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役立たずスキルに人生を注ぎ込み25年、今さら最強の冒険譚  作者: しゅうきち
黒鋼の章

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検証結果


 ソリを引っ張りながら駆け寄ってきたムーの頭を撫でたトールは、唇の端から小さく息を漏らした。

 今回は三度目で、<成長阻害>を引き当てられたようだ。


 次いで自分の技能樹を覗き込んだトールは、<成長促進>が残ったままであることを確認して静かに頷いた。

 どうやら、退屈な確認作業は何とか終わったようである。

 実は何度も往復していたのは、特性と呪詛の関係を調べるためであった。


 きっかけは、七層で受けた侵入呪詛<闘気半減>だった。

 これは具体的には、このような呪いだ。


 <闘気半減>――保有者の闘気の上限を一時的に半減する。

 発動:自動/効果:小/範囲:自身。


 闘気を操れないトールには全く影響がなかった呪縛だが、剣士であるストラッチアには厳しい枷だ。

 だが帰路で背負った折に確認した友人の技能樹の根元には、不思議なことにこの呪詛は存在してなかった。

 代わりに目立つように実っていたのは、<上限突破>の根源特性である。


 そこから考えられるのは、より効果の強い特性ならば呪詛は打ち消されてしまうのではという仮定だ。

 これはユーリルの<成長促進>も同様に<成長阻害>を跳ね除けたので、正しかったと証明された。


 ただこの問題は、そう簡単ではない。

 なぜか侵入の度にトールの<魔力快調>や、<抵抗強化>までも上書きされてしまったのだ。

 もっともこちらは外へ出ると、呪詛が消えて元通りにはなったが。

 これは効果の程度が同じであれば、呪詛のほうが強いのではと思えたが、そこで気になったのは小という表記の部分である。


 具体的な数字は出ていないが、トールはこれを二であると仮定した。

 根拠は<回数制限>を受けた際の使用可能回数の減り方だ。

 さらに推量であるが効果が中なら五、大なら九ではないかと。

 こちらはユーリルが<成長阻害>を受けていた際も少しだけならスキルポイントが入ってきた点と、反転して効果が中になったら五倍の獲得量になった点からだ。

 

 現状、ソラの<反転>は五割、つまり数値を半分だけひっくり返すことができる。

 トールの<回数制限>が<回数増加>になった時、回数が一しか増えなかったのはそのためだ。


 この小さな差異によって、呪詛が特性を上書きしているのではないか。

 そう結論に至ったトールは、まず<反転>を五段階へ上げてみようと考えたのだ。


 今までに溜め込んだソラのスキルポイントは一万四千ほどなので、あと千あれば目的に達する。

 レベル4までに数値に変化はなかったので、確実とまでは言えないが二段型の成長であるとの予想はあった。

 

 しかしながら千点というのは、やすやすと稼げる数字ではない。

 そこでまずは<成長促進>をつけて、蟻どもでさっくり稼ぐ算段を立てたというわけだ。

 二倍の半分なら一倍かと思われたが、どうやら五割増になったらしく予定通りに達成できた。

 そして期待していた成果は――。


 <反転>――対象の攻撃・効果を反転させる。

 レベル5/使用可能回数:一時間八回/発動:瞬/効果:八割/範囲:認識。

  

 これを、あえて残しておいたトールの<成長阻害>へ使ってもらう。

 表示は同じく効果は小であるが、計算通りなら二倍になっているはずである。

 そして今、上書きされなかったことを確認して、ようやく安堵の息を漏らしたというわけだ。


「というわけだ。分かってくれたか?」

「……………………はい、驚きました」


 長々としたトールの説明をじっくりと聞いていたラムメルラは、夢から覚めたような顔でコクリと頷いた。

 特性や呪詛が詳しく表記されることや、ソラの<反転>でそれを変えられるというのは、施療神殿に長く勤めるラムメルラでも聞いたことがない話であった。

 以前であれば、眉唾物と一笑に付していたであろう。


 しかし二層に下りて、<魔力快調>とやらの特性を体験した後ではそうもいかない。

 まるで水の底でも息ができるかの如く、魔力が次々と湧いてくるのだ。

 目の前の人物が語る言葉が真実であると、ラムメルラは強く確信した。

 話を続けようとした少女だが、強張っていた背中から力が抜けたせいで、真っ先に脳裏に浮かんだ言葉を口にしてしまう。


「ではリコリは……。姉は……?」

「戻ったら、ちゃんと解呪するよ。それで元通り、いやそれ以上になれるな」

「あ、あ……ありがとうございます……」


 崩れ落ちそうなったラムメルラを、素早く手を伸ばして抱きとめるトール。

 密かに張り詰めていた糸の一本が切れたのだろう。

 少女はそのまますがりつくと、トールの胸に顔を埋めて肩を震わせた。


 一見、親切に思えるが、トールがここまで能力を明かして協力するのは、実は打算的な意味合いもある。

 以前に渡されたラムメルラの紹介状だが、そこには彼女の地位を示す印章が記されていた。

 幹のきざはしの最上位。

 ほぼ梢に近い位置であり、施療神殿の中でもトップクラスの発言力を誇る立場だ。


 そこで取引を持ちかけたというわけである。

 ラムメルラの姉の呪いを解く代わりに、トールの<復元>がおおやけになった場合、必ず何らかの対応をしてくるであろう施療神殿の動きを押さえてくれるようにと。

 今回、彼女を同行させたのは、その呪詛を本当に取り除けるのか証明するためでもあった。


「ああ、いいなぁー、わたしもー」 

「ムーも、ムーも!」

「では、我も」

「でしたら、私もお邪魔しますね」


 なぜかラムメルラを囲んで、全員で抱きしめ合う構図となった一行であった。

 

「じゃあ、この層も殲滅するぞ。稼げる時に稼いでおきたいしな」


 琥珀蟻のポイントは二十。

 群れは六匹から八匹単位のため、倒すと今なら四十点超えの獲得だ。

 しかも、たまに嬉しい当たりが混じっている。


「トールさん、奥のが乳石蟻です」


 <凍晶>により動きが鈍くなったモンスターどもの中で、殻にヒビが入った一匹を目ざとく見つけたユーリルが警告を発する。

 乳石蟻は変彩効果を行うため外殻に水分を多量に含む必要があるのだが、それで凍結膨張を起こしやすいのだ。

 前回は即座に倒していた要注意のこの蟻だが、今回は歓迎すべき相手であった。


 なぜなら、どんどん獲物を呼び寄せてくれるからだ。

 仲間を死地へと呼び込むモンスターのおかげで、探索の時間が大幅に短縮される結果となった。

 倒しきったあとはムーが<電探>を使い、残っていないか確認してから移動を繰り返す。


「しかし、こんな見分け方もあるのですね」


 的確に乳石蟻だけをあぶり出すユーリルの魔技に、ラムメルラは感心したように声を上げた。

 そこへなぜか、顎を持ち上げたムーがしゃしゃり出る。


「ムーにもわかるぞ。これは食べられません!」

「いや、一目瞭然でしょ」


 鉱石に覆われた蟻どもは、食用できそうな部分は見当たらない。

 その点はソラとムーにはかなり不満であったようだ。


 がっかり顔の子どもは、当てつけのように乳石蟻の宝玉だけもぎ取った。

 琥珀蟻のは元が安いのもあるが、出回りすぎると余計に買い取り価格が下がるからだ。


 ちなみに持ち込む場所は、公認の買い取り所ではなく交易神殿である。

 これは冒険者局が扱うのは、あくまでも街を脅かす近隣のモンスターだけであり、遠く離れた場所は管轄外という決まりだからだ。

 そのため討伐報酬も出ない。

 この辺りは街の防衛と瘴地の解放が目的であるのと、冒険者を助けるため一定の買取価格を保証しているのを考慮すると仕方がないが。


 二層からは大型の蟻がちらほらと増えだしたが、特に苦戦する場面もなく順調に殲滅し尽くす。

 そこで時刻も遅くなったので、三層への傾斜路が見える位置で寝袋を広げ夕食を取ることにした。


 岩トカゲの肉団子入りスープを飲んだラムメルラは、意外な美味しさに絶句していた。

 ストラッチアは無言でおかわりを要求した。


 この日、仕留めた琥珀蟻の数は五百匹以上。

 乳石蟻も四十匹を超える結果となった。

 獲得したスキルポイントは、あっさり五千を超えた。



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【コミカライズついに160万部!!】
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― 新着の感想 ―
しかもこれ1日目の1番浅い層ですからね… 丹精込めて、層降りる度に阻害+厄介モンス大量+1人は阻害の永続化って嫌過ぎるダンジョンがお宝の山みたいになって、昏穴の担当者(居たら)は壁殴って悔しがってそ…
[良い点] ………………え?1人あたり5000? ボーナスステージにも程がある……
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