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無銘〜怪異に堕ちた僕達〜  作者: ミリな所持金(ry
第二章 一回戦
32/138

2-21 ダイダラボッチ戦2

 ーー駆ける。

 細い路地を、高いビルの隙間を縫うように駆ける。後ろからは規則的な「ドシン……ドシン……」という重音が響く。


 ーー駆ける。

 目的地に向けて、ひたすらに駆ける。


「グオォオォォォォォ!!!!!!」


 後ろからはダイダラボッチの足音と咆哮。しかし奴は思うように進めていない。俺の()()()()だ。イメージしてほしい。足の踏み場もない自分の部屋を。足を怪我しないように、物を壊さないように歩く様を。

 ……思った通りにはなかなか歩けないだろう? 奴の状況はそれと同じだ。攻撃するのには気を遣わなくても、いざ歩くとなると障害物は出来るだけ避けてしまう。人間なら誰しもそうだ。


「はっ。得意のデカイ図体もここじゃ無用の長物だな!」


 敢えて、触れられそうで触れられない位置に陣取り、ダイダラボッチを誘導する。目的のオフィス街のど真ん中へと。


(あと少し……!!)


 ビルに囲まれた交差点。そこまでダイダラボッチを誘導し、止まる。()()()()()()()


 ーー観念したのか?


 と言わんばかりに全力でこちらに走ってくるダイダラボッチ。こちらの意図に気付かず着いてきてくれてありがとさん。


「グオォオォォォォォ!!!!!!」

「あー、疲れた。細工は流々……後は仕上を御覧じろってな!!」


 ダイダラボッチの足元をすり抜け、すれ違いざまに両足のアキレス腱を鎌鼬(かまいたち)で深く抉りとる。ダイダラボッチの体の造りが、人体と同じであるならば……!

 フッと、ダイダラボッチが前に向けて倒れ込む。人間で言うところの『アキレス腱』を切られたのだ。立つことは勿論、歩くこともままならない。


「構造が人体と同じで良かったよ。おかげで楽にいけそうだ。」


 ーーパチン。

 ーー指を鳴らした直後。


「『炎陣(えんじん)』っ!!」


 ダイダラボッチの顔面付近は大きな炎に包まれた。



 ーー数十分前ーー


「つまりだな、作戦はこうだ。まずは俺が囮になってダイダラボッチをこの道に誘導する。そんで、なんとかひっくり返すから、紅狐(くこ)は倒れ込んだ頭に向けて『炎陣』を最大火力で叩き込んでほしい。炎の力が強くなるように俺も風を送る。」

「……うん。」

「それでも倒しきれなければ、首、腿の付け根、脇辺りの主要な血管が通っている箇所を俺の『鎌鼬』で切り裂いて倒す。紅狐はそれ以外の背中や腹、どこでも良いから広い範囲を重度の火傷にしてくれ。人体は”深く”、”広く”火傷をすると死にやすくなる。」

「……わかった。」


 了解、という返事は得られたが紅狐の表情は暗い。……緊張しているのか? それとも……ああ。


「紅狐。」

「……なに?」

「トイレならまだ行ってきても間に合うぞ。我慢するなよ?」

「……違うっ!!」


 怒られてしまった。では何故こんな暗い顔をしているんだ? と頭に疑問符を浮かべていると、紅狐が口を開いた。


「わんちゃん。」

「ん?どうした?」

「わんちゃんだけ、危ない。」


 ……ああ。俺の大馬鹿め。この子の優しさを考えたら真っ先に思いつくべきだろう。この子は緊張していたわけでも、トイレに行きたかったわけでもない。()()()()()()()()()()()()()


「紅狐。」

「……ん?」

「大丈夫だよ、俺こう見えて意外と動き早いし。何より死ぬ気はサラサラない。」

「……うん。」

「それに、ここまでダイダラボッチを運んできたら、紅狐がキッチリとウェルダンで俺に提供してくれるんだろ?」

「うん。」

「なら何も心配いらないな。俺はお前のこと、信じてるからな。お前はどうだ?」

「……信じる。」

「ならちゃっちゃとやっちまおうぜ。生き残るために。」

「うん……! 生き残るために……!!」

ようやく1話目で描写していた場面を書けました。


次回でダイダラボッチ戦、終了です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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