2-38 齟齬と天輪の種族
あーちゃんの会心の一撃により崩れ落ちた天輪が元に戻るまで待ち、今度は天輪に向けて話を切り出す。
「天輪、聞きたいことがある。」
「うっ……ふぅ……。……なんだ?」
おい、なんか聞き捨てならん声がしたぞ。でも触れたくない。無視して話を進めよう。まずは改めて紅狐とウーの種族を話し、天輪自体についてを聞く。
「天輪、お前“記憶持ち“なんだよな?」
「ああ。ここに送られる以前の記憶も持っている。約2週間後に控えた12月の新作発表会に向けて最終調整をしていたところだった。」
「……12月? それ、本当なのか?」
「? ああ。本当だとも。」
おかしい。俺の記憶ではまだ9月になったばかりだった筈だ。
「……天輪。真面目に答えて欲しい。お前の送られてきた日は何年何月だった?」
「2019年の11月末だ。すまんが日はしっかりと覚えていない。」
「……そうか。ありがとう。天輪、驚かないで聞いてくれるか?」
「ん? なんだね、改まって?」
「俺も“記憶持ち“だ。そして俺が送られて来た日は2021年9月なんだよ。」
「……なにっ⁉︎ 狗くん、それは本当か⁉︎」
「ああ。本当だ。嘘を言う必要がない。」
「ということは……。私達は別の時間軸から集められているのか……!」
……どうやら天輪と俺は別の時代の人間のようだ。いや、突飛な発想だがもしかすると世界線すら異なる可能性もある。それだけ重要な話を聞けた。しかし、答えは神様しか知らない。今は捨て置こう。それよりも天輪自身の話を聞く方が優先だ。
「狗くん、ありがとう。有益な情報を得られた。」
「いや、こちらこそだ。話は変わるが、天輪。お前の種族はなんなんだ? 確か元の姿とか言っていたよな?」
「ああ。聞いていたか。私の種族は『輪入道』。本来は馬車の車輪のような姿か、牛車になる。」
「牛車? それはどんなものなんだ?」
「そうだな……。平安貴族が乗っていた牛や人が曳く籠と言えばイメージできるかな?」
「あー、なんとなく分かった。因みに車輪状態の時は……?」
「車輪の中央、車軸と繋がる部分に私の顔が出てくるな。」
「……うわぁ。」
「……わーお。」
「貴様……!! なんて姿を……!!」
「あ、あはは……。」
天輪以外の全員がその姿をイメージしてしまう。反応を見るに、やはりキツいものがある。あーちゃんに向ける全力の笑顔のまま、車輪と回る天輪の顔……想像しただけで気持ち悪すぎる。
「……? 皆、どうしたんだ?」
「いや、気にしないでくれ。ちょっと思うところがあっただけだ。」
「私と狗くんの時代の差……か。確かに驚くのも無理はないな。私も心底驚いている。」
うんうん、と勝手に納得し頷く天輪。本当は違うのだが、良い方に勘違いしてくれて良かった。
「天輪、それと技についてだけど……。」
「『剛震滅却』か?」
「ああ。他に技はあるのか?」
「いや、ないな。それと元の姿の時には使えない。元の姿の時は、炎上の状態異常付与の力を持って相手を轢くくらいだよ。」
「炎上?」
「うーむ、何と言ったらいいか……。持続ダメージと言うのかな? 一定時間経過の度にダメージが入るのだよ。」
「やけど、違う?」
同じ火を使う者だからか、紅狐が割って入る。
「火傷とは違うね。常に服が燃えている、とでも言ったら良いのかな?」
「なるほど。りかい。」
「紅狐さん……だったかな? 君ももしや火を?」
「ん。同じ。」
「ほうほう。それなら私の力と合わせたら相乗効果に期待できそうだね。」
「……うん。」
あ、ちょっと嫌そうな顔をした。俺は良くて天輪はダメなのか。なんとなく少し嬉しい。……というか、天輪。うちの紅狐姫さまには反応しないのか?
「ああ。私は12歳以下の少女を守る守護者だからね。それくらいは感覚でわかる。なに、嗜む程度の力だよ。」
……うっわぁ。真性の小児愛者じゃねえか。しかもなんだよ、そのクソほど役に立たねえ特殊能力。気持ち悪い通り越して怖すぎだよ。種族『輪入道(ロリ専)』に変えた方がいいだろ。
お読みいただきありがとうございます。
ここからまた少しずつ話が広がっていきます。
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