08 第一王子視点
第三王子のルーシアが成人したこともあり周りが少しうるさくなってきた。
勿論、王位継承についてだが、それに付随して結婚に関してだ。
俺は女が嫌いだ。
触られると鳥肌が立つ。
近くに立たれると危機感を感じる。
だから結婚なんて一生無理だ。
だが、王族の義務として結婚しないという訳にはいかない。
カリナは、とても不思議な存在だ。
カリナには触れることも出きるし、近くに立たれても危機感を感じるどころか、安心すらする。
それはカリナがロボットだから、というのは分かっているが、この気持ちが特別なもののような気がしてならない。
「もし、俺が結婚すると言ったら、お前はどうする?」
と聞いたことがある。
ちょうど、貴族連中が俺に見合いの話を山ほど運んで来た頃だ。
純粋に気になったのだ。
俺が結婚したら、カリナはどうするのか。
カリナは
「私は…ユーリア様にお許し頂けるのならば、ユーリア様にお仕えしたいと思っております」
そう答えた。
その時、どんなに満ち足りた気持ちになったか、カリナには分からないだろう。
しかし、その翌日、カリナは言葉を撤回しに来た。
俺の結婚相手がどうの、と言って、俺から離れて行こうとする。
しまいには、
「ハリウスのもとに戻りたいのか?」
と聞けば、頷く。
腹が立った。
一種の所有欲なのだと思った。
それ以上は冷静に話せそうもなくて、カリナを帰した。
それからだ。
カリナと離れるのが惜しいと強く思うようになったのは。
独占欲だと思ったこの感情は、少しだけ違うのだと、始めから分かっていた。
カリナに触れてみたいと思った。
カリナなら、嫌悪感を抱かず、触れることが出来ると思った。
手に触れて、もっと触れたいと思った。
髪に触れて、綺麗だと思った。
抱きしめて、心地よい、気持ちよいと思った。
もっと一緒にいたいと思ったから、時間を調節した。
でも、カリナの気持ちが分からない。
そもそも、カリナに心というものがあるのかすら分からない。
しかし、カリナは俺に触れられても嫌がったりしない。
むしろ、抱きついて来たこともあった。
でも、カリナは泣いたのだ。
たまに、膝枕をして貰うことがあった。
カリナがこっそりと俺の髪を撫でていたことは知っていた。
でも心地よい行為だったので、気付かないふりをしていた。
その日は、カリナがルーシアに連れ回されていたらしく、俺の部屋に来るのが遅かった。
そのことについて、言及した後のことだった。
俺の膝枕をしている上でカリナは泣いていたのだ。
その泣き顔が愛おしいと思った。
それと同時に、その原因を知りたくなった。
聞いても、誤魔化された。
もやもやとして、鎖骨がズキズキするような、痛みを感じた。
この痛みの意味は分からない。
だが、俺はカリナと一緒にいたい。
ロボットで子供が作れなくても、子供はルーシアが作ればいい。
俺はお前を近くに置きたいのだ。
お前はロボットだから心から拒絶することは出来ないのだろう?
本当の人間ではないのだから。
そんな馬鹿な考えるを改めさせられる、事件がそれからまもなくして起こった。