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森の中の小さなお家

「そうだった。ワンちゃん抱いたら光に包まれて、気づいたらここに・・・」


九堂桜夜は気づいたら森の中にいた。なぜ自分がここにいるのかさっぱり分からない。

しかもさっきまで夜の道をチャリで疾走していたのに既に太陽は頭上で光と熱を放っている。


(いつの間にか時間が経ってて、次の日になったのかな・・・・・だったらヤバイ!お父さんたち絶対心配してる!)


一夜明けて戻っていないとなると捜索願も出ている可能性がある。桜夜は慌ててエナメルバッグの中からスマートフォンを取り出し、連絡を取ろうとしたが・・・


(圏外!?)


画面を見てみるとアンテナどころか漢字で圏外と堂々と表示されていた。そして同じく表示されている現在の時刻を見てみると・・・


(23時!?日付も今日のままだし!こんな短期間の間に電波が届かないような場所に移動したって事?でもそれだと何で日が出ているの!?いや落ち着けわたし・・・ヒーヒーフ~~~)


桜夜は平常心を保つためラマーズ法により深呼吸を行い、現在の状況から自分におきていることを推測することにした。


1.スマートフォンが壊れており、画面の表示が誤っている。日が出ているのは時間が経過したからで、実は家の近くにいる。

2.スマートフォンの表示は間違いが無く、この時間でも日が出ているほど時差があるところに何らかの方法を用いて飛ばされた。

3.夢である。


(3であって欲しいけど現実感があるし「痛っ!」う~~~痛みもあるし。2は物理的にあり得ないし・・・やっぱり1だよね!もし家から離れたところでも人がいるところを見つけてバスでも電車でも使って帰れば良いよね!お金もあるし)


と自分を納得させ意を決して立ち上がる。視線が高くなり今まで草で見えなかった森の奥の方まで見渡すことが出来た。そこには


(川がある。下流に行けば町に出られるかも!)


桜夜はそう考えにいたると川に沿って森の中を歩みだした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


森を歩き始めてから約8時間、桜夜の体力は限界をむかえていた。太陽は完全に沈み空から光は奪われ、闇が森を支配しつつある。隣に流れる川は下流に行くにしたがい段々幅が広くなっていき、今では上流の3倍の幅となっている。距離にすると50メートル程であろうか。


(疲れた・・・まだ何も見えてこない。方向を間違ったかな?でも今更引き返せないし・・・こんな弱気じゃ駄目!いつもマネージャーとして皆に言ってるじゃない!今こそその言葉の真価が試されるときだわ)


「ネバーギブア~~プッ!」


桜夜は叫んで自分に渇を入れ、ペースをあげ黙々と歩いていく。そのとき森周辺にいた小動物は2足歩行の謎の生物の叫び声を聴き、震え上がっていたというのは余談である。



更に1時間歩いていると川に変化があった。


(あれは、橋!!!)


やっと人工物を見つけた桜夜は興奮し橋に向かって走ろうとするが、周りからは足を引きずりながら早く歩こうとしているようにしか見えなかった。


近くで見た幅50メートルもの川を跨ぐ橋はレンガ造りの立派なもので、人が何人乗っても大丈夫そうであった。橋からは舗装はされていないが地面が剥き出しの道がずっと続いていた。


(この道の先に人が居るのは間違いない。橋を渡っていくべきか、また森の中に続いている道を行くべきか・・・ん!?)


桜夜は胸が高なった。森のほうに続く道の先を見てみると木々の間からわずかに明かりが漏れているではないか!桜夜は思わず明かりに向かって走り出した。しかし、今はさっきのように足を引きずっていない。火事場の馬鹿力と言えば良いのか無理だと思っていても、いざというとき人間はとんでもない力を発揮するものである。明かりの元に辿り着くまでに2回も盛大に転んだ。しかも、2回目は石に躓き顔面スライディング・・・鼻から多量出血しているが桜夜は感覚が無くなっているのか出血を気にせずに立ち上がると明かりまでの残り100メートル程の距離をラストスパートで翔け抜けた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



明かりの近くに来てみるとそこには家があった。


森の中にちょこんと佇む小さな家。


家というよりも大きさ的には小屋に近かったが、西洋風のデザインがとても可愛らしく〇ルバニアファミリーの出てくる家を連想した。


家の窓から漏れる温かな明かり、煙突から辺り一面に広がる美味しそうな匂い、桜夜の実家とは全然違うのだが何故か懐かしい気持ちで心が一杯になる。



「はーー、はーー、はーー、んっ、はー、はー、はー・・・」


玄関の前に立ち桜夜は息を落ち着かせると、扉をノックした



コン、コン、コン、



返事は無い



コン、コン、コン、



「”#$%&’”#$%&!」


何を話したか分からないが人の声が反応し、向こう側から段々扉に近づく足音が聞こえる。



ガチャッ


鍵をはずしたのであろう音が聞こえ扉がゆっくりと開いていく。



開いた扉の先には一人の男が立っていた。男の肌は褐色で耳は長く尖っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


下に「森の中の小さな家」の挿絵あります。



http://11283.mitemin.net/i105457/

挿絵(By みてみん)

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