0章/ プロローグ【依頼の内容】
作業ペースの遅さが異常^^
「さて、報酬の件はこれで終わりだ」
とても一般職じゃあ手に入らない量と重さを有する麻袋を渡された後、対面にあるソファに腰掛けてこちらを見つめるセリバール。
俺を鍛えてくれた師匠でもありガキだった俺を優しくも厳しく育ててくれた父親と思っている。
その強さはデタラメだが彼のおかげで多くの仲間や知識を得ることが出来た…感謝しかない。なにか考える時にする顎に指を添える仕草を彼はした、おそらくは次の依頼についてなのだろう。
「父さん、次の依頼はなにがある?」
なにか言いずらそうな表情をしていたのもあったので、こちらから聞いてみる。彼は面食らった顔をしたが直ぐにいつもの冷静さを取り戻して口を開いた。
「お前が…征軍に入って約4年が経った事だしな。そろそろ長期の休暇でも出そうかな…っと考えてたところだったんだ」
……………は?
「休暇ぁ!?!?」
「…? 休暇だが?」
4年間ほぼ休み無しで働き続けて今更…本当に休暇?!出来れば
「もっと早くに出して欲しかった…」
「えぇっ! マジかそれは早く言って欲しかったぞ!?」
なんだこの上司。鈍感すぎないか、上司なら部下の勤務状況把握しといてくれよ。頼むから…
「ンンッ…まぁ、とりあえずお前に休暇を与える!」
「まぁ、それはわかったけど期間は? あと今更なぜ?」
そう言うと彼は突然顔つきを変えた。
「まず、4年前にお前を保護してからかなり時間も経ったし、征軍のメンバーとして多くの戦場に出向いてもらっていた。けどなお前はまだ子供だ、価値観や感受性に関しては確かに俺ら大人に近いかもしれないが」
4年前…当時12歳だった俺を見つけて保護してくれた後、俺がなによりも欲していた力も与えてくれた。続けて彼は言う。
「だからな。同じ世代と交流して欲しい、そう友人を作れ。友と思える者が1人でも居るだけで人生なんて簡単に変わるぞ?」
「……まぁ、話はわかったけど唐突に友人を作れと言われてどうやるんだよ。まさか【ギルド】で同年代と組め! なんて言わないよな?」
友人を作る…【ギルド】に居る同年代なんか何かしら問題を抱えているとんでもないやつがいたりするからなぁ……
「ふっふっふ…」
「なに、その気持ち悪い笑い方……」
「言うなよ! 傷つくだろ!」
おっと、心の声が漏れていたらしい。逆ギレされてしまった。
「そう言うと思ってな? 前もってこれを手に入れておいたんだ、ほれ」
彼は懐から筒状に丸められた紙を渡してきた。
「これは……?」
「王立魔法騎士学校レルヴァの転入試験資格証だ」
「王立…レルヴァって…」
「そうだ、お前なら知ってるだろう?」
初代国王の勅命によって建てられたのがこの王立魔法騎士学校レルヴァだ。
この国、サルヴァーレ魔導王国は周辺諸国の中でも、特に魔法や魔術の技術革新が目覚ましい国で様々な理由があるが、魔法騎士学校レルヴァの存在がその一端を担っているのだ。
「だがレルヴァは神選の儀を受けた貴族しか通えないんじゃ…?」
【神選の儀】とは12歳になった子供たちが魔法適正やスキル、職業技能などを神から与えてもらう教会儀式の一つだ。この儀式の結界次第で今後の人生が180度変わる事もある。それこそ貴族の子供が家から勘当されたり、一般市民の子供が身請けされ貴族の一員になったりする。
聞いた話によれば貴族だけの学校と俺は聞いていたが。
「それは認識違いだぞ、神選の儀を受けた貴族は特別な理由がない限りは入学を義務付けられるだけだ、数が少ないだけで一般の募集も毎年行っている」
知らなかった…。いや、国内唯一の教育機関なのだから当然なのかもしれない。
「…まぁ、入学の件は分かったが。依頼や緊急の招集はどうするんだ?」
「ただ学校に通って、はい卒業って行くんなら俺も困らんわ」
「なにか特別な事情がある…?」
セリバールがここまで険しい表情をする事はなかなか無い。
「今回の件はな王宮から……それも王直々の依頼だからだ…」
「なっ……!!」
現国王 ジェード・ルサード・サルヴァーレ
5年前に賢王と呼ばれた前王が崩御した際、当時王太子だった彼は混乱する市民や派閥争いが過激化する貴族たちをそのカリスマ性でまとめあげた。今では2代目賢王と呼ばれ国民からの人気も高い王様からの依頼。
「この依頼は征軍の中でもごく一部の奴しか知らない、機密事項だから他言無用だぞ。」
セリバールは依頼の内容を語っていく。
王立魔法騎士学校レルヴァに通う第一王女、第二王女が貴族の中でも過激思想を持つ反王派と呼ばれる派閥に目を付けられており、最近周囲で怪しい動きをしているのも同時に発覚したということ。
学校内は貴族、王族ですら一定の手段を通さないと立ち入ることが出来ないため、今回征軍に護衛任務兼反王派閥の牽制及び捕獲という形で依頼が来たという事だ。
「ただ、今回の依頼に関してだが相手は貴族ということもあってな。こちら側を知っている者も少なからず居る事も考えて、征軍である事を徹底的に隠す事。そして国王から護衛対象である第一、第二王女との直接的な接触は控えて欲しいとの事だ。」
「……すげぇめんどくさい仕事を押し付けるじゃん」
「一応数名だがレルヴァに在してる征軍メンバーも居るのだから、多少安心して欲しい所なんだがな」
「というか第一王女にも第二王女にも護衛は居るんじゃないのか?」
学校内とはいえ王族なのだから護衛の1人や2人居てもおかしくは無いはずだが…
「そうだな、確かに居るが。今回の場合王女方の護衛が調査に乗り出す方が危険だし、何しろ裏工作をしている者を見つけられない可能性が出てくる。それに面識があるならとにかく初対面相手に信用してくれると思うか? 無理だろ」
まぁ……確かに…
「分かった…具体的な任務期間はどれぐらいになる」
「卒業までの4年という話でおおかた進んでいるが、正直な所わからん。反王派閥の規模が不明な上、今回の件に他国が関わっている可能性も少なからず有り得るからな…」
上手くいけば卒業まで4年で依頼が終わるが実質無期限…気が遠くなる依頼かもしれない。さらに素性を隠しながらときた、戦争をしていた時よりも精神的にやられそうな気がする。
「あぁ、そうだ。学校内でお前の実力を隠す、隠さないは任せる。実力があると分かれば周囲の人間に対して牽制する事も出来るし、隠せば裏事情を上手く知ることも出来るかもしれないからな」
「全力は出さないさ。平凡を演じて過ごすさ」
学校内で変に目立つと行動が制限される可能性が大きくなる。逆に弱過ぎても視線を集めることになる気がする、なら真ん中。平凡を装って風景と同化してしまえば問題解決に大きく前進できるだろう。
「よし、話は以上だ! 転入試験は一週間後、制服は既に宿舎の方に届けておいてるから安心してくれ! 久しぶりに2人で飯食いに行くか!」
手を掴まれ引き摺られるように連れていかれる。
え? セリバールさん!? 試験まで一週間しかないんですよ!
座学勉強しないと依頼の前に落ちる可能性が出てくるんですけど!?
片隅知識↓今後出てくる機会が遠いので
【ギルド】とは冒険者組合の事を指す
ギルドに在籍する冒険者は魔物と率先的に交戦する、他職に比べて極めて危険度の高い職である。
討伐依頼や採取依頼の他に調査依頼など古代遺跡と呼ばれるものの調査などもあり一攫千金を狙う者も多い
他には領主などが直接依頼する指名依頼に
国が依頼する緊急依頼がギルドに存在する