2-21 ダイダラボッチ戦2
ーー駆ける。
細い路地を、高いビルの隙間を縫うように駆ける。後ろからは規則的な「ドシン……ドシン……」という重音が響く。
ーー駆ける。
目的地に向けて、ひたすらに駆ける。
「グオォオォォォォォ!!!!!!」
後ろからはダイダラボッチの足音と咆哮。しかし奴は思うように進めていない。俺の狙い通りだ。イメージしてほしい。足の踏み場もない自分の部屋を。足を怪我しないように、物を壊さないように歩く様を。
……思った通りにはなかなか歩けないだろう? 奴の状況はそれと同じだ。攻撃するのには気を遣わなくても、いざ歩くとなると障害物は出来るだけ避けてしまう。人間なら誰しもそうだ。
「はっ。得意のデカイ図体もここじゃ無用の長物だな!」
敢えて、触れられそうで触れられない位置に陣取り、ダイダラボッチを誘導する。目的のオフィス街のど真ん中へと。
(あと少し……!!)
ビルに囲まれた交差点。そこまでダイダラボッチを誘導し、止まる。目的地に着いた。
ーー観念したのか?
と言わんばかりに全力でこちらに走ってくるダイダラボッチ。こちらの意図に気付かず着いてきてくれてありがとさん。
「グオォオォォォォォ!!!!!!」
「あー、疲れた。細工は流々……後は仕上を御覧じろってな!!」
ダイダラボッチの足元をすり抜け、すれ違いざまに両足のアキレス腱を鎌鼬で深く抉りとる。ダイダラボッチの体の造りが、人体と同じであるならば……!
フッと、ダイダラボッチが前に向けて倒れ込む。人間で言うところの『アキレス腱』を切られたのだ。立つことは勿論、歩くこともままならない。
「構造が人体と同じで良かったよ。おかげで楽にいけそうだ。」
ーーパチン。
ーー指を鳴らした直後。
「『炎陣』っ!!」
ダイダラボッチの顔面付近は大きな炎に包まれた。
ーー数十分前ーー
「つまりだな、作戦はこうだ。まずは俺が囮になってダイダラボッチをこの道に誘導する。そんで、なんとかひっくり返すから、紅狐は倒れ込んだ頭に向けて『炎陣』を最大火力で叩き込んでほしい。炎の力が強くなるように俺も風を送る。」
「……うん。」
「それでも倒しきれなければ、首、腿の付け根、脇辺りの主要な血管が通っている箇所を俺の『鎌鼬』で切り裂いて倒す。紅狐はそれ以外の背中や腹、どこでも良いから広い範囲を重度の火傷にしてくれ。人体は”深く”、”広く”火傷をすると死にやすくなる。」
「……わかった。」
了解、という返事は得られたが紅狐の表情は暗い。……緊張しているのか? それとも……ああ。
「紅狐。」
「……なに?」
「トイレならまだ行ってきても間に合うぞ。我慢するなよ?」
「……違うっ!!」
怒られてしまった。では何故こんな暗い顔をしているんだ? と頭に疑問符を浮かべていると、紅狐が口を開いた。
「わんちゃん。」
「ん?どうした?」
「わんちゃんだけ、危ない。」
……ああ。俺の大馬鹿め。この子の優しさを考えたら真っ先に思いつくべきだろう。この子は緊張していたわけでも、トイレに行きたかったわけでもない。俺の心配をしてくれてたんだ。
「紅狐。」
「……ん?」
「大丈夫だよ、俺こう見えて意外と動き早いし。何より死ぬ気はサラサラない。」
「……うん。」
「それに、ここまでダイダラボッチを運んできたら、紅狐がキッチリとウェルダンで俺に提供してくれるんだろ?」
「うん。」
「なら何も心配いらないな。俺はお前のこと、信じてるからな。お前はどうだ?」
「……信じる。」
「ならちゃっちゃとやっちまおうぜ。生き残るために。」
「うん……! 生き残るために……!!」
ようやく1話目で描写していた場面を書けました。
次回でダイダラボッチ戦、終了です。
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