1-5 一回戦の説明
神様が名付けを終えた瞬間、再度先ほどのスクリーンが現れる。僕の名前は変わらず『狗』の表記だ。そしてぼうっとしていると、少し前方にいた人型が手を挙げた。
「許可する。発言していいよ。」
「ーー神様。名前の再入力は可能でしょうか?」
少し高めの男性の声が聞こえた。その発言を聞いた神様は満面の笑みを浮かべて返答をする。
「ダメでーす! ていうか君、ボクが名付けたんだから喜びなよ! なに、『お願いします神様、私の意見を受け入れて下さい』って! ボクの名付け嫌なの? 消されたいの?」
……そう言われて男性は、大人しく手を下げた。どんな名前を付けてもらったんだろう? 可愛い系統の名前だったのか? それとも……いや、考えるのはやめよう。藪蛇になりかねない。
と考えを中断すると明らかにこっちに視線を送っている神様が、話を始める。
「うんうん。そこのゴミカス君は身の程を弁えてるねー。偉い偉い。特別にゴミカス君って呼び方は一回戦が始まったらやめてあげよう!」
ニコッと笑い、神様は話を続ける。
「それじゃあ一回戦の話をしようか。まずは場所だけど、今から作り上げるエリアで戦ってもらいまーす。ほいほいっと。」
まるでピアノを弾くように、何もない空間で神様が指先を動かすと……。
神様の後方に大きなスクリーンと、何もない空間にビルや建物、様々な物が立つ映像が流れ始めた。そのビル群や風景には見覚えがある。
犬の銅像に、タワーレコード、宝くじ売り場、大規模交差点、そして『渋谷駅』の表示。
「よしよし! これでおっけーっと! 後ろのスクリーンに見えてる通り、一回戦は仮想渋谷地区で戦ってもらうよー! ルールは単純、力を使って相手を倒せばオッケー! ゴミカスの君達にも分かりやすい、単純明快なルールでしょ??」
まあ細かいルールはあるけど、と神様は続けた。その内容を要約するとこうだ。
・便宜上、参戦者を『プレイヤー』、他の者を『人』と分ける。
・夜の渋谷で戦う。倒した、倒されたという基準をわかりやすくするため、神様がプレイヤーの体力を設定しゲーム風にHPで表示されるようになる。
・疎らだが他に人もおり、その人間の恐怖心を煽れたらHPが少し回復し、殺した場合は恐怖心を煽るより大きく回復する。
・人として今渋谷にいる者は、救いようのない人間なので殺しても問題はない。しかし殺した場合はリポップはしない。恐怖心を煽って回復をした場合、一時的に居なくなるが、時間経過でリポップする。
・建物は破壊しても一定時間経過後に直る。時間経過で夜が明けることもない。
・一回戦開始前に個室で能力確認をする時間を10分設けるので、そこで力の使い方を理解し、戦う。
・現在50名いる生存者が、30名になるまで続ける。時間制限は無し。