2.入学試験
すみません、遅くなってしまいました。その代わりに長いです。
毎日投稿してる方とか、本当に凄いな…。
3日後。荷物を持って、レディアと共にカイルさんと待ち合わせた場所に向かう。
両親には家の前で見送られた。せめて街の出口くらいまで見送ってくれると思ってたのに。別に良いけど。
もしかしたら、思っていたよりも学校が近くて頻繁に家に帰れるのかもしれない。
まぁ、だとしても初めて両親から離れて町から出るんだから少しはしんみりしてくれても…
少し不満に思いつつも歩いていると、カイルさんが見えた。待ち合わせ場所に着いたようだ。
「おはようございます、カイルさん。
待たせてしまいましたか?」
「おはようございます」
「おはよう、2人とも。
安心してくれ、全然待ってないよ。むしろ予定時間より少し早いくらいだ。毎朝、外で剣を振るのが日課でね。それで早く外に出てただけだから」
見ると、背中に大剣を下げている。額には少しだが汗が浮かんでいる。どうやら本当みたいだ。見た感じは優しげな雰囲気で、特に筋肉質には見えないけど。実は結構鍛えてるのだろうか。ついじっと見てしまう。
「ん、どうしたの?」
じっと見ていたらカイルさんに聞かれてしまう。いけないいけない、ガン見するのは失礼だったか。
「すみません、何でもありません」
「そうかい?ならいいんだけど。
それじゃ、行こうか」
「はい。えっと、それでどうやって行くんですか?」
周りを見るが、馬車やそれに当たりそうなものは特に見えない。
かと言って、歩いて行ける距離に学校があるなんて聞いた事無いんだけど…。
「あぁ、少し待っててね」
「?はい」
待つって事は、もう少ししたら迎えの馬車でも来るのだろうか?そう思っていると、カイルさんは目を閉じて何か言い始めた。
【此の地はクレス。向かうはヴィヴァルチェ。
我が力により彼方へと道を繋げ。】
カイルさんが言い始めると、なんとなく周りの空気が変わったような気がした。この感覚は、魔法を使う時に自分の中に起こる感覚と似ている。聞いた事もない呪文だけど、多分これは魔法の詠唱だ。
【距離の概念を跳躍せし扉よ、ここに顕現せよ】
詠唱が終わると同時に、目の前に漆黒の扉が現れる。扉の周りの空間は揺らぎ、何か感じた事のない雰囲気を感じる。
「お待たせ、それじゃ行こうか」
見るからに凄そうな魔法を使った後なのに、平然として言う。学校で魔法を学べば、私たちもこんな事が出来る様になるのだろうか。そう考えると楽しみになって来た。
「はい、お願いします!」
「おねがいします!」
カイルさんが扉を開く。すると光が溢れ、反射で目を閉じる。
光が収まり、目を開くと。
「「うわぁ…」」
目の前には大きな道。そこを無数の人が歩いている。すごい喧騒だ。高そうなドレスを着ている人、大きな鞄を背負って走って行く人、いかにも冒険者のような格好で駆けていく人もいる。右を見ても左を見ても無数に建物が並び、活気に溢れている。
中でも目を引くのは、目の前に位置する大きな城だ。白と青を基調とした洗礼された美しさで、見るものを圧倒している。
あまり詳しくはないけど、正しく前世で思い描いたファンタジー世界そのものだ。
そういえば、さっきの呪文でヴィヴァルチェって言ってたっけ。確か、王都の名前だったはず。それじゃあのお城は王城かな。道理で立派な訳だ。
レディアも興奮しているのか、あちこちを見回して目を輝かせている。
「2人とも、興奮してるとこ悪いんだが、そろそろ移動しよう。ここで立ち止まってても邪魔になるしな」
カイルさんに言われて、自分達が立っている場所が人通りの中だと自覚する。
「す、すみません」
「いいよいいよ。俺もその反応が見れて、転移場所をここにした甲斐があったってもんだ。
それじゃ、着いて来てくれ」
先頭のカイルさんに、私とレディアはついて行く。それにしても本当にすごい人の数だ。この世界に生まれてこっち、人混みとは無縁だったから驚いた。前世だと渋谷のスクランブル交差点を想像させる。まぁ、目の前の人たちの服装はファンタジー世界まんまだから雰囲気は全然違うけど。何なら渋谷にも行った事ないから、あくまで想像だけど。
暫く歩いていたが、カイルさんが立ち止まる。
見ると、目の前に立派な門、それを超えると、これまた立派な建物がある。ここが目的地だろうか?
少し待っててくれ、と言い残してカイルさんは門番のところへ歩いていく。
毎日家から練習場まで歩いていたけど、さすが王都は広い。転移先からここまで結構歩いて、少し疲れた。私とレディアは道の端に寄って壁を背もたれにして休む。鞄の中から、自分の分とレディアの分の水筒を取り出し、水分補給。はぁ、生き返る。
それにしても、この門に向かってくる人全員がこの学校の関係者なんだろうか。
王城前に比べるとだいぶ少なくなったが、それでもクレスの道と比べると、見た事ないくらい人や馬車の行き来が激しい。中には見るからに豪奢な馬車や、何人もの使用人に囲まれて歩いてる貴族らしき人もちらほらいる。
もしかしなくても、貴族とか上流階級の子供もここに通っているんだろうか。
わざわざ自分から関わるつもりはないけど、ちょっと不安になってきたな…。
隣にいる妹は気負った様子もなく、むしろ馬車を指差してはしゃいでいる。
無邪気でいいなぁ…癒されると同時に羨ましく思う。
「お待たせ、手続きが終わったから中に入ろうか。取り敢えず、これから君たちが住む寮に案内するね。着いて来て。」
頷き、カイルさんの後に続く。
門をくぐって辺りを見回す。とんでもなく広い。舗装された通路が三方向に分かれている。
正面には、門からも見えていた白く立派な建物。横に広く、三階建てだ。所々にある窓からは制服らしきものに身を包む人が見える。校舎だろうか。
左手は木々が生い茂っており、先の方に建物が見える。アレはなんだろうか?
右手には大小様々な建物が幾つかある。材質も木でできている物からレンガ造りに石造り、古そうな物から新築に見える物まである。
分岐点に着き、私達は右に曲がる。という事は、これらの建物が寮なのだろうか。校舎を見て何となくは思ったが、生徒の人数はかなり多そうだ。
暫く歩いて、ようやくカイルさんが一つの建物の前に立ち止まる。
「ここが、これから君たちが暮らす寮だよ」
木造で二階建ての建物だ。町にあった集会場よりもひと回りほど大きく、窓の数を見た限りだと、部屋数も多い。結構な人数が暮らしていそうだ。
前世に比べたら人と接するのも大丈夫になったけど、やっていけるだろうか…
隣を見ると、私とは対照的にレディアは楽しそうにあちこちを眺めている。
「それじゃ部屋に案内するね。予め寮母には話を通してあるし、今は新入生の準備で忙しいだろうからまた時間がある時にでも挨拶に向かってくれ。」
言うと、カイルさんは建物の中に入り、正面にある階段を登って2階へ。そこから右手に曲がり、一番奥の部屋の前で立ち止まる。
「ここが君たちの部屋だ。2人部屋だけど、問題はないよね?」
「はい、大丈夫です」
「だいじょぶです!」
部屋の鍵を貰い、中に入る。
部屋は8畳くらいだろうか。縦長の部屋で、入って正面に窓があり、左手の壁際に二段ベッド、右側には棚が置かれている。中央にはちゃぶ台が置かれているだけの簡素な部屋だ。でも2人で過ごすだけならこれで十分。
「来る前にも言ったけど、明日は試験があるから準備をしておいてね。といっても、必要な物は特にないか。
朝に迎えに来るから、8時くらいに寮の前で待っててくれ」
「はい、分かりました」
「分かりましたー」
カイルさんが帰っていって、ようやく一息つく。
ある程度は動いていたし、体力は並程度にはあると思っていたけど結構疲れた。
レディアも疲れたのか、ベッドに座っている。私もレディアの隣に腰を下ろす。
「疲れたねー」
「そうだね、結構歩いたもんね」
「王都って広いね。学校も広いし、色んな人が歩いてたし。明日からが楽しみだね!」
笑顔で、これからの事が楽しみだとレディアは言う。私も楽しみだけど、同じくらい不安もある。色んな人が歩いてたが、学園の中に入ってからは特に、殆どの人が高そうな服を着てたり、執事やメイドを従えていた。
前世よりは断然マシだけど、今でもあまり対人スキルが高くない私はやっていけるのだろうか…
その点、レディアは人懐っこいし大丈夫そうだ。正直ちょっと羨ましい。
「そういえば、明日の試験って何やるのかなー?」
それからお城などの歩いていて気になった場所やカイルさんの魔法なんかの話をしていて、ふと思い出したようにレディアが言った。
「何も教えてもらってないもんね。
そもそも学校の話も急だったからね」
「まぁでも大丈夫だよね、私もお姉ちゃんも魔法は使えるし」
「んー、どうだろうね」
レディアはともかく、私は本当に初歩の初歩みたいな魔法しか使えない。クラス分けの試験だって話だから、もしかしたらレディアとは違うクラスになるかも。町で魔法を使ってた人を見た事がないから一般的なレベルを知らないから分からないけど。
「大丈夫だよ!それに、もし違うクラスになっても寮に帰って来たら一緒だしね」
「それはそうだね」
「そうそう、そうだよ!
それに、お昼ご飯とかは一緒に食べようね!
あ、あと帰るのも一緒ね!」
「うん、もちろんだよ」
不安が顔に出ていたのか、レディアは殊更明るく言ってくる。気を遣ってくれているのだろうか。
本当に良い妹を持ったものだ。
思わず頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。
出来るなら、同じクラスになれると良いな。
翌日。カイルさんとの約束より少しだけ早く寮から出ると、既にカイルさんがいた。
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶をすると、こちらに気付いて挨拶を返す。
「おはよう、昨日はしっかり眠れた?」
「はい、ちょっと疲れてたみたいで私もレディアも気付いたら寝てました」
「そのお陰で、やる気バッチシです!」
「そうかそうか、ならよかった。
それじゃ、行こうか」
カイルさんを先頭に、試験会場に向かう。
昨日も思ったけど、やっぱり広いな。あと、同じ方向に多くの人が向かっている。もしかして、全員今年の入学者なのだろうか。
「カイルさんカイルさん、試験ってどんな事をするの?」
歩きながらレディアがカイルさんに聞く。私も知りたいので、意識をそちらに向ける。
「あぁ、そういえば説明してなかったね。
何を学ぶかによって科が変わるから、試験も変わるんだけど。2人は魔法だよね?
だったら、例年だと魔法の強さを見て、それに応じて上から順にクラス分けされる感じかな」
やっぱりそんな感じか。
「あと、多分大丈夫だと思うけど、定員内に入らない順位だったら、科が変更になるか、最悪入学出来ないから頑張って」
は?初耳なんだけど。入学出来ないとかあるの?というか、科って何?
「入学出来ないとか聞いてないんだけど!?」
思わずレディアが大きな声を出す。
「あれ、言ってなかったっけ?ごめんごめん、忘れてたみたいだ。
大丈夫大丈夫、入学出来ないなんてのは滅多にないから。科はもしかしたら変わるかも知れないけど、それぐらいの歳で魔法が使える子は少ないから大丈夫だと思うよ」
のほほんと笑いながらカイルさんは言う。
いやいや、忘れてたって。かなり大事な事でしょ。これで片方だけ、というか私だけ入学出来ないとかになったら辛すぎる。
「あー、ごめんね。
だけど本当に大丈夫だと思うから。
定員があぶれる事自体滅多に無いし、あっても魔法が少しでも使えたら殆どは入学出来るから。だから安心して」
私達の反応を見て、申し訳なさそうにカイルさんに言われる。
どうやら本当に忘れてただけで悪気はないみたいだ。
「分かりました」
レディアも同じ様に感じたみたいで、若干不満げな顔だが、納得したみたいだ。
まぁ、故意に隠していたならアレだけど、忘れていたのを責めても仕方がない。
「ごめんね、ありがとう。
他に言い忘れてる事は…うん、多分無いと思う。けど、また何かあったら言ってね」
私とレディアは頷きを返す。
試験会場は寮と反対側、校舎から左手の森にある建物の一つらしい。
建物の前に到着すると、既に大勢の人が集まっていた。
剣を背負っている人、杖を持っている人、皮の鎧を着ている人、豪華そうな服を着ている人、かなり少ないが、私達みたいな麻で作られた服を着ている人も何人か居る。ここに居るほぼ全員が受験者なのだろう。本当にあぶれないのだろうか。また少し不安になってきた。
暫くすると、建物の扉が開き、中から数人の人物が出て来て、その中の5人が前に出る。更にその中の1人が前に出て話し始める。
「私は本日の試験の総試験官を務める、メラリオだ。今年も優秀な人材が当校に入学する事を願っている。
既に知っているだろうが、この試験はクラス分けと入学試験を兼ねて行われる。各分野に分かれ、上から順に1級、2級と振り分けられ、5級までに入れなかった者は入学する事は出来ん。
特例として、空いている分野の科があればそちらでの入学を許可するが、そんな事を貴様らも望んでなどおらんだろう。
各々の全力を、存分に発揮するがいい。以上だ。
セリン、ダフ、カリーヌ、キクロ、後は任せる」
言うと、メラリオさんは下がり、名前を呼ばれた残りの人達が説明を始める。
「初めまして、皆さん。
私は魔法科の教官長、及び本日の魔法科試験官を務めます、セリンです。
私から順に、剣術科長のダフ、聖術科長のカリーヌ、野営科長のキクロです。
皆さんは、希望する科の長の所に行ってください」
セリンと名乗った金髪の女性が言い終えると、他の3人が少し距離を取り、そこに向けて受験者が集まっていく。私とレディアも動き出す。もちろん向かう場所は魔法科の長の所だ。
受験者の全員がそれぞれの受験する科に分かれ終えると、学科長の号令により別の建物に入って行く。
建物の中は簡素で、真ん中に大きな岩があるだけだ。その岩には何か複雑な模様が描かれている。
「それでは、これから行われる試験の内容について説明しますね」
セリンさんが言うと、全員がそちらを向く。
それを確認してから、説明を始める。
「試験の内容は至ってシンプルです。
あそこにある岩の中央に魔法陣が描かれています。あの魔法陣には、当たった魔法の魔力を数値化する術式が組み込まれています。そこに向けて何でもいいので魔法を撃って頂き、その数値の高い方から順にクラスを分けていきます」
なるほど、あれは魔法陣なのか。魔道具にも描かれているけど、そんな機能のものもあるのか。
それにしても、魔法を撃つのか…
これまでは火を点したり、水を少し出す事しかやった事ないんだけど。本当に入学出来ないんじゃないの、これ。
不安に思っていると、レディアが手を握ってきた。見ると、「大丈夫」と口が動いた。
全く、これじゃどっちが姉か分からないね。私は「ありがとう」と口を動かして、手を握り直す。取り敢えず、やれるだけやってやろう。
順番は過ぎていき、私達の番が近づく。
結果は結構まちまちで、今のところ最高で300、最低で50程度だ。中には魔法を撃つことが出来ず、手に魔法を形成して、それを直接魔法に当てる人もいた。一応それでもいいみたいだ。私も撃てなかったらそうしよう。
あと、魔法の撃ち方も結構人によって違う。
私が読んだ本だと、魔法にはそれぞれ呪文があって、それを唱えながらイメージして魔力を乗せるって書いてあった。けど、私が知ってる魔法でも違う呪文を言っていたり、無詠唱でやってる人もいた。
どうやら、イメージを補強するために詠唱があるだけみたいだ。
そうこうしているうちに、レディアの番がやってきた。私は頑張って、と伝えると、レディアは笑顔でピースを返してくる。
指定の場所に立ち、詠唱を始める。手の中では火が生まれ、詠唱が進むごとに大きく、また形も丸く整っていく。
「ファイアーボール!」
最後の文句を言い終えると、形成された火の球は真っ直ぐ進み、魔法陣のど真ん中に命中する。程なくして、魔法陣に点数が表示された。表示された数値は【216】。上から数えた方が早い。中々の高得点だ。
私の番がやってくる。レディアの点数と、これまでの他の参加者の点数、あとは残りの人数と、クラスが5つあるのを考えると、最低でも170くらいは出さないとレディアと同じクラスにはなれないだろう。170か…平均より少し上くらいだ。私に出来るだろうか。
緊張しながら指定の位置に立つ。
詠唱を開始しようとするが、ふと詠唱を変えてもいいという先程知った事実が頭を過ぎる。
これまでは詠唱に引っ張られてイメージが疎かになってしまっていたけど、そも詠唱はイメージを補強するために唱えられるみたいだ。だが、イメージを私が一番に出せるのは詠唱ではない。
前世でも、感じた事や思った事。頭の中や心の中を歌によって吐き出してきた。
なら、歌を使えば。もしかしたら、もっと強い魔法が出せるかもしれない。
突拍子もない考えだが、やってみる価値はある。出来なかったらいつも通りに詠唱ですればいい。
イメージするのは緋い火の玉。マグマの様に熱く、夕焼けの太陽の様に緋く。それに伴って、口からは音がまろび出ていた。
イメージが固まるにつれて私の歌にも熱が篭る。
最後。イメージが完成し、手の中では真っ赤な炎が手の中で煌々と光っている。
一瞬の静寂。直後、ハッと声を一息出し、それと同時に炎が放たれた。
それは魔法陣の中央に着弾し。
岩が爆ぜた。
「………」
「………」
「………」
破散した岩がガラガラと地面に落ちていく。
見ると、破片は真っ赤になっており、少し溶けている様に見える。幸いな事に、破片が誰かに当たるとかそういう事は無かったみたいだ。良かった。
他人事みたいに頭の中で考える。今起きた現実を受け入れられない。
周りもそうなのだろう、受験者はもちろん、試験官であるセリンさんも呆気に取られた顔をしている。
静寂に包まれた会場の中で、大きな声が響く。
「お姉ちゃん、すごい!」
レディアが満面の笑みで私に飛び付いてくる。
咄嗟に足腰に力を入れて、腕を開いて抱きとめる。
それによってか、周りも正気に戻ってザワザワと話し始めた。
「おい、岩が砕け散ったぞ」
「そんなもんは見りゃ分かる」
「これまでの魔法でヒビでも入ってたんだろ」
「それでもあんな風に飛び散らねぇだろ」
「あいつは何者だ」
「バケモンかよ」
「すごいね」
「あんな綺麗な詠唱、初めて見た」
そんな声がそこかしこから聞こえる。
その中でも私が一番驚いている。
いや、そりゃそうでしょ。これまで花壇の水やりとか、それくらいしか出来なかったんだよ?それが、私の魔法で岩が崩れるなんて信じられる訳がない。というか、魔法陣とか数値とかはどうなるんだろう。まさか、これで失格とかになったり、しないよね…?考える余裕が出来たはいいが、段々不安になってきた。
色々考えていると、パンパンと乾いた音が響いた。見ると、セリンさんが手を叩いて集中を向けさせたようだ。
「静粛にして下さい。
取り敢えず、新しい岩を用意しますので、まだ受験していない方は少し待っていて下さい。
それと、今魔法を撃った、えっと…シャリーサさんはこちらに来て下さい」
呼ばれ、皆の視線がこちらに向く。
え、これ、私どうなっちゃうの…?