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プロローグ

 気が付くと彼は見知らぬ世界にいた。

 ――ここはどこだ?

 村のようだが、現代日本の農村部の風景ではない事がわかる。

 ――外国だろうか?

 動きづらさを感じ、自分の体を確認する。

 腰には剣。左腕には盾。体には鎧を着用していた。

 彼が状況をつかめずにおろおろしていると、ボロい服に杖をついた老人が様子を伺いながらびくびくと近づいてくる。そしてハッと目を見開くとよたよたと駆け寄ってきて膝を折った。


 「……もっ、もしや。貴方様は伝説の勇者様ではありませんか?」

 しわがれた声で放たれた言葉は彼の理解を超えたものだったが……。

 ドクンッ!……。

 急に胸を締め付けるような痛みが走る。

 ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!……。

 激しい動悸に思わず膝をつく。

 ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!……。

 左手を地面につきがら右手で胸を掻きむしる。

 ――苦しい……。

 だがそれと同時に得体の知れない知識がどこからか流れ込んでくる感じがした。

 魂の記憶。彼の魂に刻み込まれた記憶が彼の本能を揺り動かす。 


 ――魔王を……倒さなくては!

 彼は立ち上がると全力で走りだした。

 するとたまたま村にいた冒険者パーティーが後から追いかけてくる。

 「我々もお伴させてください!」


 勇者アキト。

 闘士ホースト。

 狩人ロビン。

 剣聖コジロウ。

 賢者マーリーン。


 彼らの旅が、今始まった。



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