3-20 紅狐とあーちゃん5
「『漆黒ノ毒』っ!!!!」
ニュートンが叫ぶと同時に、黒いモヤが辺りに充満する。すっごいくさそう。急いで距離を取ったけど……。マズい、ちょっと食らったかも。
「小娘ぇ……! 食らったな! 我が技を!」
大声で笑うニュートン。うるさい人は嫌い。わんちゃんくらいがちょうど良い。とか考えてたら唇や指先が痺れ始めた。
「あ……れ……?」
「グハハハハ!! もう逃れられんぞ小娘!!」
「ニュートンさん、良い仕事です。」
「おお! 伯爵殿! これであとは片付けのみ、一気にやってしまいましょう!」
指先の痺れが段々と腕や足に向かってくる。視界の端で自分の状態を確認する。
ーーHP:80/100
ーー状態:毒、麻痺
おーのー。これはほんとにマズい。毒と麻痺のアンハッピーセットなんて聞いてない。
「気付いたかぁ……! 我の技は毒と麻痺よ!」
「ニュートンさん、あまり情報を洩らしてはーー」
「伯爵殿! 既に勝ったも同然、少しは悦に浸らせていただきたい!」
もう勝った気になっているニュートンは聞いてもいないのにボロボロと情報を洩らす。
ーー曰く、正体は『守宮』だと。
技は『漆黒ノ毒』。イモリの一部が持つ、テトロドトキシンの麻痺と毒を周りに散布する技らしい。ただテトロドトキシンはあまりに強力な毒なので神様が能力制限をかけて、死ぬことはないけど体力減少と一時的な麻痺が起きるらしい。
「カッカッカッ!! 良い気分だ!!」
「目に見えて調子に乗ってますね、ニュートンさん……。」
「応ともさ! 弱った獲物を仕留める前には矢張りこのように説明をするのが勝者の役割でしょう!」
「まだ……負けて……ない……!」
キッ、と睨みつけたけど……。手にも足にもあまり力が入らない。 あーちゃんの前に立つわたしに、あーちゃんが声をかけつつ敵に攻撃を仕掛ける。
「紅狐さん! ……えぇい!!」
「ダメっ……!」
あーちゃんの放った水流は、身を捩る程度で避けられてしまい当たらない。敵さん二人の回避が上手すぎる。
「伯爵殿、あちらの童女ももう待ちきれない様子。そろそろ締めと参りましょうぞ。」
「そうですねぇ。……だから言ったでしょう。私達には勝てない、忠誠を誓えと。」
ーー1歩、敵さんが踏み出す。
「ひっ……ひう……。」
「あーちゃん……逃げて……。」
「く、紅狐さんを置いていくなんて……! で、できるわけないじゃないですか!」
ポロポロとあーちゃんが泣いちゃった。……でも、この二回戦は一人でも無事に生き延びる方が有利。
「『狐火』っ……!!」
建物外に張っていた陣も解き、目の前の敵さん二人の進行方向に再度狐火の陣を張る。
「おやおや、まだ抵抗するとは……。やはり、貴女を逃すのは勿体無いですねぇ……。」
狐火を警戒して、一瞬立ち止まった伯爵は喋りを続ける。でもニュートンはもう我慢できないみたい。
「伯爵殿、二度の温情を無碍にしたのは小娘達ですぞ。今更仲間にもなりますまい。」
「でも……。」
「目の前にあるから未練が断ち切れないのです。我が断ち切って差し上げよう。」
そう言い切り、ニュートンは飛ぶようにわたしに急接近をする。陣も何も気にせず、最短距離を最速で。
「『炎陣』っ……!!」
「当たらぬと言っただろうっ!! 死ねぃ!!」
ーー炎を避け、小刀が迫る。
ーーもう無理か。
「……させるかぁ!! 『秘技・柔』!!」
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