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魔法使いマーリン

(ここどこ?)


桜夜はフカフカなベッドの上でで目を覚ました。窓の外はまだ太陽が出ていないが徐々に空るくなり始めている。見知らぬ天井が視界に入り、一瞬混乱する。


しかし、突然思い出したようにガバッ!と身体を起こした。


(思い出した。森の中を彷徨ってたら家を見つけて・・・マーリンという人が住んでいて・・・怪我を治してもらって・・・お風呂に入って・・・とっても美味しい料理をご馳走になって・・・その先の記憶が無い)


桜夜は今居る部屋を見回してみる。天井の形から察すると屋根裏部屋であろうか?広さは8畳くらいでベッドの他には、壁際に読めない言語で書かれている本が並べられている本棚、木材で作られた学習机のような物と椅子、椅子の上には昨日脱衣所で脱ぎ散らかしたはずの制服たちが綺麗に畳まれている。マーリンが洗ってくれたのであろう。


1階に行くには梯子を使うらしく音をたてないように静かに降りていく。


(わたし何時この梯子上ったんだろう?)


思い出そうとしてみるがやはり夕食後の記憶が無い・・・



梯子を降りると昨日ご飯を食べたリビングであった。見回しているとあるものが目に留まる。木材が完全に灰になった暖炉の前に巨大な蓑虫がころ転がっていた。・・・よく見ると毛布に包まって寝息をたてているマーリンであった。



その姿を見たとき桜夜は後悔した。本当に今更であるが後悔した・・・。


昨日の自分の行動を・・・


確かに昨日の桜夜は迷子になり慣れない土地で精神的にも体力的にも限界であったし、マーリンの家を見つけたときは土下座して頼み込んで電話を借り、あわよくば1晩だけでも泊めてもらうつもりであった。


しかし、予想をはるかに超え見ず知らずの桜夜に良くしてくれて、マーリンにエスコートされるまま快適に過ごしてしまっていた。しかも最初に英会話(?)で自己紹介してから一言もまともに桜夜は言葉を発していない。感謝の言葉など皆無であった。あまつさえマーリンの寝室を乗っ取り、本人は固い床の上で蓑虫になっている・・・。


桜夜は自身が淑女とは口が裂けても言うことはできないが、花の女子高生で一応年頃の娘である。あまりに礼儀知らずで図々しい自分の行いに後悔だけが押し寄せてくる。


何もせずに居られない桜夜であったが、物音をたてるとマーリンが起きてしまうので、リビングのソファーに腰掛け朝が来るまでジーッと待つのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン


ジューーーーーーーーー


周りが騒がしくなり桜夜は目を開ける。窓から入る朝日が1日の始まりを告げていた。ソファーに座っている桜夜の身体にはいつの間にか毛布が掛けられていた。


(しまった!またやってしまった!)


桜夜はソファーから勢いよく立ち上がると毛布を畳み、音が聞こえる場所に真っ直ぐ向かう。


(まず昨日のこと謝って、それから手伝えるあればやらせてもらおう!・・・大したことはできないけど誠意は行動で伝えなくては!)


桜夜はそんなことを考えながら音がするリビングから続く隣の部屋に入っていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


部屋の中は厨房であった。今流行りのシステムキッチン・・・などでは無く、昔西洋で使われていたような薪を燃やした熱で調理するコンロであった。


そんな前時代的な物を使っていることも珍しいのであるが、それを遥かに凌駕する景色が広がっていた・・・




なんと調理器具や食材が自分の意思を持っているかのように自在に動き回っているのである。


包丁はリズミカルな音をたて野菜を刻み、フライパンは鮮やかな動きでフワフワのオムレツを引っくり返している。お鍋はスープをコトコト煮込んでおり、その上には調味料の瓶たちが身体を傾けて味を調えていた。


そんな調理器具の中心にいるのは褐色の肌を持つ美丈夫。両手をタクトを振るかのように動かしている。長年の経験を積んでいるからなのか動きには一切の無駄が無く洗練されているように見えた。


そんな異常な光景をしばらく呆然と見ていた桜夜であったが、我に返ると思わず中心にいる美丈夫に声をかける。


「マーリンさん!これ何ですか?」


美丈夫は声をかけられると手の動きを止め、桜夜の方に身体を向け口を開く。


「サクヤ・クドウおはようございます。これはですね今日の朝食です。オムレツにオニオンスープ・・・あと昨日と同じですがサラダですね。ドレッシングは別のにしますけども。それから・・・」


とマーリンは笑顔で朝食の内容を説明してくる。丸っきり的外れな答えを返してくるマーリンに対して桜夜は再度・・・


「いや朝食のことじゃなくて、何で包丁やフライパンが勝手に動いているのですか!?」


興奮した様子の桜夜の質問を聞いたマーリンはしばらくポカンとしていたが、しだいに口を開く





「何って・・・魔法ですよ?」



マーリンは当然のことのように答え、桜夜はしばらくその言葉の意味を理解することができなかった。



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