第五十一話 栄誉の式典
破壊の竜が復活し、暴れてから数日が経った。私とパッシアさんは破壊の竜との戦闘で負傷し、治癒魔法に特化した魔導士が入るカナリアの運営する病院に入院していた。
私とパッシアさんは同室で、ゆっくりとした入院生活を送っていた。カナリアに所属しているマティさんが治療してくれたいるからか、怪我の具合は良好であと少しで退院できるという話を聞いた。
そんな時、私たちの病室がコンコンとノックされた。
「はい、どーぞ。」
パッシアさんと顔を見合わせてから、パッシアさんが入室を許可すると、病室のドアがゆっくりと開いた。すると、そこに立っていたのは…。
「あ、アイリス様!?」
「ごきげんよう、怪我の具合はどうかしら?」
「怪我はだいぶ治りました…あと少しで退院できるとマティ…えっと、トパーズさんに言われました。」
私はドキドキしながらアイリス様の言葉に返事をした。パッシアさんはアイリス様の直属の部下であるからか、先ほどから頭を下げていた。
私もそれに倣って、ゆっくりと頭を下げた。すると、アイリス様が手を私の頭にかざした。
「二人とも、顔を上げてください。あなたたちの功績は国を挙げて賞賛されるべきです。そのための式典も準備中です。主役のあなたたち二人の治癒が促進されるよう、私からプレゼントがあります。」
私とパッシアさんは顔を見合わせて、”なんだろう?”と首を傾げた。
アイリス様の許しも得て、私とパッシアさんが顔を上げると目の前には、コロンと一つの飴玉があった。
「飴玉…がプレゼントですか?」
「本当のプレゼントは退院した後に用意するので、今はこれで我慢してください。これは私の魔法で作った飴玉です。食べても毒ではないですよ。食べれば治癒の手助けになるでしょう。」
私は初めてアイリス様に会った時のことを思い出した。あの時もアイリス様の飴玉を貰ったのだった。効果については心配していなかったので、私はひょいっと飴玉を口の中に放り込んだ。
パッシアさんは少し前になんの躊躇もなく口に飴玉を入れていた。コロコロと口の中で転がすと、ふわっとオレンジの味がした。
「美味しいです、ありがとうございます、アイリス様。」
「気に入っていただけて嬉しいです。それじゃあ私は行きますね。二人ともお大事に。」
そういうとアイリス様は病室のドアを開けて帰って行ってしまった。
「き、急でしたね…、アイリス様…。」
「まぁ、来るんじゃないかって思ってたけどね…。それに私たちの功績を讃えて式典もやるって言ってたよね?私そういう場苦手なんだけど…。」
「私だって初めてで緊張してますよ!」
そんなことを話していると、身体から破壊の竜との戦闘で受けた疲労感が抜けていくのを感じた。
「あれ…、なんか体が軽く…。」
「早速アイリス様の飴玉の効果が出てきたみたいね。私も怠さが無くなったよ。」
「すごいですね、アイリス様の魔法…。流石この国の女王様ですね…。」
私が感心したように言うと、パッシアさんは苦笑いをした。
そうしてアイリス様の飴玉の効果もあり、私とパッシアさんは翌日には退院することができた。
退院してからは怒涛の毎日だった。アイリス様が言っていたように、破壊の竜を倒した私とパッシアさん国を挙げての式典に出席するために、着飾っていた。
「ほら、イヴ様、もう少し力んでください!」
「く、苦しいです!もう無理!」
「そんなことを言わず!ほら、もうちょっと!」
「ひぃ~!」
私は絶賛コルセットと戦っていた。式典に出席するためにドレスに着替えることになっているのだが、ドレスを着るためのコルセットがこれまた曲者だったのだ。
普段からコルセットを付けている貴族の人達とは違い、私は一般人だ、コルセットなど初めてだ。ここまできついものだとは思っていなかった。
私の着つけをしてくれているのはアイリス様の直属のメイドさんたちで私は退院してから直でこのメイドさんたちに連行されてこうしてコルセット地獄を見る羽目になってしまった。
本音を言えばもう少し療養してから式典を執り行ってくれればいいのに…、と私は思った。
そんな文句など言えず、私は黙ってお腹に力を入れて、コルセットを付けることだけに専念した。




