1-3 神様
ーー思わず背筋がゾクリとする。
あの神様は本物の神様で、思考を読むこともでき。……本当にここから“消す“のも可能だと理解してしまった。
「あ、それはちょっと違うかなー。」
ケラケラ笑いながら神様が告げる。
「ククッ……! 気軽に消すって言ったけど、この場から居なくなるんじゃなくて……文字通り“存在自体を消す“んだよね。この地球上から。……クハッ! いいねぇ、ゴミカス共! しっかり怯えて敬ってるねぇ! クククっ……!」
楽しそうに神様は腹を抱えて、全員を見渡す。
今のところ誰も声は上げていないが、多分頭の中で考えてることは一緒だろう。
ーー絶対に逆らったら、マズイ。
「おー、いい感じにゴミカスらしい顔になってるねー。君達同士では見えないようにしてるけど、ボクからはちゃーんと見えてるよ。クククっ……! いやぁ愉快愉快! ……ああ、安心して。ここには地球上から消しても問題ない人間しかいないし、何かあってもボク凄い神様だから、君達が生きていた時の周りの人には迷惑かからないように、ちゃんと帳尻合わせはするから。」
例えば、と神様は続けた。
一応仕事をしていたやつは、いきなり消えたら会社や社会への影響もあるから、辞表を出したことにする。無職のやつは、失踪したどころか周りの記憶すら残さない。家族の中では死んだということにする。犯罪に手を染めてた奴は、同業者や対抗してる相手・組織に殺してもらったことにする。等々。
「生きる価値無しの君達はどうでもいいけど、周りの善良な人類には迷惑かけるのはダメだからね、うん。ふふふっ。」
綺麗な顔が邪悪と思えるほど、神様はニチャアと笑う。今、僕に生身の体があったのなら震えが止まらず、へたり込んでいただろう。
それほどまでに神様は、確固たる意志の表示と、本当にそうするし、そうなるであろうと僕に確信させる。
「さてさてー! みんなちゃんと読んだみたいだし、補足説明をしていくけど、何か質問はあるかなー?」
……誰も、何も言わず身じろぎ一つ起こさない。いや、正しくは起こせないのだろう。思考が纏まらない。
「よし、じゃあ続けるよー。今から君達には自分自身の名前を付けてもらうよー。名前は大事だからねー、ボクが君達を把握するのにも、進行をスムーズにするのにも。記憶は無い奴もいるだろうけど、知識は残してあるからゴミカスの君達にもできるよね??」
さっきまでの邪悪さを無くし、ニコッと笑いながら神様は言った。名前を付ける、ねぇ……?
付けたとしてもどうやって把握をするのだろうか。まさか紙に書いて提出などの方法は取るはずもないだろうし……。
「ああ、今から君達の目の前にスクリーンとキーボードが出てくるから、それに入力をして完了ボタンに触れればいいよ。集まったらボクは手元で管理できるし。」
神様が人差し指をスイッと全体に向けて振るうと、目の前にスクリーンとキーボードが現れた。異世界転生モノの漫画等でよく見る、ステータスボードのようなスクリーン。その中に名前の欄があり、手元のボードで入力をするようだ。
「さあ、さっさと入力を始めてね。あんまり神様を待たせるようだと、こっちで勝手に名付けちゃうからね。」