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クーデター騒ぎ

本日2回目の更新です。

……………………


 ──クーデター騒ぎ



 西南大陸のひとつの国でクーデターが起きた。


 クーデターの首魁は更迭された元陸軍総司令官。


 大統領宮殿は1個連隊の歩兵部隊に包囲され、さらに大統領を裏切った空軍の地上支援もあり、大統領宮殿は瞬く間に陥落した。


 大統領は自害し、大統領の死に伴って武装蜂起した陸軍部隊と左派活動家たちが衝突。軍隊と訓練を受けていない民間人が衝突すればどうなるのかという興味深いデータを残して、戦闘は軍部の勝利によって終わった。


 その後もアカ狩りは進み、左派の活動家が次々に拘束されて行く。学生運動家、教師、ジャーナリスト、聖職者、エトセトラ、エトセトラ。それらはスタジアムに集められ、纏めて銃殺刑となった。


 大統領に仕えていた閣僚たちは各地に逃げ出したが、西南大陸はどこも軍事政権が支配している。そして、軍事政権同士で協力し合っている。


 閣僚たちは拉致されて国に送り返され処刑されるか、あるいはその場で銃殺されたり、爆殺されたりした。それらの破壊活動の背後には戦略諜報省がいたことは言うまでもない。軍事政権同士を連携させ、暗殺を仕組んだのは戦略諜報省だ。


 “国民連合”の市民は西南大陸で何が起きているかなどまるで気にしない。ただ、共産主義者のテロリストに怯えているだけだ。彼らは旅客機をハイジャックし、乗客を撃ち殺し、第三国に亡命することを求め、その結果として特殊作戦部隊に射殺される。


 共産主義者はテロリストだ。サウス・エデ連邦共和国の空港でも銃乱射事件を起こし、“国民連合”の中央政府が管轄する政府庁舎を爆破し、旅客機を爆破する。


 自由世界はこの共産主義と戦わなければならない。


 “国民連合”政府はそう訴え続け、西南大陸の惨状から国民の視線を逸らさせていた。西南大陸では何の問題も起きていない。彼らは我々の友好国であると訴えて。


 だからと言って、共産主義陣営がまともとは言えない。


 総監視社会に自由の剥奪。自由と民主化を求めて立ち上がった衛星国の民衆は戦車で轢き殺され、自由は永遠に奪われた。少なくとも“社会主義連合国”が何かの間違いで崩壊するまでは永遠に失われた。


 右も左もクズばかり。そのクズの間でどうやって生き延びるかが重要視されている。


 アロイスはバルドゥルの招待でクーデターの起きた国に呼ばれた。


 金の無心か? と思いつつも、アロイスはクーデターが起きたばかりの国を訪れる。飛行場には兵士が大量に配置されており、左派活動家の国外逃亡を阻止していた。


「ようこそ、ミスター・ネテスハイム」


「やあ、バルビー将軍。上手くいったようですね」


「まだまだこれからだ。共産主義者たちはあちこちに潜んでいる。それらを全て狩りだすまでは安心できない」


 そうかい。あんたは報復のテロに怯えているのだろうとアロイスは思いつつ、バルドゥルと握手を交わした。


「ミスター・ネテスハイム。ミスター・ブラッドフォードははっきりと言わなかったが、我々がクーデターに使った金はそこまで綺麗な金というわけではないのだろう?」


「それはどういう意味です?」


「とぼけないでほしい。ミスター・ネテスハイム。あれは汚れた金だ。そうだろう?」


「そうだとしたらどうします?」


 畜生。ふざけんなよ。俺があんたたちのために用意してやった金は麻薬取締局の潜入捜査官の情報だけでは不足するほどの金なんだぞ。その金にケチをつけようってのか。共産主義者を虐殺するには綺麗な金でってか?


「我々もビジネスに参加できるだろうか?」


「なんですって?」


「君たちはドラッグカルテルだ。そうだろう。どこのカルテルなのかは分からないが、ノースエルフとサウスエルフの混血が国ひとつ動かすほどの金を動かせるとしたら、ドラッグ以外にあり得ない。違ったら素直に謝罪しよう」


 試してるのか? だが、こいつらとて表舞台に堂々と出てきて、ドラッグビジネスを批判できる立場にはないはずだ。そもそも麻薬取締局の潜入捜査官の情報は既に全て調べたが、この国に潜伏している潜入捜査官はいない。大使館のアタッシェがクーデター後の情報を集めているかもしれないが、麻薬取締局の出番はないはずだ。


「まあ、否定はしない、バルビー将軍。だが、あなた方がドラッグビジネスに参入を? 確かに西南大陸ではスノーホワイトはよく育ちますが」


「我々のためのドラッグビジネスであるし、友邦のためのドラッグビジネスでもある。共産主義者の脅威は拡大を続けている。戦うためには資金が必要だ。だが、西南大陸にはそこまでの財源はないし、“国民連合”は支援に踏み切りたがらない」


「武器を買う金としてドラッグビジネスを?」


「その通りだ。しかし、我々にはノウハウがない。これまでドラッグビジネスにかかわったことなど一度もない。私は陸軍総司令官だったのだから」


「そのようですな」


 で、俺らを頼った、と。


「そちらに商品を卸してそれを売却してもらうことは可能か? この国だけではない。各地の内戦の続く、自由の戦士たちの国々が取引を望んでいる。可能であるならば、すぐにでも始めたいと思う」


「いいですか。ドラッグカルテルには縄張りがあります。下手に境界を越えると、抗争の火種となります。私は抗争は望んでいません。他の国々が既に他のドラッグカルテルと組んでいないか確かめてからです」


「我々は関わっていない」


「そうでしょう。あなた方の国となら取引はすぐにでも始められます。ただし、用心なさってください。麻薬取締局がどう動くか分かりませんから」


 分かるけどな。


 潜入捜査官たちにはヴォルフ・カルテルは2度の粛清でその勢いを失ったと吹き込んである。今盤石で、カールのグライフ・カルテルからもっとも利益を得たのはシュヴァルツ・カルテルだと囁いてある。


 そんな弱体化したヴォルフ・カルテルが軍事政権と取引しているなど、エリーヒルにいる麻薬取締局本局の分析官たちは思いもよらないだろう。


「麻薬取締局には用心する。それよりも我が国のスノーホワイトは使い物になるのか? それが聞きたい」


「どのような栽培方法を行っているのか、後々詳しく聞かせていただきましょう。それから独自の精製施設を作られた方がいい。スノーホワイトそのものには大した値は付きません。それが精製され、ホワイトグラスやスノーパール、ホワイトフレークとなることで価値が上がるのですから」


 こっちの精製所はもう余裕はないし、いつまで“国民連合”の航空偵察を免れられるかは分かったものではない。せっかくなら、後は売るだけという状態にして、自分たちに商品を渡してもらい。アロイスはそう考えていた。


「精製方法などの技術支援は無償で行いましょう。少なくともこの国に限っては。他の国については交渉次第です。我々も取り扱える商品が増えるのは望ましい。ですが、作りすぎるのはいけませんよ。我々の市場には既にドラッグが溢れているのです」


「分かった。スノーホワイトから生成できるドラッグには種類がいろいろとあるそうだが、我々はどのドラッグを扱えばいいだろうか?」


「それはですね」


 アロイスが微笑む。


「ホワイトフレークしかないでしょう」


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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新連載連載中です! 「西海岸の犬ども ~テンプレ失敗から始まるマフィアとの生活~」 応援よろしくおねがいします!
― 新着の感想 ―
[良い点] 相手との交渉がしっかりと描写されていること。 [一言] こいつ、一番危険なの推めやがったww
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