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無銘〜怪異に堕ちた僕達〜  作者: ミリな所持金(ry
第二章 一回戦
19/138

2-9 楓の種族

(わたくし)の種族はーー″付喪神″。物に宿る種族ですわ。」

「ほほぅ……。それはそれは。通りで物への移動もできるわけだ。」

「ええ、私の本体、つまり自我自体は霊魂のような存在ですの。物を媒介に顕現して、仮初の肉体を得ているというのが分かりやすいかしら?」

「ふぅむ。なんとなくはわかった。つまりその気になればどんな無機物にでも憑ける訳だ。」

「……実はそうでもないんですの。」

「そうなのか?」

「ええ、神様の制限で()()()()傘にしか取り付けないようになっていますの。」

「……そうか。分かったよ、付喪神の『楓』。ありがとな。続きといこうか。」

「……ええ。天狗の『狗』さん。存分に殺し合いましょう?」


 ーー付喪神。物が百年存在すると魂が宿り動き出す妖怪。どんな物でも魂が宿ることから″九十九神″とも表記される。

 ……こいつは厄介だ。さっきの会話で何気なく楓が言っていた。『今はまだ』傘にしか、と。つまりこの先能力の使用許可が出たら、どんな物に化けるか分かったもんじゃない。今、傘にしか憑けないうちに倒さないと、後々確実に()()()()()


「天狗が『狗』、推して参る!!」

「付喪神が『楓』、舞ってみせましょう!!」


 そこからの戦いは膠着状態が続いた。楓が瞬間移動出来ると知った狗は、楓が放った空中に留まる小傘を撃ち落とし、番傘の攻撃を強い風で押し返す。楓は常に周りに意識を割き、狗が鎌鼬(かまいたち)のような大技を繰り出せないよう絶えず攻撃を続ける。

 両者共に決め手に欠けている状態であった。


「ちっ! ぶんぶんぶんぶんハエみたいに小傘飛ばしやがって! 鬱陶しいんだよ!」

「あらあら、優雅さが足りませんわねぇ。私のように軽やかに動くこともできないのかしら?」

「軽やかだぁ? 番傘振るたび地面からズシンズシン音がなってんぞ超重量級が!」

「カチーン! 乙女になんて言い草するの……よっ!!」

「ふんっ!! 乙女ならこんな重い傘振り回さないで、フライパンでも振って花嫁修行でもしてろってん……だっ!!」

「きゃん! それは男女差別発言ですわよ! 今の時代女が家事をやるだなんて古い考えーー」

「おらぁ! 女房は夫の三歩後ろを歩くのが全男子の夢だよ!」

「あんっ! イケメン相手ならやぶさかではないですけど……ねっ!!」


 いまだに均衡は崩れない。隙がないのだ。共に攻防に優れている。何かしらキッカケがないと押し切れない。

 

 ーーしかし、その瞬間は突然訪れた。


 ガラン、と音を立てて崩れたコンクリートのカケラが、狗の足元に転がる。狗は楓の攻撃に釘付けになっており、そのことに気付かず……。


「……のわっ!」


 思い切り踏みつけ、狗は体勢を崩す。


(マズイっ……!!)

(勝機ですわっ!!)


 狗の体勢が崩れたところに、番傘の石突を向け突きを繰り出す楓。狙いは喉。番傘の尖った石突部分であれば大ダメージと更なる隙を作れるだろう。


(もらいましーー)

「『(くう)』っ!!!!!!」

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