3-13 Slenderと食人鬼1
言葉と同時に食人鬼は駆け出し、鎌を振るう。右から左、下から上へと縦横無尽に鎌が振われる。
「ぜぇあ!!」
「あぶねっ! ちょ! 近寄んな! 『鎌鼬』!」
あまりの猛攻に、無造作に鎌鼬を放ってしまう。食人鬼は難なくそれを避ける。
「ほう。風か。」
「意外と切れるぜ、気をつけな。」
「御忠告痛み入る。まあ聞いたところでやることは変わらんがな。」
チャキン、と音を鳴らし食人鬼は再度鎌を構える。その音と共に、今度はSlenderが飛び出してくる。
「ぽぽぽっ!!」
ーーシュ!!
風切り音を立ててSlenderの拳が迫る。自身の周りに風を張り、攻撃を受け流す。構えを見るに、おそらくフリッカージャブと言われる類いのボクシングの技に近い攻撃だろう。長いリーチが邪魔をして、Slenderには中々近寄れない。
「ぽっぽぽっぽと喧しいな! 機関車かお前は!」
「ぽぅ!!」
「えっ⁉︎⁉︎ ぽぅ⁉︎⁉︎」
新しい語彙に一瞬動きが止まり、頬に攻撃を食らってしまう。風を張っているのにも関わらず、力で強引にねじ込んできたのだ。ダメージは軽減できているが痛いものは痛い。
「グッ…!」
「彼女だけが相手ではないぞ?」
いつの間にかそばまで近寄って来ていた食人鬼に面食らう。気配消しといい、やっぱり忍者だコイツ。
「『豪火球』!!」
「『空』!!」
相手の技とほぼ同時に空を放つ。食人鬼の攻撃は鎌の振りに合わせ、5〜60cmの炎を放つ技だった。空を放ったおかげで直撃は免れたが、片腕を斬り焼かれてしまう。
「熱痛ぇ!! クソッ!!」
「ちっ……。面妖な……。」
「ぽ!!!!」
食人鬼の攻撃の合間を抜い、Slenderが再度殴りかかってくる。
「めんどくせぇ! 『空』!!」
空でSlenderの向きを40°程ずらし、食人鬼に拳を向けさせる。しかし食人鬼は意に介さずそれをサッと避ける。オイオイ、こんな簡単に避けるとかどんな反射してんだよコイツ……!
「……なるほど。目眩しと方向転換か。1人で相手をするには厄介だな、お前は。」
「……おたくも中々に厄介だよ、鎌に炎にずば抜けた反射速度。あちらは遠距離からの牽制。鬱陶しいったらありゃしないぜ。」
「ぽ……ぽぽ。」
どうだ。と言わんばかりにぺったんこな胸を張るSlender。うーむ、こんな時にも身体に目が行くのは男としての性だから仕方ないにしても……。見事なまな板だなぁ……。
……と、失礼極まりない考えをしているのを分かったのか、Slenderは顔を怒りで真っ赤に染め、睨みを効かせてくる。ああ、そういえば知能はあるんだった、ややこしい。
「Slenderなんて聞こえの良い名前より、フラットチェスト略して『フラッチェ』とかの方が良かったんじゃないか?」
「ぽぽ……ぽぽぽぽぽぽぽ!!!!!」
案の定、烈火の如く怒り出してしまった。良い皮肉のつもりだったが、予想以上に響いたみたいだ。
怒った様子の中、Slenderの背中から紫色のモヤが上がる。コイツ、何か仕掛けてくるつもりだ……!
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