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第六刀 輪和荘

大戸綾子との対話を終えた明宗は、理事長室に戻る最中、先程の仕合を思い起こしていた。


――――あの斬撃から考えるに、質は恐らくだが斬法の弐には至っているだろう。

年齢を考えれば上等だが、あいつが弟子にするほどのものは感じなかったな…


あの悪友の初めての弟子と言うこともあって、期待値が高まっていたことは否定できない。それでも一武士モノノフとして見たとしても、その実力は悪友と同年代の時と比べても大きく劣る。

果たして、あの悪友は山木心護という少年に何を見て弟子にしたのか、それを感じることが出来なかった。

悪友が感じた鱗片を自分が感じる事が出来なかったのかを。それともその鱗片がまだ眠っているのか。望むならば、後者であって欲しいと願う。

しかし一瞬。本当に一瞬だけだが、山木心護と悪友の姿がダブった瞬間があった。それは武術にのめり込む者ならば、当たり前の事。

しかしそれでも明宗には…


――――良く笑っていたな


その笑みが特別に感じてしまう。

もしも自分が笑みに感じた物をあの悪友も感じていたならば、彼を弟子にした理由はもしかしたら…


「いや、止めよう。

それはあの二人に失礼だ。

それに、まだ答えを出すには早計すぎる。武芸科として生活を送っていけば、自ずと目覚めていくだろう。判断を下すのは、その跡でも遅くは無いだろうな。

それに彼が住むのは、あの場所だ。休む暇など無いだろうしな」


武の道を行く先人としての傲慢な考えと、教え導く者としての思慮深い目線が覗きながら、明宗は若葉達が集うあの場所で、彼がどう成長し、周りにどう影響を与えるのか、先を楽しみに感じる。

それは何処か、在りし日の思い出と重ね合わせ、良いことが起こると確信しているようだ。


「彼処には、あいつもいる。

しかし易々と認められはしないだろうが、君はどうする?」


そして同時にこれから起こるであろう事を想定し、聞こえぬ心護に問いかけた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


[うん…?」


保健室での治療を終え、渡された資料にある寮へと歩いている最中、心護はふと誰かに呼ばれたような気がして後ろを振り返るが、そこには誰も居ない。

しばし辺りを見渡した心護だが、人の気配がない事を確認すると、髪を掻きながら「気のせいか」と呟き、再び地図に視線を向ける。


「ええっと、この角を右に曲がって直ぐってあるが、どんな場所だろうな。

修行できるスペースがあるといいけど、流石に高望みだろうなあ」


自分が以外にも住んでいる寮生の事を考えれば、余り迷惑を掛ける行為は望ましくない。それならば近く場でそれなりの広さがある場所を探すべきだと考えながら心護は角を曲がる。

そこにあったのは、心護が想像していたよりも大きな建物だった。

三階建てのその建物は、暖色系を基調とした洋風のであるが、ちらほらと和のテイストが見えており、和式に慣れしんできた心護自身も何処となく親近感を覚える。

何よりも驚くべきはその敷地の広さ。堀は高く、2メートルはあり容易に中を除けない。しかもぱっと見ただけでも、建っている宿舎が複数建てる事が出来そうだ。


――――でけぇ。これだけ広ければ、庭を使って鍛錬が出来るかも知れねえ!!


その広さに唖然となる心護だったが、即座に意識を切り替え前向きに考える。今日は幸運な事が多いなと感じながら、輪和荘りんわそうと書かれた敷地へと足を踏み入れる。

瞬間、


「ッ!!」


双方からブン!と空を裂く音を聴覚が拾う。その音が慣れ親しんだ太刀に似通った音だと理解した瞬間、心護は攻撃を視認するよりも速く、音から攻撃の方角を予測し回避する。

後ろに倒れないようにしゃがみつつ、次手に備え重心を後方にして後方への回避を可能にしておく。

バン!と心護が回避した事で対象を無くした二つの太刀がぶつかりあう。

次はどうくると心護が身構えると…

パン|パン!とクラッカーの音が響く。


「は?」


「サプラ―――――――イズ!!!」


舞う紙吹雪と共に堀に隠れていたスポンジで出来た太刀を持つ二人、クラッカーを持つ人、そして入寮おめでとうという旗を持つ人の計4人が現れる。

攻撃がくると身構えていただけに心護は突然の状況に理解が追いつかない。

そんな心護を見かねて、旗を持っていた前髪を掻き上げた髪型が特徴的な青年が手を差し出してくる。


「いや~。驚かせたみたいで済まないな。

俺は武芸科2年赤根あかね幸樹こうきだ。

実はさっきのは…」


「俺がやろうって言ったんだよ。

折角寝食を共にする仲になるわけだからな。

親睦を深める意味でも悪戯ドッキリをしようと考えたのよ。

幸樹と同じく武芸科2年糸原いちはら信輔しんすけだ。

どうだ?ビックリしたか」


赤根の言葉を続けるように名乗ったのは、スポンジの太刀を持った四人の中で最も身長と肩幅の大きい少年糸原は、悪戯が成功した子どもの様な笑みを浮かべている。そんな糸原の姿に赤根は、申し訳ないと手を合わせている。

二人の言葉で状況が理解できた心護は、面白い人達だと思いながら差し出された手を取って立ち上がる。

そんな二人と談笑をしていると、もう一人の太刀を持った額にバンダナを巻いた少年が近づいてくる。


「ホント、うちの脳筋馬鹿がごめんね。

俺はそこの二人と同じ武芸科2年志賀しが克守かつもりだよ。

よろしくね」


「おい。誰が脳筋馬鹿だ!!」


「はいはい。そこの馬鹿は無視して、君の名前は?」


「聞けや!!」


「信。五月蠅いぞ」


「俺が悪いのか、幸樹!!」


志賀を含めた三人のやり取りを聞きながら心護は何処か圧倒されながらも「山木心護」と名乗る。

心護の自己紹介を受け、三名は改めて宜しくと挨拶を交わす。


「さて、最後になったが俺も自己紹介だ。

三人と同じく武芸科2年狐塚こづか宗石そうせきだ。

よろしく頼む。」


心護と三人のやり取りが終わった頃を見計らって、サプライズを仕掛けた最後の一人であるクラッカーを持った男子にしては珍しく長髪をポニーテールにまとめている少年狐塚が自己紹介をする。


「それにしても輪和荘ここは武芸科が多いんだな」


四人の自己紹介を聞いた心護は、ふとした疑問を口にする。心護の疑問を聞いた四人は驚いた顔を見せる。

そんな四人の反応に心護は首を傾げる。


「ではそれも含めて俺が寮を案内しよう。

お前らもそれでいいな」


そんな心護の反応を見た狐塚が寮の案内を勝手出る。狐塚の提案に他の三名も異論は無いのか、任せたと行ってサプライズ道具の片付けを行いはじめる。

片付けを行う三人を後に心護は狐塚の後を追い寮の中に入っていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


寮に入った心護は狐塚の説明を受けながら歩いて行く。


「基本的に階層ごとに学年を分けている。

三階は三年、二階は二年といった感じだな。

各階に部屋は六つある。

一階は例外的に、食堂、管理人室、風呂場、洗濯室がある。

管理人の桐島さんはまだ学校で仕事中だから、また帰ってきたときにでも挨拶するといい。」


心護は食堂、風呂場、洗濯室の場所と間取りを確認していく。心護が内容を理解している事を確認しながら狐塚は話を進めていく。


「そして此処がお前の部屋である104号室だ。

運び込まれた荷物は運ばれているはずだから、説明が終わった後に確認してくれ。

因みにだが、今回の入寮者はお前を含めて5人だ。

基本的に寮の詳しい説明はルール本が部屋に置いてあるからそれも確認してくれ。

その他、ルール本を見て分からない事があれば俺に聞いてくれ。

一応俺が、寮長だからな」


「そう言うのって普通は三年生がやるもんじゃないんですか?」


「ああ。寮の方針でな。

一年しか関わりの無い三年よりも、一年長く関わる二年が二学年のまとめ役に相応しいと言うわけだ。

因みにだが、三年は三人で俺たち二年は玄関で紹介した四人で全員だ。

お前達一年を含めて12人が一緒に暮らすことになる」


「ああ、成る程」


心護の疑問に狐塚は追加情報を交えながら答えていく。説明が進んでいく中、心護は一番気になっていた質問をしようと口を開こうとすると…


「ああ、忘れていた。

鍛錬の方だが、庭にある鍛錬エリアで行ってくれ。

基本的に使用時間に制限はないが、夕方以降は近所迷惑になる事があるから控えてくれ」


後で向かおうと告げた狐塚の言葉に心護は「そんな場所があるのか」という表情をみせる。そんな表情を見た狐塚は、面白いものをみたいう表情を見せながら訳を話していく。


「何も驚く事じゃないぞ。

先程の疑問の答えになるもなるが、此処輪和荘は、武芸科の生徒専用の寮だ。

だから当然、武芸科の寮生達にとって必要な物は最低限だが準備されている。

他にもかつて在籍していた先輩方が残してくれた備品だってあるからな」


「そうなのか…」


先程の疑問が解消されると同時に、心護の胸の内に湧き出るのは今まで続いてきたこの場所に対する敬意に似た感情。

それが歓喜から来たものなのか分からないが、それでも今に続いているという事実に心護は震えたのだ。

そんな心護の心情を計り知る術を持たない狐塚は、案内を続ける。

一度寮を出て向かうのは、鍛錬場だ。


◆◇◆◇◆◇◆◇


鍛錬場は寮の裏手にあり、寮から10メートルほど離れた場所にあった。

木杭によっていくつかのブロックに分けられている。更にはポールが立てられており、ポールの間を垂れ幕が降りており、他のブロックが見えないようになっている。

入り口と思われる場所には立て札があり、名前が書かれている。狐塚はその中で【山木心護】と書かれたブロックの前に来ると垂れ幕開け、中を見せる。


「此処がお前の鍛錬エリアになってる。

基本的な鍛錬用具は設備されてるから、好きに使って貰って構わない。

さっきも言ったが、以前此処で生活していた先輩方が置いていった機材もあるが、それは貸し出し制だから、桐島さんが帰ってきてから確認してくれ。

自分専用の機材も運び込んで設置しても構わない」


狐塚に見せられた鍛錬場は、打ち込み台やすり足を行う為の場所など、本当最低限の設備が置かれている。

鍛錬場を確認した心護は、当初の考えよりも恵まれた環境に喜びを覚え、管理人である桐島という人物が来たならば、他にどんな設備があるのかを確認しようと考える。

寮内の案内をしてくれた狐塚へ感謝を告げようとした所。


「おっ!

タイミングバッチリだな!!」


「それはいいから、お前も運ぶの手伝いや。

この脳筋馬鹿…」


「いや案内は終わった感じだし、ギリギリじゃないか?」


現れたのは先程分かれた筈の2年の面々。2年は不思議な形をした案山子かかしとも打ち込み人形とも言えるものを持ってきている。


「遅かったなお前達。

少し焦ったぞ」


「悪い悪い。

色部いろべ先輩がバレないようにと隠してたみたいで探すのに時間が掛かった」


同機の姿を見た狐塚は何処か安心したような顔をしつつ、何処か責めるような言葉を吐く。ある意味で嫌みを受けた三人だが、代表するかのように赤根が形上といえる軽い謝罪を口にする。

そんな中心護は、自分が場違いに感じており、さっさと部屋で荷解きをはじめようとするが…


「さて寮の案内も終わった事だし。

山木!!此から、輪和荘式歓迎会を行うぞ!!」


「歓迎会?」


狐塚の言葉と共に再び鳴るクラッカーの音に心護の足は止まる。改めて彼らの方を振り返る。心護の視線の先には、2年生である四人が楽しそうな同時に、何処か試すような視線を向けてきている。

元来、武士モノノフとは負けん気が強くなければ続けることが出来ない。故に、試されるという一種の見下しと取れる挑発は、分かっていても無視は出来ない。

そんな舐めるなとでも言うべき心護の視線に狐塚達はそうで無くてはと笑みを深める。


「それでこそ、武術科の生徒だ。

やって貰うことは簡単だ。

この歓迎君に向かって一撃叩き込んで貰う」


狐塚はバシバシと案山子を叩きながら輪和荘式歓迎会の内容を口にする。内容を聞いた心護は隣にある歓迎君と呼ばれた案山子共打ち込み人形ともいえるものに視線を改めて向ける。

後ろ向きに立っているそれは、形を見れば案山子に打ち込み人形の打ち込み部分が付けられている様に見える。全体的に見れば打ち込み人形だが、心護の知るものよりはだいぶ細く、どうしても案山子としてのイメージを持ってしまう。

更に胸・両肩・頭の部分に黒いカバーがあり、土台部分と背面部分にバネのようなもので支えている。


「見たとおり、古臭くこんな摩訶不思議な形をしている歓迎君だが、仕込まれている技術はそれなりでな。

黒い部分に衝撃がくると、中に入っているセンサーが反応して受けた衝撃箇所の真下にあるバネに、掛かった力を加えて歓迎君を弾く。

そんで何処まで歓迎君こいつを跳ばせるか。もしくは押し出すかを先輩である俺たちに見せる」


簡単だろ。

何処までも挑発的な説明を聞いた心護は、面白いとばかりに笑みを浮かべて、狐塚の無言の問いかけに答える。

その笑みが返答となり、狐塚たち上級生と心護の立ち位置が入れ替わる。

心護は先程も仕合で使った木刀を構え、歓迎君を己の間合いに入れて立つ。その立ち姿を見た上級生達は、感心したように口笛を吹く。


「へえ。思った以上に綺麗に立ってるね」


「ああ。良く鍛えている証拠だな」


「そうだな。新入生の中では一番じゃないか?」


赤根、糸原、志賀が心護の立ち姿に関心を見せつつ、本日行ってきた新入生たちと比べた評価を口にする。

何処か上からの評価は、自分たちの方が強いという武士モノノフ特有の自負が故。

そんな三人の言葉を聞きながら狐塚も言葉を発する。


「立ち姿だけではなんとも言えないだろ。

輪和荘式歓迎会これも実力の一端を見るためのものだろ」


狐塚の言葉に三人は、それはそうだと笑みを浮かべて再び心護の方へと視線を向ける。

三人の言葉を聞きながら狐塚は、やっぱり武士モノノフにならんとする奴らは、我が強いなと思う。


――――まあ、俺の人のことは言えないけど…


武士モノノフになろうと武術科に入学してくる者達は、全員が全員我の強いくせ者揃いと行っていい。それは己の我の押しつけこそがある種、武の本質であり、全員が自分こそが一地番強いと疑っていない。

だからこそ、他の武士モノノフと我をぶつけ合い、勝ち負けを繰り返して認め合う。

同学年ならばそれで問題は無いが、下級生だと問題が起きる。

基本的に上級生と下級での武術交流が本格的に行われるのは、学期の中頃からだ。故に、どうしても上級生と下級生の間で溝と言えるものが無意識下で形成されてしまう事が多々ある。

この歓迎会を開く本当の目的は、その溝を生ませないための催しだ。此処で誰か一人でもいい、上級生に認められる何かを見せる事が出来れば、自分が認めた者が認めたならばとなり、他の上級生達も、下級生を認めると行かないまでも、意識をする。

そうなれば、先程も述べた溝は生まれにくくなる。

即ち此は、武芸科に入学してきた新入生達が初めに直面する上級生からの試練。


――――他の新入生達は見事乗り越えた。

だが山木心護、お前はどうだ。


例え今回の歓迎会で認められる事がなくても、認められた下級生と切磋琢磨していく中で認められた話も多く聞く。

故に此が全てではない。それでもやはり、初見からワクワクさせてくれる相手が入寮してくれた方が面白いと思う。

だから…


「魅せてくれよ」


期待を籠もった言葉が口から零れた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


歓迎君の前に立ち、呼吸を整えている心護は集中しながらも、無視できな物を感じていた。


―――――見られてるな…


近くで自分を見ている4人だけではない。もっと多くの視線が肌を突く感覚を感じている。その正体を考えるまでもない。


――――俺と同じ輪和荘ここに入寮した新入生。後は、姿を見せない三年生たち。


姿は見せない。しかし、自分に突き刺さる視線が存在を知らせている。

見定められている。それは坂原仙弥との対等な仕合とはまた違う、ぶつかり合い認め合うのではなく、己が技量を持って周りに分を認めさせる一種の仕合。

ああならば、逃げるわけも出し惜しむ訳にもいかない。

先程の仕合で受けたダメージなど言い訳にしない。


――――行くぞッ!!


◆◇◆◇◆◇◆◇


心護の呼吸音だけが聞こえる中、その一撃は放たれた。

呼吸を吐き出すタイミングで上段から振り下ろされた一太刀は、吸い込まれるように歓迎君に叩き込まれた。

僅かな無音。その僅かな間に歓迎君の仕込まれたセンサーが、心護の一太刀の威力を算出。

バネが圧縮され、歓迎君を弾き飛ばす。


「「「「ッ!!」」」


そこまではいい。4人が驚いたのはその高さ。

優に2メートルは弾き飛ばされた歓迎君に彼らは驚きを隠せない。


「おいおいマジか…」


「㎝単位で見るものだよな」


「歴代でも最高記録かもな。

まあ兎も角、今年に一年は粒ぞろいだな。

お前的にはどうなんだ、宗石」


各々が驚愕を口にする中、志賀は無言を貫く狐塚に問いかける。

志賀の問いかけに今まで表情に変化のなかった狐塚の仮面が剥がれる。


「面白いに決まってだろ!!」


「まあ、お前ならそう言うよ。

2年おれら最強トップ

それぐらいって貰わないと、困るけど」


「ふん。

少しでも弱気な返答だったら、2年最強このざを奪うつもりでいた奴が言う台詞か」


「ハハ。バレた?」


「当然だ。それはお前達も同じだろ」


不適な笑みを見せた志賀に呆れた表情を見せた狐塚が流れる様に前にいる二人にも釘を刺す。

指摘された前にいた赤根と糸原の二人は、見透かされたかと此方も不敵な笑みを浮かべている。


「まあ今は兎も角、新しい仲間を歓迎しよう」


不穏な空気が流れかけたことを察した狐塚が空気を変えるように、今回の主旨を改めて告げる。

狐塚の言葉に他の3人は、それもそうだなと、今は新たに加わった仲間を祝うために心護の元へと駆けていく。


――――山木心護。

全くの無銘ながら此処までの一太刀を放つとは、本当に今年は面白い後輩が多いく居て楽しみだ。



心護を含め新たに入寮した面々と関わる事で自分たちがどう成長していけるのか、今後思い狐塚もまた楽しそうに笑みを浮かべた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


先程の仕合も合って既に身体は解れていた事もあり、ダメージがあった事も含めても改心の一太刀を叩き込む事が出来た。


――――手応え良し!!


手応えに相応しく弾き飛ばされた歓迎君を見て心護は満足げな表情を浮かべる。チラリと2年生がいる方を向けば、誰もが驚愕で目を開いている。

その反応を見ただけで己が起こした結果が上等だと理解出来る。二年生達が何か話している。何を話しているのか興味があるが、今はどうでもいいと切り捨てる。

それよりも今は、告げねばならない言葉がある。

此方に向かって来ている2年生に向かって告げる。


「改めて今日から此処、輪和荘で世話になる。

斬荷流 山木心護。

宜しくお願いします!!!」


何処までも真っ直ぐに、己が名と己が最強と信じる流派ほこりの名を告げた。

駆け寄ってきていた3人と後ろに控えていた狐塚は、心護の名乗りの意味を理解する。故に認めよう、この生意気な新たな同胞を。


「「「「此方こそ宜しく!!」」」」


此処に本当の意味で心護は輪和荘の仲間として認められた。

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