プロローグ
ヒュー・・・ドサッ！ 鈍い音と共に身体に衝撃が走る
「痛っつ～～・・・」
痛みは実際それ程でもなかったのであるが、突然の衝撃に身体が驚き思わず声をあげてしまう。
しばらく蹲った後、重たい身体を何とか起こし辺りを見回した。
眼に飛び込んできたのは緑、緑、緑、緑、緑、緑、緑・・・・・
辺り一面に樹木と草が生い茂っており、葉は太陽の光を遮っていた。しかし暗いわけでは無く、葉の間から漏れ出す陽光は自然の豊かさと美しさを引き立てていた。時折吹き抜ける風は頬をくすぐり、耳に届く小鳥の囀りは心地よい。
「わたし、何でこんなところに！？」
多少混乱しつつ事態の原因を考えてみる。
彼女の名前は九堂桜夜、現在17歳の現役ＪＫである。
身長１６０センチ、髪は純粋な黒ではなく若干茶色が入っており、長いため一纏めにして腰の近くまで垂らしている（ちなみに地毛である）。肌は白いが赤みが差していて健康的見える。体系はスレンダーで凹凸は皆無である。本人曰く着痩せするタイプらしい。
成績は赤点をまぬげれる程度で、現在専ら熱中しているのが部活である。
中学生の時は陸上部に所属しており、部員が男子含めて５人しかおらず公式の大会には出ていなかったものの、放課後になるとジャージに着替え皆でランニングすることが日課であった。部活というよりも同好会みたいなもので、桜夜は走ることが特別好きというわけではなかったが、気心の知れた仲間と過ごす時間は楽しかった。
そんな経緯もあり高校でも陸上部に入って今度は公式の大会に出てみよう！
・・・・・と考えていたのであるが、何を血迷ったのか彼女は現在運動部全般の兼任マネージャーという立ち位置に立っている。
というのも彼女の父と母は自営業で整骨院・整体院をやっており、父と母の仕事を見て育った桜夜も一応その技術を身に着けている。父と母は腕が良いらしく、料金もリーズナブルなことから近隣の学校の生徒からプロのスポーツ選手まで利用者の層が幅広い。
高校に入学した際、彼女の顔を知っていた常連である部活の顧問に「是非！！！」と懇願され断りきれず現在に至る。当初は運動部全般の兼任マネージャーということを不振に思う生徒、教員職員も多かった。しかし、彼女がマネージャーをはじめてからの２年間、部活動で怪我や故障を抱える生徒は激減し、大会成績も上昇、現在は運動部生徒・顧問に絶大な信頼を寄せられている。
（えっと今日は午前から学校に行って・・・）
今日は１個上の運動部３年生が引退するため、３年生を送る会を行った。先輩たち皆が泣きながら桜夜に感謝の言葉を贈る姿を見て若干引きつつ、各部活の新部長の発表・決意表明、桜夜から各部活の今後の課題と練習メニューの提案がなされ解散となった。
その後、仲の良い先輩たちに誘われて、〇ウンドワンに行きプリクラ、ボーリング、カラオケと梯子して気づけば22時近くになっていて私たちは慌てて解散、先輩たちが送ってくれると言ったが家が正反対だし送った帰りに警察に職質かけられる可能性もある。受験・就職を控えている先輩に迷惑はかけたくないと思い丁重にお断りした。
（何かすごく残念そうな顔してたけどなんだったんだろう？）
その後チャリを全速力で漕いでたら視界の端に何か生き物みたいなものが移り、気になって通り過ぎた数メートルを戻ってみると、ダンボールに入った可愛いワンちゃんを発見した。く～ん、く～ん鳴きながら潤んだ瞳で桜夜を見つめてくる。
（可愛い～～捨て犬・・・だよね。誰だよこんな可愛い～子を置き去りにした飼い主は！家は犬好きで既に３匹いるし、お父さんを見方に引き入れてお母さんに頼み込めば一匹くらい増えても大丈夫だよね！？）
勝手に飼えるだろうと脳内決断し、「わたしのお家行かない？」と声をかけると言われたことが分かったのか嬉しそうに千切れんばかりに尻尾を振った。桜夜もその様子を見て嬉しくなり、ワンちゃんを慣れた手つきで抱え上げ
「今日から私たちは家族だよ・・・」
と言った瞬間ワンちゃんの身体が淡く光り始めた、しかもその光はどんどん強くなり桜夜を飲み込んでいく
「えっ！？何！？」
という言葉を残し桜夜はワンちゃんと共に光に飲み込まれ・・・消えた。
その場にあるのは静寂な夜とチャリだけであった。
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下に「九堂 桜夜」の挿絵があります。苦手な方いたらすみません。
http://11283.mitemin.net/i105437/
