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反乱の勃発

……………………


 ──反乱の勃発



 ワイス・カルテルと『オセロメー』が反乱を起こしたとアロイスに連絡が入ったのは、彼らが反乱を起こしてから1時間も経たないうちだった。


 それはヴォルフ・カルテルの監視ネットワークが優れていることと、ワイス・カルテルと『オセロメー』の反乱がぐだぐだであったことの両方を意味する。


「クソッタレ。この忙しいときに余計なことしてくれやがって」


「どうする?」


「警察と軍に鎮圧させる。シュヴァルツ・カルテルと違って、向こうには外国人傭兵も、大規模な弾薬庫もない。鎮圧はスムーズに進むだろう。だが、用心はするべきだ。これまでワイス・カルテルと『オセロメー』についてはしっかりと監視してきたが、それを振り切っての反乱だ。何か隠しているものがあるかもしれない」


「だね。監視してたのに反乱が起きるまで気づかなかったってのが、監視が完璧でないことの証拠だ」


「ああ。次から次に問題ばかり起きやがる。気がどうにかなりそうだ」


 アロイスは頭を抱えて呻いた。


「文句を言ってもしょうがない。やるべきことをやらないと。ここは斬首作戦ってのはどうだい?」


「斬首作戦? 新しい処刑方法か?」


「いいや。相手の司令中枢をピンポイントで叩いて、相手の行動をマヒさせる作戦だ。要はトップの暗殺だよ。ワイス・カルテルと『オセロメー』のトップを暗殺して、連中の動きを鈍らせる。その隙に警察と軍の部隊に叩かせればいい」


「なるほど。だが、そう長続きはしないと思うよ。ドラッグカルテルのボスってのは誰もがなりたがる仕事なんだ。トップが死ねば次のトップがすぐに決まる」


「それでも一時的な混乱は生まれるだろう。トップを巡って争うかもしれない」


「それはあるな。よし、やってくれ、マーヴェリック」


「了解」


 マーヴェリックたちはすぐさま出撃の準備に入る。


 ワイス・カルテルと『オセロメー』のトップについては今もヴォルフ・カルテルは捕捉している。彼らの中にいるネズミが情報を送って来てくれていた。


 それを基にマーヴェリックたちは襲撃を仕掛ける。


 まずはワイス・カルテルのボスから。


 ワイス・カルテルのボスは間抜けなことに、自分の屋敷から動いていなかった。『オセロメー』のボスがさっさと移動したと考えると、危機管理能力は『オセロメー』の方が上のようである。


 ヘリボーンでマーヴェリックたちがワイス・カルテルのボスの屋敷に迫る。屋敷の周囲のテクニカルに対しては、COIN機が爆撃し、ガンシップがガトリングガンとロケットポッドで破壊していく。


 相手が対空ミサイルを保有していないことも分かっていた。なので、安心してヘリボーンが行える。シュヴァルツ・カルテルという面倒な敵を相手にした後だとやりやすい。せいぜい、地上から軌道の逸れる対戦車ロケット弾が打ち上げられるぐらいだ。


 輸送ヘリは地上に着陸し、マーヴェリックたちが迅速に展開する。


「一気に行くぞ。ちんたらしてると増援が来るからな」


 マーヴェリックたちは扉を蹴り破り、室内に突入していく。室内ではワイス・カルテルの兵士たちが抵抗しようとバリケードを作っている最中だった。


「燃えちまえ」


 マーヴェリックはそれらワイス・カルテルの兵士たちを一気に焼き殺す。


 室内は一気に炎に包まれ、ここでもまた火災報知器が鳴り始め、スプリンクラーが作動する。マーヴェリックたちはずぶぬれだ。


「畜生。腹立ってきた」


「いいから、行って」


 マーヴェリックたちはターゲットを求めて屋敷の中を捜索する。


 散発的なワイス・カルテルの抵抗を排除しながら屋敷の中をくまなく捜索する。


「こいつら、元『ジョーカー』が混じってるんだよな?」


「そうらしいわね」


「だが、全然手ごたえがないな。ひょろひょろしてやがる」


「楽でいいじゃない」


「ちょっと退屈だ。これじゃほとんど射的と変わらないぞ」


「文句言わない」


 マーヴェリックにぴしゃりとそういうと、マリーは死体に手榴弾のピンを抜かせ、敵の陣地の中で爆発を引き起こす。


 さらに彼女たちは捜索を続け、焼き、撃ち、殺していく。


「パニックルームを発見」


「間違いなくここね」


 マーヴェリックたちは捜索の末にパニックルームの入り口を発見すると爆薬を仕掛ける。ブリーチングチャージがセットされ、起爆された。


「よう。こんなところでちびってるのな」


「お、お前たちはヴォルフ・カルテルかっ!」


「それ以外に誰があんたにこうやって挨拶するのさ? んじゃな」


 ライフル弾がワイス・カルテルのボスの胸を二発、頭を一発貫いて、ワイス・カルテルのボスは死亡した。


「結構。作戦成功だ」


「なら、帰りましょう」


「そだな」


 最後に死体の首を文字通り斬首するとマーヴェリックたちは撤収した。


 ワイス・カルテルは突然のボスの死に混乱。後継者の地位を巡って内輪もめを始めた。ワイス・カルテルは今や東部を支配するカルテルのひとつになったのだ。そのボスの地位は非常に重要で、権力がある。


 金と暴力と権力に惹かれた連中が自分たちの派閥の兵士を率いて、別の派閥に攻撃を仕掛け、その派閥も攻撃を受ける。まさに野良犬同士の食い合いが始まった。


 これで困るのはワイス・カルテルだけではなく、『オセロメー』もだ。『オセロメー』はどの派閥に加担するかで意見が割れ、独自に支援を始める兵士たちが出てきた。


 こうなると混乱は一層深まるばかりで、ヴォルフ・カルテルを相手に戦うどころではなくなる。ヴォルフ・カルテルはその様子を眺めていた。


 そして、警察と軍が鎮圧に乗り出す。


 分裂したワイス・カルテルを壊滅させるのは簡単だった。彼らは各個撃破され、瞬く間に消滅していった。


 追い詰められたワイス・カルテルは『オセロメー』に助けを求めるも、『オセロメー』も支援する派閥を巡って内乱状態。助けはこなかった。


 だが、流石に『オセロメー』もワイス・カルテルの滅亡を見ながら、内戦を続けているほど馬鹿ではなかった。『オセロメー』は再び結集し、警察と軍に対抗する。ワイス・カルテルの残党を併合し、武器弾薬の保管場所を移し、抵抗を続けた。


 だが、当初の東部一帯の支配という体制は儚く崩壊し、ヴォルフ・カルテルは再び東部の支配権の半分を取り戻した。


 ワイス・カルテルを併合した『オセロメー』は残り半分を占拠し続け、断固として死守する構えを見せている。


「『オセロメー』の首は斬り落とせなかったか」


「流石にああも逃げ隠れされたらな。こっちのネズミも場所を掴んでないんだろう?」


「掴んでないね。ただ、ワイス・カルテルにいたネズミが『オセロメー』に入り込んでいる。連中はそのうち使えるかもしれない」


 マーヴェリックとアロイスは司令部でそう言葉を交わす。


「それから麻薬取締局が『オセロメー』を重大な脅威に認定した」


「なら、残りは連中に任せる?」


「どうだかね。本当に麻薬取締局に仕事ができるものか」


 アロイスはそう言って肩をすくめた。


「そういう割には麻薬取締局を恐れているじゃないか」


「まあ、それはそうだな。連中は余計なことには理想的な結果を出しやがるから」


 ワイス・カルテルの崩壊と『オセロメー』の東部半分の支配で麻薬取締局が本格的に動き出すも、未だに未来は見えずにいた。


……………………

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