我々はこのビジネスから撤退したい
本日1回目の更新です。
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──我々はこのビジネスから撤退したい
襲撃者たちはあることを言っていた。
自分たちのボスの名前と居場所。
彼らは単なる殺し屋ではなく、傭兵集団だった。西南大陸各地で“国民連合”であったり、“社会主義連合国”であったりの金で働く傭兵集団であった。
だから、装備も整っていたし、汎用ヘリ3機という装備を有していた。
アロイスはマーヴェリックとマリーにその傭兵集団の拠点制圧を命じる。
マーヴェリックとマリーはふたつの返事でそれを引き受けた。
敵の拠点はグライフ・カルテルの縄張りの中。長居は厳禁だ。
よって、襲撃には敵と同様にヘリを使うことになった、これもまたネイサン・ノースから購入した6名乗りの輸送ヘリ。それで敵地を強襲し、一気に傭兵集団のボスを始末する。それが計画だった。
事前に航空偵察で拠点の地図を撮影したマーヴェリックたちは“国民連合”製の輸送ヘリに乗り込む。ドアガンナーは強力な魔導式ガトリング銃を装備している。
「死ぬなよ、マーヴェリック。俺はまだ君と人生を満喫できていない」
「そういうのは奥さんとやりな。あたしはあたしの人生を満喫する。あんたは家族を作って奥さんをそうするといいさ」
「分かったよ。そうする。けど、死なないでくれ。君には大金を払ってるんだ」
「そりゃまた。ここでパンツ脱いだらもっと金をくれるかい?」
「ストリッパーのように君の裸に金を払ったわけじゃない。君の専門性に金を払ったんだ。ストリッパーの代わりなんていくらでもいるが君の代わりはそうそうは見つからない。分かっているよね?」
「分かってるよ」
そして、輸送ヘリが離陸していく。
輸送ヘリは低空飛行で傭兵たちの拠点に迫り、傭兵たちの拠点となっている建物の屋上に向けて降下する。飛行場もあったがそっちには降下しない。事前の航空偵察で高射機関砲があると判明していたからだ。
高射機関砲の死角となる位置でヘリはホバリングし、ロープでマーヴェリックたちが降下していく。マーヴェリックは一番乗りで、異常に気づいて出てきた傭兵たちを焼き払った。一瞬で6名の傭兵が生焼けになる。
「さあ、突入だ。いくぞ、マリー。派手にぶっ飛ぼうじゃないか」
「あなたって本当にこういう時は生き生きとしている」
「惚れた?」
「前からずっと同じよ」
マーヴェリックはにやりと笑うと開け放たれた扉から手榴弾を放り込んだ。爆発と同時に悲鳴が聞こえる。どんぴしゃり。
警報が鳴り始め、傭兵たちが本格的に動き始める。
既に敵は施設内に侵入。施設内に侵入し、制圧を始めている。
警報がそう警告する。
マーヴェリックたちは警報にも構わず、素早く、的確な動きで施設内を制圧していく。手榴弾を使い、銃弾を使い、炎を使い、死者を使う。死者はあたまを撃ち抜かれていようと立ち上がり、味方のど真ん中で手榴弾をピンを抜き自爆する。
そこにマーヴェリックの操る炎が加われば敵はなすすべもない。
鍛えなおされた元“連邦”特殊作戦部隊と空挺部隊の隊員たちは、確実に拠点内施設を制圧していく。特に制圧が急がれたのは武器弾薬庫だった。
航空偵察でそれらしきものの位置を把握していた『ツェット』の隊員たちは武器弾薬庫近くに降下し、敵がそれを押さえる前に制圧し、爆破処分した。数百発の手榴弾と数十発の迫撃砲弾が大爆発を起こし、武器弾薬庫の天井は空高く舞い上がった。
マーヴェリックたち『ツェット』は武器と弾薬の大多数を失い、手持ちの武器でどうにかしなければ行けなくなった傭兵たちを情け容赦なく殺していった。
それはカールが殺せないことへの鬱憤晴らしでもあったし、傷ついた仲間たちの分の復讐でもあった。マーヴェリックはどちらかと言えば前者の理由で行動していた。
武器弾薬庫陥落。兵舎陥落。飛行場陥落。
傭兵たちは次々に陣地を失っていく。辛うじて備え付けた機関銃陣地もマーヴェリックの炎とマリーが放ったグレネード弾で制圧されてしまった。
「事前の航空偵察じゃ、傭兵は90名程度って計算だったよな?」
「そう。兵舎の数からして90名程度。そのうち18名は私たちの拠点を制圧して死んだ」
「そしてここであたしらが60名ほどもう殺した。残りは十数名だな」
そう、兵舎の数から割り出された傭兵の数は90名前後。そのうち、18名は先の襲撃の際に死亡している。外の高射機関砲を操作する人員もおらず、傭兵たちは立て籠りを始めているかのように思えていた。
だが、施設の外から響いて来た魔導式重機関銃の銃声が傭兵たちの反撃を知らせた。
「テクニカルだ! 伏せろ!」
4輪駆動車に魔導式重機関銃をマウントした車両が外から施設内にいるマーヴェリックたちを狙って大口径弾を乱射する。テクニカルは2両。動き回らず、一定の位置から銃弾を叩き込み続けている。
それに応じたのは輸送ヘリのドアガンナーだった。
魔導式ガトリング銃が傭兵のテクニカルを射手と車ごと蜂の巣にする。2両のうち1両は一瞬で蜂の巣になり、もう1両は反撃を試みたが、その前に蜂の巣にされた。
テクニカルが炎上し、夕焼けのように外を照らす。
「次は?」
「通信指揮所」
マーヴェリックの問いにマリーが短く答え、マーヴェリックは魔導式自動小銃に新しいカートリッジを装填する。
「お話しなくちゃいけないな」
「そうね」
マーヴェリックたちは通信指揮所を目指して進む。
通信指揮所は一番何が起きているのか分かる場所のはずなのに現状を理解していなかった。指揮官は妖精通信に向けて何度も呼びかけ、通信兵たちが武器を持ってバリケードを作っているが、それだけだ。
「指揮官は殺さない」
「了解」
マリーが警告し、マーヴェリックは頷く。
スタングレネードが投擲され、陣地にいた兵士たちが視界を潰され、鼓膜をやられる。その隙に胸に二発、頭に一発のお決まりの射撃が行われ、指揮通信所の扉が開かれる。指揮官は顔面蒼白で、もう終わりだという顔をしていた。
「あんたら、誰に手を出したのか分かっているんだよな?」
「……アロイス・フォン・ネテスハイム」
「そうだ。ヴォルフ・カルテルの後継者に喧嘩を売った。覚悟はできてるな」
そう言って、マーヴェリックは通信兵をひとりずつ射殺していく。
「カールヘの直通電話は?」
「ある。だが、俺にどうしろっていうんだ?」
「正直に話せ。そうすれば助けてやる」
「本当だな」
「本当だとも」
マーヴェリックは魔導式拳銃を抜き、指揮官の頭に押し付ける。
「さあ、電話しろ。正直に話せ」
「分かった。分かった。今、電話する」
「余計なところにかけるな。スピーカーにしろ。少しでも不審な動きを見せたらドカン、だ。分かってるな?」
「ああ」
傭兵たちの指揮官はカールに電話をかける。
「私だ」
『アロイスは消せたのか?』
「残念だが、我々には荷が重かった。この取引はなかったことにしてほしい」
『ふざけるな。お前には報酬を前渡ししてるんだぞ。今さら』
そこで銃声が響く。指揮官が射殺されたのだ。
確かに彼は助けられた。このドラッグ戦争という地獄から。
「ハロー。カール。あんたの雇った傭兵は全滅したよ。次はあんただ。首を洗って待っていろ。今からあんたを撃ち殺すのが楽しみだ」
『貴様──』
そこで電話は切られた。
「これで奴は弁護士に電話すると思う?」
「分からない。保険はカールの最期の命綱。大切にするはず」
「そっか。まあいい。帰ろう」
マーヴェリックは指揮通信所に火を放って傭兵の基地を去った。
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