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卑劣な手段

……………………


 ──卑劣な手段



 作戦は実行に移された。


 六輪の軽装甲車3台を魔導式重機関銃をマウントした2台の四輪駆動車が先導し、5台の車両は一斉にオスカー・オーレンドルフの家族が暮らしている屋敷に突っ込んだ。


 最初から隠密は期待していないし、砲兵や航空機の支援はない。少なくともテクニカルを無力化するまではヘリは投入できない。


 軽装甲車から24名の兵士が、降車して地面に伏せ、四輪駆動車はマウントした魔導式重機関銃を乱射して敵の頭を押さえる。それでも敵は当然のことながら反撃を試みる。


 軽装甲車に向けて対戦車ロケットが放たれるが、軽装甲車はこれまでの戦闘の経験を活かして車体に金網を張っている。これがあると対戦車ロケット弾の信管が不発に終わる可能性が高くなる。カルテルが使う捕虜や死体の代わりだ。


 魔導式重機関銃が火を噴きながら、相手のテクニカルを叩く。軽装甲車には魔導式自動擲弾銃も装備されており、口径40ミリのグレネード弾が直撃すれば、テクニカルはあっさりと爆発四散する。


「敵テクニカル撃破!」


「タイムリミットまで3分だ! 全て叩け!」


 敵のテクニカルは第800海兵コマンドの兵士たちが使用する対戦車ロケット弾でも叩かれ、大爆発を引き起こす。1台、1台と脱落していき、ついに計5台の敵テクニカルは壊滅した。丁度、15分が過ぎたときだった。


「ハンター・ゼロ・ワンよりヒポグリフ! 侵入して構わない! 敵テクニカルは全て撃破! 繰り返す、敵テクニカルは全て撃破!」


『ヒポグリフ・ゼロ・ワン、了解』


 地上部隊からのゴーサインを受けてヘリボーン部隊が侵入する。


 今回は1機の汎用ヘリは完全なガンシップとして運用し、輸送ヘリを護衛することになっていた。敵のテクニカルが増援として現れた場合に備えてである。


 ガンシップの援護の下、輸送ヘリが屋敷の前庭に着陸しようとする。


 そこでアラームが鳴り響いた。


『対空ミサイルだ! ロックされた!』


『振り切れ!』


 ヘリの中が騒然となり、輸送ヘリがチャフとフレアを振りまいて回避行動を取る。だが、既に着陸のためのアプローチに入っていたヘリは攻撃を回避しきれず、後部ローターに対空ミサイルを受け、回転しながら落下していく。


『ヒポグリフ・ゼロ・ツー、ダウン! ヒポグリフ・ゼロ・ツー、ダウン!』


『ツヴァイヘンダーより全部隊。落ち着け。作戦を継続しろ。車両部隊は墜落したヒポグリフ・ゼロ・ツーの救援に向かえ。以上』


 後方からヴィルヘルムが落ち着いた指示を出す。


『畜生。大丈夫なのか?』


『信じるしかない』


 後続のヘリに乗っていたエッカルトとフェリクスが神に祈る。


『ヒポグリフ・ゼロ・ワン。対地支援を開始する』


 対空ミサイルの射手が2発目を撃ってくる前にガンシップが地上を掃射する。


 屋敷のテラスに向けてガトリングガンが火を噴き、対空ミサイルの射手がバラバラにされる。ガンシップは周囲を飛び回りながら、輸送ヘリの着陸を援護する。


 その間にフェリクスたちを乗せた輸送ヘリが強行着陸した。一気に兵士たちがヘリを降り、続いてフェリクスたちもヘリを降りる。


 車両部隊は墜落した機体の支援に向かっている。ここからは輸送ヘリの兵士たちだけで屋敷を制圧するしかない。


 相手は2個小隊。うち1個小隊は既に壊滅している。残る1個小隊は屋敷に立て籠もったと思われる。少なくともガンシップは敵の逃亡を確認していない。


 扉が爆薬で吹き飛ばされ、第800海兵コマンドの兵士たちが突入する。


 屋敷内では家具などをバリケードにしてキュステ・カルテル暫定軍の兵士たちが応戦の構えを見せていた。それに第800海兵コマンドの兵士たちが応える。


 魔導式機関銃が火を噴いて相手をなぎ倒し、魔導式自動小銃のアンダーバレルに装着されたグレネードランチャーがバリケードごと敵を吹き飛ばす。激しい銃撃戦が繰り広げられ、第800海兵コマンドの兵士にも負傷者が出る。


「負傷者の手当てを!」


「任せてくれ!」


 従軍経験のあるフェリクスは負傷者の応急手当てを行う。


「畜生。これは大丈夫なのか?」


「やるしかない」


 エッカルトも魔導式自動小銃を手にカルテルの兵士に銃撃を加えながら、フェリクスとともに進む。負傷者は応急手当された後、屋敷の外に運び出されて行く。


 キュステ・カルテル暫定軍の抗戦は粘り強く、第800海兵コマンドという精鋭部隊でも一方的な戦闘というわけにはいかなかった。だが、着実に屋敷は制圧されて行き、キュステ・カルテル暫定軍は敗北に向かう。


「クリア!」


「クリア! 畜生。手間をかけさせやがって」


 カルテルの負傷者に海兵隊員がトドメの銃弾を叩き込む。こういう戦場で敵の手当てをしてやるような余裕がないことはフェリクスも知っている。


 だから、これは警察活動の皮を被った軍事作戦なのだ。普通の警察活動であれば容疑者がどんなクソッタレであっても、救護するように手配する。だが、今回はそういうことは一切ないし、法を執行しているのは警察ではなく、軍だ。


 戦略諜報省はまたひとつ、俺の弱みを手に入れたなとフェリクスは思った。


 これがバレれば、フェリクスの首は簡単に飛ぶ。


 新聞の見出しはこうだ。『麻薬取締局捜査官、容疑者を虐殺』と。


 しかし、フェリクスは気にしない。自分の首ひとつでドラッグカルテルとその協力者が潰せるならば、喜んで潰す。戦略諜報省にカミカゼアタックを仕掛けてやるとも。


 抵抗は次第に弱まり、第800海兵コマンドの兵士たちはターゲットを、オスカー・オーレンドルフの家族を捜索する。


「パニックルームを確認」


「爆薬でこじ開けろ」


 寝室に設けられたパニックルームに爆薬が設置され、扉が吹き飛ばされる。


「う、撃たないで!」


 中には中年女性と子供がいた。


「ターゲットの家族を確認。繰り返す、ターゲットの家族を確認。これより連行する」


『ツヴァイヘンダー、了解。前庭にヘリを派遣する』


 ヴィルヘルムが迎えのヘリを派遣する。


「脱出だ! カルテルの増援が来る前に退散するぞ!」


「了解!」


 “連邦”海兵隊の兵士たちが、オスカー・オーレンドルフの家族を抱えて脱出を始める。ターゲットの家族からは悲鳴が上がるが、それを無視して、海兵隊員は屋敷の前庭に向けて走る。


 やがて、ヘリが着陸しようと降下してくるのが目に入った。


「全員揃っているな!」


「揃っています!」


「よし! 離脱だ!」


 海兵隊員は全員がヘリに乗り込み、ヘリは収容を確認すると離陸する。


『敵のテクニカルの増援だ』


『ヒポグリフ・ゼロ・ワン。叩き潰す』


 ガンシップが遅ればせながらやってきたキュステ・カルテル暫定軍のテクニカルにガトリングガンとロケットポッドで攻撃を行い、テクニカルを潰すと全てのヘリが脱出していった。残された墜落したヘリも重要部品を爆破し、乗員を救出した上で車両部隊が離脱させたのだった。


 こうして作戦は成功した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 話が進む毎に、フェリクスの狂犬っぷりが良く分かってくるのと、多分ここまでするような人じゃないとドラッグカルテルを追い詰められなかったんだろうなぁ……と思ったり
[一言] フェリクス、大丈夫かなあ
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