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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第二十一話 死神

私は走っていた。目的地は迷宮のゴールである、チピレットのなる木だ。

先ほどよりも甘い香りが強くなったことで、ゴールが近いことを察する。


「(さっきの死神がこの試練の要なんだとしたら、カエルレウム様はこの死神の存在を知っているってこと…。こんな危険なモンスターをこの地下迷宮に隠してるってこと…?どうしてそんなことを…。試練のためだけ…?)」


私がそんなことを悶々と考えながら次の角を曲がると、目の前に大きな木が見えた。


「ここがゴールか!」


私がそういってゴールのチピレットの木に近付くと、再び殺気を感じた。


私はグンッと上体を反らして、鎌の攻撃を避けた。そのままの勢いでバク転をすると、チピレットの木の前には先ほどと一緒の死神がふわりふわりと浮かんでいた。


「あなたを倒さないと、その果実はもらえないってことですか…。」


私の呟きに死神は返事などするはずもなく、攻撃を仕掛けてきた。私は死神の攻撃を避けながら、鎌を展開し、こちらからも攻撃を繰り出した。先ほどの死神は攻撃を受けると消えたが、目の前の死神は本物のようで明らかに私の攻撃を避けていた。


「(本体がこいつで合ってるようね…!)」


私はくるくると鎌の柄を回して、次々と攻撃をしかけていった。だが、それも死神は嘲笑うかのように目元を細めながら避けきった。


「っち…!」


私はそんな様子の死神に沸々と苛立ちが込み上げ、思わず舌打ちが出てしまった。

私と死神の攻防は何分続いただろうか…。お互いの攻撃を避け合った頃、私はチピレットの木に背中が当たったことで追い詰められたことを知った。


「しまっ…!」


私のほんの少しの動揺を見逃すことなく、死神は私に向かって鎌を振り下ろした。


「くっ…!」


私はできるだけ体を反らせて振り下ろされた鎌の刃を避けようと試みたが、ほんの少し鎌の刃が自身の体を裂く感覚があった。


バク転をして死神から距離を取ったが、腹部からはぽたりぽたりと血がとめどなく流れていた。


「(油断した…!この目の前の死神は確実に私のことを殺しにかかってる…!)」


私は腹部をぎゅっと力を入れて押さえつけて止血を試みた。だが、その努力も虚しく血が止まることはなかった。

が、目の前の死神も待ってはくれなかった。一気に距離を縮めてきた死神に私は完全に気を抜いてしまった。

死神は私が傷を庇いながら動いていることを読んでいて、わざと腹部を狙ってきていた。


「(こいつ…、私がお腹を庇ってるのを知ってて…!)」


私は腹部に傷を負ってから明らかに動きが鈍ってしまった。通常なら避けられる攻撃も腹部の痛みから上手く避けきれなくて、私の体には次々と死神の鎌の刃の切り傷が刻まれていった。最終的には死神に頭を押さえつけられ、迷宮の壁にドガン!と叩きつけられてしまった。


「かはっ!」


私は思わず口から息がと血が混じったものを吐き出してしまった。

頭を叩きつけられたことで目の前の視界がぼんやりとして頭はぐわんぐわんと波のように痛みが襲ってきた。


そんな痛みも自分の体に鞭を打ち、キッと目の前の死神に視線を向ける。


「(ここは魔法を使うしかない!純粋な鎌の攻撃だけじゃこいつには勝てない!まずは氷で相手の攻撃を封じなきゃ!)」


私はそう考えると、迷わず行動に移した。まず、死神の攻撃をできる範囲で避けきり、相手の後ろを取ることに専念した。


「(ここ!!)」


大きく鎌を振り上げてくるくると回りながら鎌を振り回すモーションに入った死神に私は上手くその攻撃を寸でのところで避け、上手い具合に相手の背中を取ることができた。


「これでも食らいなさい!」


私は鎌を地面に突き刺すと、次々と地面から氷柱がせり出てきて死神にクリーンヒット。上手い具合に死神を氷漬けにすることができた。


「このまま、消え去れ!」


私は数秒でも氷漬けになった死神の隙を見逃すことなく、自分の鎌で死神を一刀両断した。


「ぐぁあああ!!」


汚い断末魔を上げながら、死神は今度こそ塵となって消えて行った。それはモンスターの最後と同じだったため、最初に出会った時のような消え方ではなかった。やっと倒すことができたのだと、心から安堵した。


心に余裕ができると、腹部の傷、そして頭の傷がじくじくと痛みだした。


「(あれ…、これやばいかもしれない…)」


体から力が抜けるのを感じた。


「(せめて、カエルレウム様にチピレットを届けないと…)」

そう思った私は意識が飛びそうになるのを必死に堪えながら、迷宮のゴールであるチピレットの木から一番低い位置にあったチピレットを捥ぐとそれを持ちながら、ずるずると再び迷宮に戻った。

左手で壁伝いに歩くこと数十分、幾度となく意識が飛びそうになる度に、自分の頬を叩いて意識をなんとか繋ぎ止めていた。


曲がり角を曲がると、そこには迷宮の入り口でもある階段が見えた。

私はその階段を一段つ上がっていき、カエルレウム様の元へと戻った。


「あっ…、君、戻って…、って君の怪我大変じゃないか!」


「カエル、レウム様…、約束の、チピレット、です…。」


私がゆらゆらと小刻みに揺れる手でカエルレウム様にチピレットを渡すと、私の意識はそこで途切れた。


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