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無銘〜怪異に堕ちた僕達〜  作者: ミリな所持金(ry
第二章 一回戦
12/138

2-2 戦闘

 北谷公園自体はそう大きな公園ではない。目につくものと言えば、公園の目玉でもあるカフェだけだろう。そのカフェの屋上。そこで2人は戦っていた。片方は番傘を差している着物姿の女性、もう片方は土佐犬のような頭部を持っているが、体は醜く太った中年の親父のように様相であった。

 戦っている様子から、今手出しをするべきではないと感じた。これは空中から様子見をするのが得策だろう。まずは相手の動きを確認し、少しでも情報を集める。


「オレ……オマエ……コロス……。」

「あらあら、品のない犬畜生ね。貴方如きにやられてあげるほど、私は安い女じゃないのよ。」


 そう言い放つ双方は、今のところこちらに気付いている様子もなく戦闘を続ける。

 まずは太った犬ヅラのおっさんだが、仮称は犬面人としよう。こちらは犬らしく自身の牙を使ったり、爪を使い着物の女性へと攻撃を繰り出す。外れるたびにカフェの木材には爪痕が残り、威力がとてつもないものだとわかる。

 逆に着物姿の女性だが、仮称として傘女とする。傘女は相手の猛攻をヒラリヒラリと回避しつつ、番傘を差す左手と逆の手に持つ、右手の小傘で的確に攻撃を加えていく。傘程度でダメージを負わせられているのか?と疑問に思っていたが……。


HP72/120→HP68/120


という風に、小傘での攻撃でもダメージはしっかりと通っており、小傘も木や竹でできている脆いものでないことが窺い知れる。


「グアァァァァ!!」

「もう、しつこい殿方は嫌われますわよ?」


 果敢に攻める犬面人だが、カウンターをしっかりとくらい徐々に追い詰められる。空中で見ている限りでも、2人の体捌きに大きな差が見て取れる。犬面人は攻撃の方法のせいか、単調的・直線的な動きしかなく、このせいで避けられ続けているのだろう。傘女はいまだに体力は80/80で無傷である。


「オマエ! ナマイキ! コロス!」

「はいはい、そういう台詞は攻撃を当ててから言ってくださいまし。」


 怒りのためか更に大振りな攻撃をする犬面人。こうなっては傘女が勝利するのも時間の問題だろう。爪も牙も当たれば脅威ではあるが、素人目でも避けられるほど速度はなく、ましてやあれだけ足捌きの丁寧な傘女だ。大技が決まればすぐにでも決着になるだろう。


「グッ……! グゥ……!」

「貴方のお相手にはもう飽きましたわ。そろそろ終わりと致しましょう。」


 そう口走り、傘女は手に持っていた小傘を放り投げ、番傘を畳む。これを好機と勘違いしたのか、犬面人は全速力で傘女へと突進をし、開いた両腕から大きく爪を振り下ろす。


「グアァァァァ!!」

「……所詮はやはり、犬畜生ですのね。美しくないですわ。」


 最後の一撃は、あまりにもあっさり終わった。犬面人の攻撃は、傘女の肩に掠ったものの、体の正中線を無防備に曝け出した犬面人に、傘女の番傘の先端が深く、的確に食い込む。


「……カハッ!」

「はいはい、構ってもらえて良かったわね。貴方の体力はこれでゼロ。可哀想だからお名前だけでも聞いてあげますわ。」


 番傘を犬面人から引き抜き、一歩、二歩と下がった傘女は声をかける。犬面人の体力は0/120となっており、彼の敗北は今決まった。


「さあ、もうあまり時間は無いみたいよ。貴方の名前を言いなさいな。」


 冷ややかな目をしながら、番傘をバッと振り払い犬面人に問う。


「オ……オレノ……ナマエ……。」

「……ええ。」

犬神(イヌガミ)ノ……“クロ“……ダ……。」


 そう告げると。犬面人こと犬神の“クロ“は全身の力は無くなり、その場からピクリとも動かなくなり。足元から粒子が舞い、完全に姿を消した。

お読みいただきありがとうございます。

傘女の投擲している小傘ですが、飾り小傘やミニ傘と言われるものです。実物は直径30cm程ですが、それよりも小さいものと思ってもらえればイメージしやすいかと思います。

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