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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第三十話 飛ぶ理由

私がペチナちゃんに提案したのは次の通りだ。


「ペチナちゃん。もし飛べるようになったら、って考えてみて?飛べるようになったら、お店に来るのが大変な人に届けることができるんじゃないかな?出前ってやつだよ。どうかな?」


そういうとペチナちゃんは私の方を見て、目を輝かせた。


「それなら頑張れる気がします!」


「それじゃあ、今日も練習頑張ってみようか!」


そして飛行魔法の練習二日目がスタートした。

一回目は失敗に終わったが、二回目からは少しずつだが、もう片方の足も浮かべられるようになってきた。十回目ともなると、両脚が浮くほどになった。

そうして、今日も夜が更けてきたので、お開きにすることにした。


「ありがとうございます、イヴさん!少しずつコツが掴めてきた気がします!」


「それならよかった。明日も頑張ろうね。」


「はい!」


昨日と同じようにお店から日替わりスープを持ってきてくれたペチナちゃんにお礼を言って私は宿へと戻った。


「ただいま帰りました~。」


「おかえり、イヴ。」


パッシアさんはお風呂上りのようで、髪の毛をタオルで拭いているところだった。


「今日の練習はどうだった?」


「少しだけですが、両脚が浮くようになったんです!あ、あと、ペチナちゃんちの家庭の事情も聴きました。」


私はそういってパッシアさんにも、ペチナちゃんちの家の事情を話した。


「ふむ…、それはトラウマになるね…。でも、イヴの提案も悪くないと思うわ。いいアドバイスができたんじゃない?」


「そうですかね?ペチナちゃんの力になれたらいいんですけど…。」


「ま、明日から頑張りましょ。ほら、イヴもお風呂に入ってきな。」


「はい。」


私はそう返事をしてお風呂場へと向かった。

お湯に浸かりながら今日の出来事を振り返った。私はペチナちゃんにとって魔法を教えてくれるお姉さんだが、ちゃんと教えられているのか、不安だった。だが、私が提案したことに目を輝かせたペチナちゃんの顔が忘れられなかった。


「(明日も頑張ろう。)」


私はどう思って、お風呂から上がった。

そうして飛行魔法練習、二日目が終了した。


次の日も公園で待っていると、ペチナちゃんは箒を持ってやってきた。


「今日も頑張ります!」


そう意気込んでいるペチナちゃんに私はなんだかホッとした。昨日母親のことを話した弱い部分のペチナちゃんを見てしまったから、元気がないかと心配したが、杞憂だったのかもしれない。


「イヴさん見てください!」


そういって私を呼んだペチナちゃんはいつの間にか数十メートルまで上昇していた。


「す、すごいよペチナちゃん!そんなに飛べるようになったんだね!」


「えへへ…、実は昨日家に帰ってからも反復練習をしてて、そしたら少しずつ浮くようになって…。部屋じゃ狭くて限度がありましたけど。」


「すごいすごい!後は、そのまま移動できれば…。」


「えっと…、こう、ですかね…。」


ゆるゆるとだが、ペチナちゃんは前に進み始めた。


「そうそう、その調子!」



それから、真上に上昇してから、少しずつ地面と平行に進む練習をした。

数十分もすれば、ペチナちゃんはするすると移動できるようになった。


「今日だけでもだいぶ成長できたと思います!ありがとうございました、イヴさん!父にもまずは近所から出前の注文をしようかと考えていると伝えますね!」


「あっ、おねーちゃん!」


「ぷ、プチナ!?こんな夜に外に出てきちゃだめでしょ!」


突然店の方からとことことペチナちゃんよちも少し背の低い女の子が近寄ってきた。


「だって、二階の窓からおねーちゃんが空飛んでるところ見えたんだもん!おねーちゃんと飛べるようになってすごかった!ふわふわしてて、まどーしさまみたいだった!」


「プチナ…。私は随分前から魔導士だよ。でも、こんなおねーちゃんの姿、見ててくれたんだね、ありがとう…。」


そういうとペチナちゃんはプチナちゃんをゆっくりと抱き締めた。

そんな二人の姉妹の様子に私は微笑んだ。

私には兄妹とかいなかったから、少しだけ羨ましかった。弟や妹がいたら、こんなんなんだろうか。もしくは兄や姉がいたら、こんな感じなのか。と。


「イヴさん、ここ数日間ありがとうございました!私はもう大丈夫です!飛べるようになったのも、心の持ちようも変わることができたのは、イヴさんのおかげです!本当にありがとうございました!あの、お礼に明日お店に来てくれますか?予約席を取ってお昼をご馳走しますから!」


「えっ、そんないいよ…。ここ数日の飛行魔法の練習の後に毎回日替わりスープを貰っちゃってたし…。」


「いいんです。これくらいさせてください。あの赤髪のお姉さんも是非連れてきてくださいね。それじゃ、また明日!帰るよ、プチナ。」


「じゃーね、お姉さん!」


ペチナちゃんはプチナちゃんの手を握ると、二人でとことこと並んで「満腹」へと帰って行った。


「(私も帰ろう…)」


姉妹のやり取りに羨ましさを感じながら、私は宿への帰路についた。


「ただいま、戻りましたー。」


「あら、お帰り、イヴ。今日はどうだった?」


「プチナちゃん、だいぶ成長して今日は箒で飛んで移動できるくらいまで成長しましたよ。これで試練は達成できたかと思います。」


「それじゃあ、明日神殿に行く?」


「はい。あ…、明日プチナちゃんにお昼をご馳走するから赤髪のお姉さんと一緒に来てくれって頼まれたんですよ。」


「やだ、またあそこのお店の料理が食べられるの!?ウェントゥスにいる間に二回も食べられてラッキー!」


「パッシアさん、料理のことしか頭にないじゃないですか。」


「う…、ちゃ、ちゃんと試練の報告のために神殿に行ってからお店に行くわよ?」


そういって目を泳がせるパッシアさんに私は笑顔がこぼれた。仲良く並んで歩いて帰る姉妹の背中を思い出しながら、私は今日の疲れを癒すためにお風呂に入った。


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