3-12 地獄巡り
『んじゃ、とりあえず通信終了! “怠惰“な君達のお尻に火をつけてあげたんだ、敬えよー!』
そんなことを言いつつ、神様の声は途絶えた。怠惰……ねぇ? 一回戦を戦いもせず逃げ延びたヤツや、今本拠地で動かずグータラしている奴等がいるならそれもその通りか。
神様は相変わらずゲーム内での刺激に執心のようだ。これがボードゲームなどのゲームマスターとしてならば優秀なのだとは思う。しかし実際には人命がかかっているのだから、素直に褒める気持ちにはなれない。
「神様が動き出す前に陣地を増やしておかねぇとな……。」
そう心に決め、俺は最寄りの未占領地へと駆ける。着いてみると、そこでは二人の人影が争っている最中だった。
一人は特大の女。身長は優に2mを超えているであろう。長い腕を振り回し、敵を寄せ付けないようにしている。仮称は“のっぽ“とでもしておこう。
もう一人は忍者のような姿をし、両手に鎌を持った男だ。刃先からは火が現れ、のっぽの振るう腕に合わせて火を放ちつつ刃で少しずつ傷をつけている。仮称は見た目から“忍者“で良いだろう。
傍目から見て、戦いは膠着状態のようだ。のっぽの腕が忍者に掠めることもあれば、忍者の火刃ものっぽに当たっている。お互い技は使わず牽制をし、隙あらば陣地を占領したいのだろう。これはチャンスだ。俺には誰にも気付かれない技がある。今のうちに陣地だけを貰ってしまおう。
「身を隠せ……『色』!」
色を使い、空を駆け建物内へ侵入し、易々と宝石の近くに辿り着く。さっさと破壊して、さっさとズラかろう。長居は不要だ。鎌鼬を放ち、宝石を破壊する。
ーーバキィ!!
ーーHP:0/30
無事に天狗の印の入った旗が立つ。これで二つ目。本拠地も入れれば陣地は三つだ。上々の成果だろう。一度本拠地に戻ろうと思った……矢先。建物の壁がが大きな音を立てて崩れた。砂埃が舞う。
「ぽ……ぽぽぽ……。」
「……。」
砂埃が晴れた先には、先ほどの忍者とのっぽが居た。どうやら宝石の破壊音で気付かれたようだ。しかも二人仲良くこっちを見てるし……。
「あー……。お二人さん、戦ってたんじゃ……?」
「ぽぽぽ……。」
「え? なんて?」
「漁夫の利など許さん、と言っているのであろう。顔を見れば分かると思うが?」
「……ですよね。」
シャキン、と音を立てて両手の鎌を鳴らして構える忍者。のっぽも戦闘態勢に入っているようで、ボクシングのデトロイト・スタイルのような構えを取っている。
「俺は『狗』という。無理は承知で聞くが……見逃してはーー」
「見逃すなど有り得んだろう、盗人は死罪だ。」
「ぽ!」
どうやら奴さんは相当お怒りで、さっきまで戦っていた相手と共闘してでも俺を殺す気らしい。こうなっては戦う他あるまい。にしてものっぽ、『ぽ』しか発言してないな……?
「そっちののっぽ、もしかして知能低下してるのか?」
「ぽ……? ぽぽぽ!」
ブンブンと怒りながら身振り手振りをしている。知能はあるようだ。発言に関する言語能力のみ制限されているのか?
「のっぽなどと言ってやるな。コイツにも名前はあるみたいだぞ。」
そう言いつつ忍者は警戒したままのっぽと連絡先を交換し始めた。今の会話で少しは怒りも落ち着いたように見えるし見逃してはくれないだろうか……?
「ふむ……。コイツは“Slender“という名前らしい。確かにスレンダーだな。俺は“食人鬼“とでも名乗っておこう。無論種族は別だがな。」
「こいつは丁寧にどうも。丁寧ついでに警戒を解いてくれたりは……。」
「するわけないだろう! いざ参る!」
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