表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

1-プロローグ

「殺せぇぇ〜!」

「そこだ! 折れぇ!」


 薄暗く、血と汗、酒と煙草の匂いが漂うこの場所に、聞くに堪えない罵声が飛び交う。

 ここは、都下にある場末のクラブ。そして、そこに設営された粗末なリングの上。

 それが、今の俺、御山敬吾(みやま・けいご)の居場所だ。

 地下格闘技、といえば聞こえはいいが、実際はただのゴロツキのケンカだ。それを見世物にして、金を取る。

 そんなチンケな商売だ。

 そしてそんな商売をやってる、しょっぱい俺自身。

 ある意味ふさわしい状況ってってコトか。

 心中で苦笑を浮かべる。

 俺の目の前にいるのは、刺青まみれのグリーンボーイ(駆け出しレスラー)。これは、そのデビュー戦だ。



「オラァ!」


 対戦相手(ヤツ)が放つ蹴り。

 残念ながら、スピードもパワーも今ひとつ。一見型は綺麗だが、形だけをうまく真似た様な蹴りだ。筋肉や関節同士の連動が上手く出来ていない為に運動エネルギーが逃げてしまい、蹴り足に力強さがない。

 俺はその蹴りを、出来る限り大きな音を立てる様にガードしつつも、わざと大きくよろめいてみせる。その度に上がる歓声。

 それ(ワーク)を繰り返すこと数回。

 さて、今度は俺の番だ。

 相手の蹴りを軽くいなすと、派手な上段回し蹴りを放ってやる。

 無論、ガードや回避できる程度の威力でな。

 しかし……


「んげっ⁉︎」


 ヤツはかわそうとし……まともに側頭部に蹴りを受けてしまった。

 脳を揺さぶられたのか、がくりと膝をつく。

 観客がざわめいた。


「う……あ……?」


 ヤツは呆然と俺を見ている。

 チッ……

 アクシデントだ。一応、事前に知らされていた筋書き(ブック)通りに進めてきたが、まさか中盤にもいかない所でこうなるとはな……

 俺はレフェリーに視線をやる。

 レフェリーもまた呆然として俺を見るが、すぐに慌ててカウントを開始した。

 ……やれやれ。先が思いやられるな。

 俺はこの仕事を受けてしまったことを、早くも後悔し始めた。

・人物、用語など

御山敬吾

 元メジャー団体所属のプロレスラー。メキシコ修行中に起きた団体のトラブルが元でプロレスラーとしての夢を断たれ、地下格闘技団体での戦いで糊口をしのぐ生活を送っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ