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2-地下格闘技

――数日前

 俺は所属団体RFJリアル・ファイディング・ジャパンの社長に呼び出され、事務所に顔を出していた。

 事務所とは言っても所詮インディー格闘技団体なので、古い雑居ビルの一室を借りた小さなものだ。

 社員も所属選手も少ない小世帯なので、これでも十分ではある。悲しい事だが……。

 まぁ、社名だけはご大層であるがな。



「御山、よく来てくれた」


 事務所で俺を出迎えたのは、この団体のマッチメーカーを務める長谷川だ。

 この人物は、もともと俺が所属していたメジャー団体の社員であったが、団体内の内紛で退社せざるを得なくなったという。そして、知人の縁を頼ってこの団体でマッチメーカーを勤めることになったという。

 俺もまた、彼に拾われこの団体に入ることとなったのだ。つまりは恩人である。

 それにしても……どうも彼の顔色がさえない。少々嫌な予感がするな。



 そして、まずは次回の興行の予定を聞かされた。

 俺たちの団体が行う興行は、いわゆる地下格闘技というヤツだ。

 格闘家やプロレスラーだけでなく、いわゆる喧嘩屋などもリングに上がる。

 興行化したストリートファイトと言った方が良いかもしれない。

 まぁ、あまり誇れた仕事じゃないな。

 で、今回の興行は、どうやら幾つかの他団体との合同で行うらしいのだが……

 そのマッチメークに一つ、問題があった。


「デビュー戦の相手、ですか?」

「ああ」


 俺の言葉に、長谷川が頷いた。

 そうして彼は、重い口を開く。



「……という事だ。できれば、この役目を頼みたい」

「松原雅隆、ね。どんな相手です? セミファイナルでのデビュー戦をさせるほどの選手ですか……」


 俺は腕を組むと、机上の書類を睨んだ。

 一応この団体では、俺はエース格扱いだ。メジャー団体出身というのは、一応それなりのステイタスになるらしい。

 それをセミファイナルでグリーンボーイに当てるとはね。しかも、カマセ扱いときた。

 その程度しか評価されていないのか、それとも……


「ああ、実はな……」


 長谷川の眉間にシワが寄る。


「太平プロモーションの跡取りなんだよ」

「……これまた」


 聞いた事がある名だと思ったら。

 太平プロモーション。

 比較的小規模な芸能事務所だ。しかしながら、そこに所属するタレントやスポーツ選手達は目下売り出し中らしく、幾つかのバラエティやドラマ、TVCMなどでも見かけることが多い。

 そしてその実態は……関東地方に根拠を置く暴力団の一つ、洪天会のフロント企業であり、そこの会長が太平プロモーションの社長を務めていた。

 そこの跡取り、という事はすなわち、洪天会の跡取りという事になるのだろう。

 この洪天会は、規模は小さいながらも闇社会とのつながりが強く、潤沢な資金源を持っている。

 その資金を太平プロモーションを通じて芸能や格闘技などに投じている訳であるが、俺が属する事務所もそうした資金援助を受けているとの事だ。

「既に何人も相手に逃げられているそうだ。だから、何としてでもお前に受けてもらいたい」


 それもそうだ。その素行の悪さは、業界中に知れ渡っている。下手な試合運びをしたら、自分の首――下手すれば命も――が危ない。

 それにしても、どういう風の吹き回しなんだか。

 確かに格闘技関連のジムに出入りしているという話は聞いた事があるが、本格的な訓練を受けてはいまい。

 そもそもボンボンなんだから、こんなコトに首を突っ込まずとも十分に金は手に入るだろう。まぁ大方、周囲に囃し立てられて勘違いしちまったってトコか? ヘンなプライドは高そうだったしな。

 まぁそんな厄介な相手との対戦を受ける輩なんてそうは居まい。ココは俺が生贄になるしかないか。


「……わかりました」


 俺は一つため息をつくと肯首した。ここの社長や長谷川には拾ってもらった恩があるので、受けざるをえまい。


「スマンな。助かった」


 そんな俺を見、長谷川はほっとした表情を浮かべた。

 一方の俺はと言えば、暗澹(あんたん)たる気持ちを抱いて事務所を後にした訳ではあるが……。

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