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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第四十一話 最後へ向けて

私がフラーウム様の神殿から雫を持って出てくると、入り口ににはマティさんが待っていた。


「おかえり、イヴ。フラーウム様の試練の結果はどうだった?」


「見てください!これ!」


私は”じゃじゃーん!”という効果音を自分で付けながら、先程フラーウム様からもらった雫をマティさんにも見せた。


「よかった、ちゃんと雫をもらったのね。これで一件落着ね。あの竜のことだし、まだ何か言ってくるかと思ったけど、それも杞憂だったようね。」


私は思わず”他の竜のことを老いぼれと呼んでいた、などと言おうと思ったが、これは秘密だと言っていたので、その約束を早速破る訳になるため、私は口を噤んだ。


「じゃあ、私たちは宿へ帰りましょうか。ガーネットが起きてるかもしれないし。」


「そうですね。」


私はフラーウム様の雫を腰のポーチに入れる、先を歩くマティさんの後を追った。



私たちが帰ると、ガーネットさんはむすっとした表情で出迎えた。


「どうして私を起こしてくれなかったのよ。」


「だから、何度も言ってるじゃない、ガーネットは遅刻確定の時はぎりぎりまで寝ているんだもの。起こすこっちの身になりなさい。」


「むー…。」


反論をしないことから、パッシアさんにも心当たりがあるのだろう。言い返すことはなかった。



「それじゃあ、私は央都に戻るわね。また何か機会があれば、私の所属する病院まで顔を出してちょうだい。」


「はい、マティさん、色々とお世話になりました。マティさんがいなければ、あの試練もクリアできなかったと思いますし。それにたくさんのポーションもありがとうございます!」


「あれは私が時間の空いてる時に調合したもので、余っちゃったから貰って。これからもまた必要になるかもしれないし。」


「ありがたく頂戴しますね。それじゃあ、私たちも次の街へ行くことにします。」


「次の都市で雫集めは最後なんだっけ?光の都市ルーメンか…。あそこは私も入った記憶はあるけど、都市で何があったかは、他言無用になってて詳細は話せないのよね…。」


「私もちらっと耳にしたので知っています。気を付けますね。宝石将となった時は宜しくお願いします!」


「もう宝石将になるって宣言しちゃうのね、いいわ。後輩ができるの楽しみにしてたの!」


マティさんはにこっと笑うと、ポーチから箒を取り出して箒を横にすると、そこに座って横向きに箒に乗る形を取った。


「それじゃあ、またね!」


「はい!ありがとうございましたー!」


「ガーネットもいい加減機嫌を直しなさいよー」


そう、ここまで私とマティさんだけで会話しているが、その場にはちゃんとパッシアさんもいるのだが、数時間前に置いてけぼりを食らったことを未だに拗ねているらしく、一言も言葉を発しなかった。


「パッシアさん、機嫌直してくださいよ。次の都市へ行かないと。えっと、次は…。」


「光の都市、ルーメンよ!」


パッシアさんは落ち込んでいるかと思えば、がばっと体を起こして、目を輝かせた。


「パッシアさんはルーメンに行ったことあるんですよね?」


「私も宝石将名乗るために竜巡りをしたからね。でも、ルーメンから出ると、記憶操作されたのか、ルーメンの中で起こったこと、何も覚えてないのよ。」


「え、記憶操作って…。怖いですね…。ルーメンを守護する竜の力でしょうけど…。」


「まぁ、とにかくルーメンまで飛んでいきましょ。ここからだとまずは洞窟を抜けて火の都市を通り過ぎてルーメンに行くのが近いかしら…。」


パッシアさんはポーチから取り出した地図を見て、ぶつぶつと呟き始めた。私はその間にポーチの中身を確認して出発の準備を整えた。


「パッシアさん!まずは洞窟を抜けないことにはどこにもいけませんよ!さ、行きますよ!」


私は未だにブツブツと呟いているパッシアさんの腕を引いて、歩き始めた。

土の都市、テッラから出て、行きと同じルートを辿って、私たちは洞窟を抜けた。道中、モンスターに襲われることは一、二回あったが、それも土の都市の試練をクリアしたからか、モンスターがだいぶ弱く感じられた。これも成長なのだろうか。

私たちが洞窟を抜けると、丁度陽が真上に来る頃だった。


「お腹空いたわ~。ここら辺に小さな村はなかったかしら…。」


「パッシアさん、これ、どうぞ。」


再びパッシアさんが地図と睨めっこしてる間にポーチから一つのパンを取り出した。それは土の都市テッラを出る際、パッシアさんが悶々と唸っている間にお世話になった宿屋の一階の食事処で買ってあったパンだった。


「あら、ありがとう、イヴ!これで少しは腹の虫も治まるわ!」


私たちは洞窟を抜けて直ぐの森の中で短いお昼休憩をした。私もポーチから自分の分のパンを取り出して、ぱくっとかぶりついた。

今朝焼いたばかりだというパンは、少し時間が経ってしまった今でも、香ばしい香りが鼻をくすぐり、中はしっとりとした実に美味しいパンだった。


「(また今度テッラに来たら、このパン買おう…)」


そんなことを思いながら私はこれから向かうであろう、火の都市の方向を見た。


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