2-52 嫁入りと獄卒3
ーー目の前にいる女性。『嫁入り』といったか。余裕綽々といわんばかりに、私に対して無防備な状態を晒している。チラリと自分の体力と相手の体力を確認する。
ーーHP41/90。
ーー嫁入り:90/90
……拙いね。倍以上の差がある。それに相手は全快の状態だ。此方は既にボロボロ、状況は芳しくない。しかしやらねば。ここで死ぬわけにもいかない。生きて帰って、工房でそのままになっているアレを仕上げなければ……!!
「さて……御覚悟を。その命、頂戴仕ります。」
キン、と音を鳴らして畳んだ蛇の目傘と簪を構える。表情も先ほどの余裕な状態と違い、戦闘体勢になっている。敢えて言うのであれば、太刀と小太刀の二刀流のような構えだろう。わりと様になっていて隙は微塵も見受けられない。
「……こいっ!! 少女の守護者『天輪』が相手になろう!!」
「『嫁入り』、参ります。……いざっ!!」
目前に簪が迫る。それを左手の円盾で受け流し、崩拳を叩き込む。一度は跳ね除けたものの、嫁入りの攻撃は止まらない。蛇の目傘を振り抜き、合間に簪を差し込む、息つく暇もない猛攻だ。蛇の目傘をパリイした時に、違和感に気付く。ズシンと重みを感じた。前蹴りを放ち、距離を空ける。
「……華奢な見た目に騙されるとこだった。それ、仕込み傘だね?」
「ほっほっほ。よくお分かりになりましたな。左様に御座います。私めの傘は特別なものと相成っておりましてな……。此のように……。」
ーーキンッ。
柄の部分を引き抜くと、刃というには鈍く太い鉄の塊が露わになる。
「鉄を仕込んで御座います。」
「危ないねぇ。淑女が持つには些か物騒ではないかな?」
「女も身を守る時代であります故……。」
スゥ、っと。嫁入りは滑るように此方に踏み出してきた。この足捌き……どうやら私の相手は歩行術の使い手らしい。
「貴方様が如何様な武術を嗜んでおいでか、存じませぬが……私めも負ける訳にはいきませぬので。」
ーーキンッ!!
仕込み傘を振り下ろして、斬り込んでくる。二刀相手に直接受けるのはやってはならない。全ての攻撃を受け流し、回避に専念する。何度かの剣戟を捌いたところで、ふと気付いた。この女性、歩行術は一級品だが、剣術は我流でそこまで脅威ではない。素人よりも扱えるが一級品には及ばないレベルだ。
仕込み傘の攻撃を地面に向けて流し、足で押さえながら、もう一方の簪を円盾で受け止めて、ガラ空きの胴体にボディブローを捻じ込む。
「かっは……!!」
「君の攻撃は見切ったよ。その程度の剣術なら私の敵じゃないね。」
嫁入りがボディブローを食らい悶絶しているところに、ジャブと膝蹴りを放つ。2連撃によって後方に大きく吹き飛ばされ、体勢を崩す。
ーーHP70/90。
「嗚呼、痛い……。私、あまりの痛みに気が狂ってしまいそうです……。」
「そのまま狂ってくれた方が助かるよ。」
「御無体な……。では共に狂うとしましょう……!!」
ーーゴキゴキっ!
嫁入りは身体中の骨を鳴らし、構えを変える。何かくるっ……!!
「ーー『骨髄吸尽口』。」
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