見せないのはなぜだろう。


「火蓮。なんか思うことでもあるのか?」

 不思議に思った新也が火蓮に聞くが、火蓮はちょっと申し訳なさそうだった。

「いや、私が家事担当みたいなところがあったからなんかこんなことになるなんて、なんか私の掃除が行き届いてないのがいけなかったのかなって思って」

「い、いや、そういうわけじゃ……。それに季節的にも仕方ない部分はあるし、全部をお前に任せっきりにしてたのもよくなかったんだし……」

 火蓮がそんなことで責任を感じてしまってはさすがに新也もバツが悪い。それに新也の言う通り、全てを火蓮1人の責任にするのは間違っている。4人で共有しているのだから。


 待て。普通に4人で共有してるとか思っている時点でもう間違っている気がする……。


 そこはもう考えても今更である。

「まあ、今日で全部片づけちゃおっか」

「あ、ああ。アリシアのことだから掃除しながら、なにかしら問題を起こしそうだから、火蓮、そこは頼んだ。俺には手に負えそうにない」

「新也でも真面目に悩むことあるんだね。ちょっと意外」

「失礼な。俺はいつだって大真面目だ」

 大真面目なやつがどうどうと風呂に入ってくるなとジト目を向ける火蓮だった。


 そこで新也はもう1つ火蓮にお願いをする。

「それと、俺、『G』はちょっと無理だ。火蓮、それも頼んだ」

「いや、私も無理だから。男なんだからそこは自分でなんとかして」


 この掃除無理かもしれないと思いながら掃除に取りかかる新也だった。


 まずみんなで居間の掃除に取りかかる。

 居間の間取りは入口正面にダイニングテーブルと椅子が4脚。その右側にキッチン。左側にソファーがあり、その正面にテレビがある。

 ゴミをまとめ、なるべく部屋のスペースを確保したとこで、本命の駆除をする。特にキッチン周りは入念に。


「おい、アリシア。これなんに使うんだ?」

 ゴミをまとめていた新也はソファーの上に投げてあったものに気がつく。それは人形だった。しかし人形といっても布に綿が詰めてあるものではない。外側は鉄でできているのか硬く、振ると中からカラカラと音がする。少し前にアリシアが大切そうに抱えていたのを新也は思い出した。


「あーそれですの? というか新也。あまり乱暴に振らない方がいいですわよ」

「は? 中に壊れすいもんでも入ってんのか?」

 耳を寄せ中になにか入っているのか確かめる新也だったが、音だけではなにが入っているのか判別できない。


「中には爆弾が入ってますの? そんなに顔を近づけては顔が吹き飛びますわよ」


「全力で止めろ! つか、なんでそんなもんソファーの上に投げてんだよ! あぶねえなんて話じゃ済まされねえぞ!」

「すっかり忘れてましたわ。でも見つかってよかったですわ」

「忘れてんじゃねえ! なんでこんなもん買ってんだよ……」

「いえ、この前お店に行ったとき安く売ってましたので、寿に頼んで勝手もらいましたの」


 爆弾を安く売っている店があるとしたらその国は終わりだな。


「寿、ちょっとこっちにこい」

 新也は火蓮と一緒にキッチンの片づけをしていた寿を呼ぶ。寿はそれに気づき無言で新也の元へ行くと新也は寿の耳元へ、

「いいか寿。今度からアリシアに物をねだられても買うな。ろくなもんじゃねえから」

 と忠告するのだった。

「……分かった」

 寿はいつも通り無表情でそう答えるとキッチンへ行ってしまう。


 本当に大丈夫だろうか。あの無表情じゃあいまいち信用に欠けてしまう。


 それからというもの居間にはアリシアのよく分からないものがたくさん発掘されていった。それはテレビ台の中を開けてみれば飼ってもいないはずのドックフード、テレビの横にある小さな引き出しにはなにかの花か分からない種、冷蔵庫にはスライム状の液体。どれも理解に苦しむもので、今後アリシアは買い出し禁止となった。


「なぜわたくしだけ言われなければならないですの! まったく理解できませんわ!」

「なぜ理解できないのか俺には理解できねえよ。お前の部屋がどうなってんの怖えよ」

「あら、わたくしの寝室がそんなにも気になるんですの? とんだケダモノですこと」


 こ、こいつマジで1発ぶん殴ってやろうか。


 そんな紆余曲折(うよきょくせつ)あってなんとか居間の片付けを終えた新也達はアリシアが買ってきたスプレー片手にあたりを散策する。

「火蓮はキッチン担当な。全力で任務にあたってくれ」

「嫌だよ! キッチンなんてあれが住み着く場所じゃん!」

 などと口論をしながらも作業を進めていく。


 そこへ寿が新也の前に手を差し出してくる。

「なんだ寿。またアリシアが買ってきた変なもんでも見つけたか?」

「……これ」

 寿の手を見るとそこには大きめの黒い物体が————。

「っ!? お前普通に蜘蛛を掴んで持ってくんじゃねえ! なんで普通に持てるんだよ」

「これが蜘蛛?」

「ああ、そうだよ! いいからそれをどっかにやってくれ!」

「……分かった」

 寿は自分の手のひらほどの蜘蛛をじっくり見たあとそれをそのままポイっと投げた。


「ちょ、お前なにやってんの!?」

「どっかにやった」

「そういう意味じゃなくて、駆除してくれってことだよ!」

「でも、もうどっかに行った」

 寿が放った蜘蛛は一目散に逃げたのかその姿はもう見当たらない。

 あんな大きな蜘蛛がいたことが信じられないのにそれが自分の家にいると分かったら安心して眠れない。むしろ存在を知らない方がよかった。


「と、とにかくあいつだけは全力で殺してやる。俺の家で好き勝手できると思うなよ」

 新也は目下の目標を手のひらサイズの蜘蛛にする。


 そんな中もくもくと駆除を進めていく火蓮。その火蓮は居間は済ませ、廊下や玄関など蜘蛛が住み着きそうな場所を重点的に行っていた。

「思ったより結構いるね。どこから湧いてくるんだか……」

 想定外の量にため息が出る。それにこれは自分が頑張らないと、とやる気をみせていた。なにせ他の3人は戦力外なのだから。アリシアは遊ぶばかりで寿はまず蜘蛛を理解していない。唯一やる気になっている新也は蜘蛛を見つけるなり悲鳴をあげるだけ。まさか新也があそこまで役立たずだとは思っていなかった。


 そこへ役立たずがやってくる。

「なあ、火蓮。このぐらいの蜘蛛見なかったか?」

「はぁ〜。なにやってんのよ、役立たず。ちゃんと駆除してるの?」

「役立たずってひどいな。俺だって頑張ってんだぞ」

「だったら一匹でも駆除できたの? さっきから悲鳴しか聞こえないんだけど」

「し、仕方ねえだろ。目の前に現れたら、こう、体がぞくぞくってしちまうんだから」

「どうでもいいけど、それよりそんな大きい蜘蛛なんて見てないよ?」

「マジか……。さっき寿が持ってきたんだが、どこに行ったのやら」

 こいつらなにやってんだ、とジト目を向ける火蓮だった。


 そこへまたもや寿がなにやら手を差し出してくる。

「お、おい。今度はなにを持ってきた。つか持ってこず駆除してくれ」

「……違う」

 なにが違うのだろうか。蜘蛛ではない他のものでも見つけたのか、今度の寿は手を握っており、それを新也と火蓮の顔の前に出すと広げる。

「……これ」

 手の中にいたのは小さな六角形の形をした黒い物体。足が六本あり短い触覚がある。


「ってこれカメムシじゃねえか!」


 寿が握っていたのは激臭として有名なカメムシだった。一度その臭いがついてしまうとなかなか落ちないことで有名なあれである。

「そんなもんこっちに持ってくんな!」

「寿! なんてもんを顔に近づけてんの!」

 慌てる二人だったが、カメムシは退路ができたと思ったのかその羽を広げ、飛翔する。そして行きついた場所は……」


「ぎゃぁぁぁ。お、俺のおでこに、おでこにカメムシがぁぁぁ! 取ってくれ! 火蓮、取ってくれぇぇぇ!」

「ちょ、ちょっとこっちにこないでよ! 私も触るなんてできないから!」


 逃げる火蓮。それを追いかける新也。そうこうしている間にもカメムシは動きを見せ、新也のおでこからちょうど真ん中を下っていき鼻の頂上へたどり着く。


「は、鼻にカメムシがぁぁぁぁぁぁぁ! 取ってくれぇぇぇぇぇ!」

 暴れる新也が嫌になったのか、カメムシはそこから飛び立ってくれた。

「や、やっと解放された……」

 安心する新也だったが、しかし次にカメムシが降り立った場所は新也から逃げていた火蓮の元で。


「やぁぁぁぁぁ! わ、私のうなじになんかいる感触があるんだけど!」

 カメムシもいい臭いがする方がいいのだろうか。

「し、新也取って! なんかだんだんと背中の方に入ってきてるんだけど!」

「今助けるぞ、火蓮! だからまずは服を脱げ!」

「わ、分かった! じゃあ服を——って脱ぐわけないでしょ!」

 今そんなことをしている場合ではないのだが、その証拠にカメムシは火蓮の服の中へと消えてしまう。


「あぁぁぁぁぁ! 気持ち悪い! 寿も見てないで手伝って!」

「……分かった」

 近くにいた寿に助けを求めたが、その寿は時に焦るわけではなくなぜか火蓮を羽交い絞めにした。

「寿! なにやってんの! カメムシを取って!」

「分かってる。そのための行動」

「なに言って——」


 そこへ現れたのは新也だった。その顔には笑みを浮かべており手をワキワキと。


「さっきはよくも逃げてくれたな。まあ、俺はそんな薄情者じゃあないからちゃんと手伝ってやるよ」

「ちょ、ちょっとやめ、やめて! 本当に、やっ! どこに手を入れてんの! そんなところに入ってないから! 新也! なんで撫でまわすの!」


 やっとの思いでカメムシを発掘した時には火蓮の姿はあられもない物だった。

「カメムシは取り出せたんだからよかったじゃねえか」

「なにがよかったよ。人の体をさんざんもてあそんで……」

「そ、その言い方をされるとさすがの俺も罪悪感が湧いてくるな。つか、その大きさでもブラジャー着け——いえ、なんでもありません」

「次言ったら本当に撃つって言ったよね」

「う、撃ったらシャレになんねえから! ま、マジでやめ————」


 その後、新也の家には銃声が鳴り響いた。


 時間は進み、日が傾いてきたころ、新也の家は本当に掃除をしたのかどうか怪し状況になっていた。

 物は散乱し、壁や扉には穴が開いている。

 作業は難航する一方で、蜘蛛を見つけては暴れるだけになっていた。

 そんな新也の元へまたしても寿が手を差し出してくる。危険を察知したのか火蓮が退避する。

「あ! てめっ!」

 それに続き自分も逃げようと思った新也だったが、残念ながら寿が袖を掴み行かせてはくれなかった。

 なんという力。新也は一歩も動けずに寿の手の方を見るしかなった。


 今度は握られておらず、寿がきちんと掴んでいる。これならいきなり飛んでくる心配はない。

「ってゴキブリじゃねえか! 無理無理無理無理! それだけはマジで無理だから! 寿もそんなもん掴むじゃねえよ!」


 ゴキブリ。古来より嫌悪されてきた害虫である。見たことはないけど知っているし、見たことないのに嫌いだという人がほとんどというほど、我々の天敵だ。その生命力は桁外れと言われており、中には電子レンジで温めても液体窒素の中に入れても生きていたという事例があるほどの生命力である。

 当然、新也も苦手生物の中でもトップ3に入るほどである。


「これが、ゴキブリ」

 ゴキブリを見るのが初めてなのか、まじまじと見つめる寿。

「あ、あの寿。それは人間の敵だから。今度こそはきちんと駆除してくれ。あとそれどこで見つけた。ゴキブリが1匹いるってことは他にもいるはずだから」

 ゴキブリの嫌われる理由として代表的なのは見た目の他にもその習性にある。それは群れを成すことである。1匹いれば100匹いると言われるほど群れを成すのである。


「……分かった」

 寿は新也から言われた通り、ゴキブリを駆除した。ぐちゃっと……。

「う、うわぁ……」

「……手、洗ってくる」

「あ、ああ……。しっかり石鹸使ってくれ……」

 女子なのにすげえな……。なんの迷いもなく握りつぶすとは……。

「あ、寿! それどこで見つけたんだ?」

「……そこ」

 寿が指さす場所は一つの部屋だった。


「ここって、アリシアの部屋じゃねえか……」


 すると、一部始終を見ていたのかアリシアが新也の元へ笑みを浮かべながら寄ってくる。


「しーんーやーさん。そのーちょっと手伝って——」

「断る! てめえの部屋てめえでやれ。なに安心しろ。取って食われることはない」

「なんでですの! 少しぐらい手伝ってくれてもいいじゃないですの!」

「ゴキ汚部屋になんて入りたくない! 空気も吸いたくねえよ!」

「誰の部屋が汚部屋ですの! これでも整理整頓はきちんとしてますの!」

 結局新也はアリシアは手伝わず、火蓮と一緒に作業を続けることに。そのアリシアは寿を捕まえ今は一緒にアリシアの部屋を掃除している。


 そして新也と火蓮は新也の部屋を掃除した後、火蓮の部屋を掃除していた。

「案外物が多いんだな。なにに使うもんか分からねえよ」

「これらにある物は私に必需品なんだよ。勝手にいじらないでね」


 火蓮の部屋はなんとも色気のないものだった。もっと女の子らしいものなど置いておるのかと思っていたが、そこら中に鉄の塊のようなものが置いてある。それにどこかで見たことあるようなものまで。

「これってお前の武器か?」

「そうだよ。ここにあるのは全部私が使う武器とかその部品。手入れが大変なんだから」

 自慢げに見せびらかしてくるそれは確かに火蓮が使っている拳銃だったが、それにしても量が多すぎる。火蓮の部屋は一種の武器庫になっていた。


「だからここでは暴れないでね。なんかのはずみで暴発しも困るし」

「お前、それフラグだからな。その内誰かがこの部屋で騒ぎを起こす流れだから。主にアリシアとか」

「……絶対にアリシアを部屋に入れないようにしよ」


 ともあれ火蓮の忠告通り慎重に部屋を散策していく。しかしなにせ物が多い部屋だ。散策するのにも一苦労だった。

「お、これは……」

 そこへ新也は一つの棚を見つける。サイズは4段のタンスで木でできたものだった。


「これはしっかり見ておかなければ」

「なにを見るのかな……」

「うおっ!? びっくりした。急に出てくんなよ」

「変なことしようとしてるからでしょ。タンスの中に蜘蛛がいるわけないでしょ」

「ま、まあそうだよな。いやーついつい」


 火蓮はそれでも疑いの眼差し向けながら作業を続ける。


「おーこれはなかなか。まさか黒のスケスケ紐パンを履いているとは。お前も隅に置けないな」

「なっ?」

 しかしいつの間には新也はいつもの間にはタンスの1番下を開け、1つの布切れを取り出していた。

「なんで勝手に開けてんの!」

 顔を真っ赤にした火蓮がすぐさま反転。急いで新也が手にしている物をかっさらう。

「こっちは白か。結構多趣味なんだな」

「勝手に取り出さないで! ちょ、ちょっと! 次から次に取り出さないで!」

「ほう、これは。しかしこれはちょっと火蓮のサイズには——いえ、なんでもありません」


 ————以下、略。


 結局、変なことしかしない新也は火蓮の部屋から追い出されてしまった。しかしどこかほくほく顔の新也の姿がそこにあった。


 それから日は沈み夜も遅くなってきたので、今日の作業は終えることに。どっと疲れた新也達は晩飯にすることにした。

「まあ、こんだけすれば当分、大丈夫だろ」

 いろいろ寄り道はしたが、それでも1日をかけて目的は達成できただろう。その証拠に蜘蛛の死骸は袋に詰めて捨てたし、他にも闖入(ちんにゅう)していた害虫も駆除できた。もし、これでも出てこようものなら本格的に業者に頼むしかない。


 ゴミをまとめて出した新也は居間に戻ると火蓮が用意してくれた晩飯が並んであったので、席に着く。

 みんなが揃って食べようと思っていると、そこへアリシアと寿も戻ってくる。すると寿がまたもや新也の前にくると手を差し出してくる。

「もう勘弁してくれ……」

 また、変なもんを捕まえてきたのか、好奇心旺盛な子供にはこりごりだと思っていたが今度は違った。寿の手には一通の手紙があった。


「……ポストにあった」

「ああ。手紙か。よかった。ってこれ火蓮宛だぞ」


 食事の用意を終えた火蓮に手紙を渡す。

「なんか届いてたぞ。つかなんでお前の手紙ここに届くんだよ」

「そりゃあ、住所変更は済ましたから。私の手紙もここに届くよ」

「は? なに勝手に人んちに住所変更してんだよ! つか『も』ってまさか!?」


 そのまさかである。3人が越してきた日に全員新也の家に住んでいることになったのだ。

 その証拠に寿とアリシアに視線を向けるとご飯を食べなら頷いた。

「お前らの常識が理解できん……」

 新也に常識を諭されたらおわりである。


「で、なんの手紙だ? 年金の請求とかだったらちゃんと払えよ。あとあと面倒だから」

「そんなわけないじゃない。それにそんな生々しい話しないでよ」

「大事な話だろ。年金の他にもたくさん税金はかかるんだから」


 その確認のために寿とアリシアにも視線を移す。

「……問題ない。ちゃんと払ってる」

 まあ寿はお金に余裕がありそうだから大丈夫だろう。問題は……。

「おい、アリシア。お前まさかとは思うが滞納してないだろうな」


「わたくしも問題ありませんわよ」


 心配する新也だったが、アリシアの答えは意外なものだった。だが、アリシアのことだ。これで安心するのはまだ早い。

「なにが問題ないだ。ちゃんと説明してみろ」

「なぜわたくしだけそんなに疑うんですの。なにもおかしなことはしてませんわ」

「お前を信用する方が無理な話だ。いいからどうなってんのか言え」


「はぁ〜。わたくしの場合死亡扱いになってますの。ですので、税金などはかかりませんの」


 ……え? 脂肪? 志望? それとも死亡?


「えっと。意味が分からないんだが……」

 もっともな意見だった。いきなり自分は死んでいる扱いだからと言われて納得できるはずがない。しかしアリシアはめんどくさそうに答える。

「わたくしもよく分かりませんが、死人扱いになってますの? その役場? そう手続きしたとか?」

 アリシア本人も分かっていないらしい。しかし困った。なんて答えていいのか分からない。


「その、えっと……。火蓮の手紙はなんだったんだ?」

 新也は聞かなかったことにした。


 話を振られた火蓮は、しかし新也の声が届いていないのか無反応だった。

「おーい、火蓮。聞こえてねえのかー?」

「え、あー私? いや、別に大したことじゃなかった」


 やっと新也の声が届いた火蓮は手紙をそのままポケットにしまう。火蓮もアリシアの訳の分からない状況に戸惑ったのかもしれない。


 そうして晩飯を食べ終えた一同は汚れた体をしっかり洗いそれぞれの部屋で眠りについた。



 そしてその晩、火蓮は新也の家から姿を消した。



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