美丈夫
森の中の小さな家を訪れた桜夜。開いた扉の先には一人の男性が立っていた。
歳は落ち着いた雰囲気から20代後半であろうか。身長が高く180センチは優に超えていると思われる。艶やかな褐色の肌を持ち、服の上からでも中にある筋肉質でしなやかな肉体を想像できる。髪は雪のように白く、瞳はサファイアのような深い青色、髪と同色の短い顎鬚を蓄えているが厭らしくなく威厳すら感じる。整った顔立ちであるが丹精というよりも優しげな印象を受ける。まさに美丈夫という言葉が当てはまる人物であると思った桜夜であったが一つ気になる点があった・・・・・
耳が自分が知っている人間よりも2倍近く長く、しかも尖っているのである。
桜夜がボーと観察していると美丈夫が口を開いた
「”#$%&”#$%&」
(んっ?今何て言った?)
聞き取れなかった桜夜はもう1回と美丈夫に人差し指を立てる。それを見た美丈夫は、
「”#$%&”#$%&」
再度同じ内容と思われる言葉を声に出した。桜夜にはやはり何を言っているか分からない・・・
(外人さんだもんね・・・日本語話せないよね。どうしよう・・・・・いや相手は国籍は違えど同じ心を持った人間。英語は苦手だけど私の一生懸命な気持ちはきっと伝わる!大切なのはハート、そうハートなのよ!)
意を決して再び美丈夫に顔を向ける。美丈夫はいきなり勢いをつけて顔をあげた桜夜に少しビクッとしていた。
「ハローミスター、マイネームイズ サクヤ・クドウ、ワタシマイゴ」
仮にも来年で高等学校の最高学年になる桜夜であるが、口からでたのは流暢のカケラもない英会話と言えるかも怪しい言葉であった。桜夜自身も(これは無いわ~、ハートがいくらあっても足りないわ~・・・)と確実に失敗したと思っていた。
桜夜の英語?を聴いた美丈夫は驚いた表情でしばらく固まっていたが、我に帰ると楽しそうに笑みを浮かべ再び口を開いた。すると・・・
「こんばんはサクヤ・クドウ私はこの森で暮らしているマーリンと申します。相当お疲れのご様子ですし、立ち話も難ですからどうぞ中へお入りください。」
彼はそう言葉にすると桜夜をエスコートするようにサッと横に来ると手の仕草で中に入るように促す。
(えっ日本語?なんで?)
そんな疑問を抱きつつも疲労も限界であった桜夜は、美丈夫改めマーリンのご好意に甘え家の中へと進んでいった。
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下はマーリンの挿絵です。
(改)4月21日 絵を描きなおしました。
http://11283.mitemin.net/i107070/