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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第二十七話 風の竜

私たちはお昼を済ませると、早速ウェントゥスの守護竜が祀られている神殿へと赴いた。


神殿の中はどこも神秘的でひんやりとした空気感があった。


「じゃあ、私はここで待ってるから。いってらっしゃい、イヴ。」


「はい、行ってきます!」


私は美味しいお昼を食べたことで元気いっぱいになり、その勢いのまま神殿の奥へと向かった。

この都市の神殿に住まう竜は神殿の二階部分に当たる場所に鎮座しているようで、私は階段を上がった。


私が階段を上がりきると、毎度のことながら部屋を照らす松明が次々と点灯していき、部屋全体を照らし出した。


すると、私の目の前に美しいエメラルド色の鱗がきらりと光った。


「…次はあなたがわたくしを満足させてくれる魔導士ですか?」


「あの、あなたがウィリディス様ですか…?」


「はい。私がこの都市に風を吹かせ、そしてこの都市を守っている竜のウィリディスといいます。あなたの名前は……そう、イヴというのね。」


「!?」


「そう驚くことでもないでしょう。今まで出会った竜も名前を知っていた節はあったでしょう?」


「た、確かに…。それで、あの、試練の内容というのは…?」


「それなんですが…、本当はこの都市近郊に出没する盗賊の殲滅をお願いしようと思ったんですが、あなたたちがこの都市に来る前にやっつけてしまったようなので…。別の試練をご用意しますね。」


「えっ、あの盗賊たちが試練の内容になるはずだったんですか!?な、なんかすみません…。」


「いえいえ。こちらは都市への脅威を去ることができて嬉しいのです。それでは、新たな試練を与えます。ここの神殿より、北に延びる中心街の通りにある「満腹」というお店にいるペチナという小さな魔導士のお手伝いをしてください。」


「満腹…?ってさっきお昼食べたお店…!」


「ふふ、もうお店に行ったのは知っています。あのお店の出窓でお持ち帰り用の食事を提供していたのが今回お手伝いをお願いしたい”ペチナ”という魔導士です。どんなお手伝いかは彼女から聞き出してくださいね。」


「わ、分かりました!」


そうして私の新たな試練が始まった。



まず神殿の前で待ってくれていたパッシアさんに軽く今回の試練の内容について相談した。


「うーん…。またあのお店に行くのね。今度は夕飯の時に行ってみましょう。それで、お仕事終わりに話を聞くことにすればいいと思うわ。私からの助言はここまで。あとは自分一人で頑張るのよ?」


「はい!ありがとうございます、パッシアさん。」


私たちは夕食をあの「満腹」というお店で取ることにし、一旦宿へと戻った。

宿で軽く持ち物のチェックをしたり、鎌の柄の部分を磨いたりしていると、あっという間に外は暗くなり、街に明かりがともり始めた。


「さて、そろそろ行きましょうか。」


「はい!」


私とパッシアさんは美味しい匂いがあちこちでする中心街の北へ向かい、目的の「満腹」へとたどり着いた。


ガチャ


「いらっしゃいませー!ってお二人ともお昼にもいらっしゃった…?」


「あ、よく覚えてますね。そうです。お昼ご飯が美味しかったので、ここで夕食を食べようかと思って。」


「ありがとうございます!ささ、席へご案内しますね!」


私たちがお店に入ると、直ぐに駆け寄ってきたのはあの昼間に出窓でお持ち帰り用の料理を提供していた小さな女の子だった。

小さな女の子と思っていたが、ウィリディス様は”魔導士”と言っていた。つまりは彼女も魔法が使える、ということだ。


「(あんな小さな子でも魔導士って名乗れるんだ…)」


私はてきぱきと働くペチナの姿を目で追っていると、目の前にパッシアさんの掌がひらひらと動いた。


「あ、やっと気づいた。さっきから話しかけてるのに、返事がないから私が独り言ばっか言ってるみたいになっちゃったじゃない。」


ぷくーっと頬を膨らますパッシアさんが可愛くて、私はクスクスと笑うと、パッシアさんは恥ずかしくなったのか、メニュー表で顔を隠した。


「お二人とも、ご注文はお決まりでしょうか?」


「あ、今決めますね!すみません、お待たせしてしまって…!」


「いいんですよ。もう少ししたらまた来ますので、それまでにお決めください。それでは、ごゆっくり!」

そういってまた店内を忙しく動き回るペチナにイヴは感心した。


「イヴ。さくっと決めないと!」


「メニュー表を取ったのは誰ですか。」


「うっ…」


おずおずと私とパッシアさんの間に広げられたメニュー表を見て、私たちは目を泳がせた。

どれもイラスト付きで分かりやすい。それにどれも美味しそうだった。


「パッシアさんはどれにします?」


「私はこのビーフシチューのディナーセットにしようかしら。イヴは?」


「私はオムライスのディナーセットにしようかと。」


「それじゃあ、そのペチナちゃんを呼びましょうか。」


パッシアさんがペチナを呼ぶと、彼女はとことこと早歩きで私たちの席までやってきた。



「それでは、ご注文を繰り返させていただきますね。ビーフシチューのディナーセットが一つ。オムライスのディナーセットが一つ。で、よろしいですか?デザートなどはよろしいですか?」


「えっと…、じゃあ、私はチーズケーキを。」


「私はこの抹茶のムースってのが気になるわ!」


「かしこまりました!料理ができるまで少々お待ちください!」


「あ、すみません!もう一つ、いいですか?」


「?はい。」


「今日の仕事は何時までですか?お仕事の後でいいので、お話しできる時間が欲しいんですが…。」


「お話…ですか?」


私はウィリディス様からペチナの力になるように仰せつかってきたことを手短に伝えると、ペチナは目を丸くした。


「ウィリディス様はこんな私にも目を配ってくださっていたんですね…。」


そういって目を伏せたペチナの様子に私は何かあるんだろうな、と思った。


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