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シラーの花束  作者: るりあんや
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発覚

やけに冷静だった。動揺で心が跳ね上がるようなこともなく、動きの止まった海のようにただ一色に染まりきった、静寂の中にいた。

「四季くん。きっとあの先生は、嘘を言ってるんだよね。なんであんな嘘つくんだろうね。 

もう嫌になっちゃうよ。」

「大丈夫。生きてるんだから。心配しなくて大丈夫。きっと次入ってきたときにドッキリでした〜って入ってくるって。それにしても何言ってるんだろうなあの先生は。冗談きついよね。」

全力で律をフォローしたつもりだ。今は、その言葉があっているのかなんて考えることはしなかった。とにかくこの空気は居心地が悪かった。

今まで、二人で過ごしてきて味わったことのないこの空気。ぶっ壊さないとと思ってしまった。

医者が診察室に入ってきた。何を言うのかと二人は、息を呑んだ。

「お待たせしてごめんね。調べてみたんだけど…なかったよ。だから、病名も症状も治療法も今から、全部1から調べてこちらも研究しながら手探りでやっていくしかないんだ。ごめんね。」

「ここで何個か注意しなきゃいけないことがあってね。1つ目がさっきも言ったけど、研究しながらの治療になると思うから、何かと協力してもらうよ。2つ目は、原因や治療法がわからないってことはどんどん病気は進行してるってことだから、いつ死んでもおかしくない。」

誰もなったことがない病気なんて律はこれからどうなるんだ。何も失ってないのに、何かを失ったような失望感が自分が襲った。

「律は、普通の人です。今までずっと元気に生きてきた。どこかが痛いとか悪いとかそんなの言ったなかった。なのに本当にいつ死んでもおかしくないんですか。」

「うん。おかしくない。多分この病気は無症状なんだと思うよ。だから何かが悪くなると危ないとかはないんだ。いつでも危ない。場所、環境、季節そんなの関係ないよ。ずっとずっと元気だった君は、ずっとずっと危ない君になるんだ。」

僕は、なんの反応もできなかった。思考回路は停止した。

「それでも私は私です。」 

律は口を開いた。目に動揺も揺らぎもない。僕は驚いた。普通、健康診断を受けに来て死ぬかもしれないと言われたら動揺が隠せないはずだ。

「では、これからよろしくお願いします。」

「はい、よろしくね。お互いにわからないことばっかりだけど、少しでも長く生きていられるように頑張りましょう。」 

『ありがとうございました。失礼します。』

二人で診察室をあとにした。



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