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愛されなかった少女は転生し、異世界で愛されるために最強を目指す

リンリー侯爵家の家族会議

作者: 狐由樹

 

 リンリー侯爵家には、天使がいる。



 私、ラーシエ·リンリーは転生者である。前世では、我妻(あづま) 美花(みはな)

転生者、と言っても前世の記憶はほとんどない。覚えているのは、名前と『美花』が女子高生だったってことくらい。


 今世では、ラーシエ·リンリー。侯爵令嬢。現在11歳の超絶美少女で、貴族学園の魔法科3年生だ。


前世のことを思い出したのは、1年前のある日。突然、思い出した。


そのとき部屋のなかだったのはよかった。

落ち着く時間がとれたし。



ーーーそして今日人生の大きな分かれ道に立たされている……。



 


 




「ラシェにアキネ殿下との婚約の話が来ている」


突然、呼び出されたので来てみれば家族全員揃っていた。

学園にいるはずの姉リースと兄ルーデラまでいる。


私が来た途端、父が重々しく口を開いた。


それで言ったのがさっきの言葉。


「それで、お父様?どうしますの?」


私は沈黙を破るように問いかける。


「ラシェ、殿下は優しい方だ」


殿下の側近のお兄様が言った。


「でもルー、ラシェはまだ11歳だし……」


姉様は反対らしい。


「お父様……?」


お父様は、どうしてほしいんだろう、と思って聞くと


「リーのいうとおりだよ……。ラシェには早すぎる……よし、断るか! 」

「なにいっているの? 貴方、断るなら、せめてラシェに聞いてからよ」


お母様は、そういうと私を見た。


「私は、婚約についてはどちらでも」

「よし、断ってくるよ!」


すぐさま立ち上がって上着を着直すお父様に天使の笑みを浮かべて尋ねる。


「ですが……私でもこの家の役に立てるのならば……私は、まだ殿下のことも何にも知りませんから」


そう言った途端、お父様とお姉様の顔が複雑そうに歪んだ。


これは、本心だ。

私は、ありがちな転生者のように、王妃なんて……などとは、思わないから。


だって、家から王妃が出る事は、利益になる。


私は、ラーシエとして、約11年間育ててもらった恩がある。


前世では、親より先に死んでしまったので、親孝行などあったものじゃなかった。


「……ラシェ……」


そんな気持ちで言ったのだ。別に空気をお通夜状態にしたかったわけじゃない。


「ラシェ」

「はい、お兄様」


困ったようにお兄様が口を開いた。


「私は、アキネ殿下とラシェが婚約する事を望んでいる。

家の利益になる……ということより、ラシェの事を一番幸せにしてくれそうなのが、アキネ殿下だと思ったからだ」

「……お兄様……」


お姉様が目を伏せた。


「気持ちは、わかりましてよ……アキネ殿下に不満があるわけではございませんの。

ラシェは、まだ幼いでしょう?

もっと世界を見てきてでも、遅くないような気がしてしまうのです」


お姉様は、今17歳。

貴族学園の9年生。来年には、成人を迎えるのだ。


大抵の貴族は、成人と同時に結婚するため、お姉様のお相手は、もう決まっている。


次期公爵の方で、お姉様は、長年周囲からのお見合いなどを断り続け、貴族では、なかなかいない、恋愛婚だ。


そんなお姉様だからこそ、11歳で政略婚約をする、ということが、可哀想に思えてしまうのだろう。


「そうね、そうなのよ。でもね、うちの子は、可愛すぎるのよ……」


なぜだか、とても困った顔でお母様がテーブルに拳を叩きつけた。


「生半可な貴族に嫁ごうものなら、争いを生むわ! うちの子外でなんと呼ばれてるか知ってる、 女神と天使よ⁉︎ ルーに至っては顔の良さで人を殺すって意味で死神よ⁈ なに、死神って!」


畳み掛けるようにそう言ったあと、ぜぇはぁと息を吐くお母様に、お父様はウンウンと頷き、お姉様やお兄様は、首を傾げている。


あー、納得。

お父様の後ろにある鏡を見て、思わずため息が出た。


映っているのは、パープルの髪に黄色の目の女神と天使。そして、直視すると目が死ぬ死神。


なんなんだ、この家。


「……ラシェ、すまないがちょっと私は今から、王城に行ってくる……」


まじまじと私の顔を見ていたお父様がふと立ち上がった。


「貴方? ダメよ? ちょ、王城になにしに……貴方ーー‼︎」


外に向かうお父様に向かって、お母様がおもいきり声を張り上げる。


茶番。


ふとそんな言葉が浮かんだ。

ぶっちゃけ、王族からの婚約の話は、決定しているも同然なのだ。


つまり、今までのほぼ茶番である。


あぁ、と思いながら、遠くを見つめていると、みんなの声が聞こえた。


「「待ってください、父上/貴方」」


兄様とお母様の賛成派のお父様を止める声。


「行って、父様!」


と反対派の姉様が行かせようとする声。


もうなんだ、これ。


私の婚約なのに……私ほぼ関係なくなってないか?


あと、さっきから壁際で空気と化している侍女さんたち。


なんか……ごめん。




まぁ、なんやかんやあり。


家族会議……もといそんな茶番から、しばらくたった。


結論からいうと婚約は、することになった。

現在私は、12歳。

婚約から、3カ月たったのに一度も殿下とあってない。

最後まで反対したというお父様が会わせたくないんだろう。


なにはともあれ、婚約相手の殿下とは、仲良くしたいものである。



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