始まり
当直と言う事で、作業着に着替えて担当の牛舎に向かい、既に来ていた三年生の先輩と一年生の後輩に挨拶して、先ずは牛舎の清掃。
牛の餌は基本、三年生が行うので、僕ら二年生と一年生は牛舎の清掃が主な仕事だ。
AM8:00までに済ませ制服に着替えて、自分の教室に。
久しぶりの教室に入ろうとドアを開けると、ドアの上に引っ掛けられていた黒板消しが落下してくる。
素早く教室を見回すと、ニヤニヤしながら此方を見てにやけている、馬鹿を発見。
落ちてくる黒板消しの持ち手部分を素早く叩き、にやけている馬鹿に打ち込む。
次の瞬間には、にやけていた馬鹿に直撃し、『ボフ』と言う音と共にチョークの粉が舞い散る。
「なにしやがる‼︎真田⁈」
男子生徒は自分よりふた周りはがっしりとした体付きで、顔も高校生とは思えないぐらい厳つい顔をしており、髭でものばせば、何処かの危ない人に見える。
「あ〜当たったの?ごめんね。落ちてきたから払ったんだけどね、大丈夫?佐藤君?」
「てめぇ、真田の癖に生意気なんだよ‼︎」
といきなり切れて襲い掛かってきた。
其れでも向こうの世界の冒険者らに比べれば欠伸が出る程遅く、佐藤とすれ違うようにぎりぎりに躱し、胸ポケットに入れていたボールペンの芯を出した状態で顎の下の柔らかい所に押し当て
「死にたいの?」
と少し威圧しつつ制圧する。
丁度その時に担任が教室に入って来たので、見えないようにボールペンを胸ポケットにしまい、佐藤の肩をポンポンと叩き席に戻る。
が佐藤は未だ蛇に睨まれた蛙の如く動かず、担任に声をかけられ漸く席についた。
此方に戻って起きた問題事は其れぐらいで、事件が起きるまでの一ヶ月は平和だった。
世界の崩壊が始まる、あのパニックが起きるまでは。