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偽物の恋

作者: 羽月

勢いに任せて書いた作品です。

お見苦しい点が多々あると思いますが、皆様の広い心で読んで頂けると助かります。

「俺の彼女にならないか?」


目の前にいる男がそう吐いた。


「ふっざけんな」


即答。


「・・・お前、最後まで人の話聞けよ」


ため息をつきながら腰に手を当てる姿はこれまでに何度も見た光景だった。

こいつは腐れ縁もいい加減腐ってしまえばいいのにと思うくらい長い付き合いになる幼馴染、カスだ 連。

あ、間違えた。

粕田カスダ レン24歳。

そして私が宮野ミヤノ 香澄カスミ同じく24歳。小学校1年の頃に出会ってから小・中・高ついでに大学・会社と離れることなく同じ道を歩いて来ている。


「何を最後まで聞かなきゃいけないの?今の彼女はどうしたっていうのよ。っていうか、寝言は寝て言え」


昔は可愛かった連は今やすくすくと世間一般でいういい男の部類に入る様な男に育っちゃいました。

そして、もれもなく女癖の悪い最低男へと成り下がって行きました。

あはは、セオリーすぎるだろ。


「・・・香澄。おまえ、その口の悪さどうにかなんない?」


ため息交じりに言う奴の言葉ももう耳にタコが出来るくらい聞いた。


「アンタの前以外では、ちゃんとしてるよ。ご心配なく」


これは連仕様だ。なぜかこいつの前ではこの言葉遣いになってしまう。

慣れって怖い・・・。


「・・・・なんかそれって俺が特別っぽいよな」


頬を染める奴に思わず蹴りを入れそうになったのも仕方ないと思う。


「ざけんな」


「・・・だからさ、それやめろって。せっかく香澄は可愛いのにそんな言葉使ったら台無しだ」


奴は毎度毎度同じセリフで私の口の悪さを直そうと心にも思っていないことを言う。

だから、私もいちいち本気にとったりはしない。


「はぁ・・・。こんなんじゃ話が前に進まない。それで、なんなのよ?今度は一体何をすればいいわけ?」


諦めたように私がそう言うと、連はしてやったりという顔をして身を乗り出してくる。


「さっすが香澄!!よくわかってるぅ!」


いちいちうざい。


「いいから!早くして。昼休みが終わる」


貴重な時間を随分と無駄にしたがとにかく昼休み中に終わらせてしまわないと今度は家にまで乗り込んできそうだ。


「それがさぁ、今の彼女がなかなか別れてくれなくて。好きな人ができたっていったらそいつに合わせろってさぁ」


毎度毎度・・・・・・。


「で?その『好きな人』の役を私がやればいいのね?」


そう言うと連はしきりに頷く。


「はぁ・・・。アンタいつか刺されるわよ。っていうか、それに私を巻き込まないで。いい?これで最後だからね」


最後の私の言葉に連は目を細めた。


「・・・・最後って何?いつも助けてくれるじゃん!」


そう言う連に再びため息をついた。


「もうさ、いい加減にしなよ。女とトラブルの度に私を使うな。それに、お互いいい歳だし、いくら幼馴染とは言え、一緒に居すぎたわ。もう、別々の道歩もう?」


私がそう言うと連の顔が急に真面目になった。


「・・・・何それ。どういう意味?香澄は俺から離れたいってこと?」


「・・・そうね。簡単に言えばそうだわ」


連の言葉に頷く。


「・・・ふーん。俺から離れたいって男でもできた?」


さっきまでのちゃらんぽらんな連はどこへやら。何やら急に連の周りの温度が下がり始めた気がする。


「・・・怒んないでよ。そんなことで」


下がった温度を素早く察知して先に声をかける。


「香澄が変な事言うからだろ?離れる必要がどこにあるんだよ」


なんとか氷点下まで落とす前に止められたらしい。

こいつを怒らすと後が大変だからなるべく刺激しないようにしないと話が進まない。


「お互い1人でも生きていけるようにならないと。いつまでも子供じゃないんだから」


そう。これまで一緒に居すぎたのだ。

なんだかんだいって、私も連を頼ることが多かった。ついこの間、気付かされた。

そんなつもりなかったのに。


「とにかく、その彼女と別れる協力はする。だけど、これが最後って事は心にとめて置いて。じゃあ、昼休みももう終るし、詳しい事はメールしておいて」


これ以上話していたら、必要ない事まで話してしまいそうだったので、くるりと背を向け急いで自分のオフィスに戻った。











数日後、連から貰ったメールに書かれてあった場所に行くと、そこには連一人が待っていた。


「あれ?連一人?彼女はまだ?」


いつもなら、彼女を連れて待っているはずなのに、今日は連一人そこに立っていた。


「せっかく気合入れて来たのに。まぁ、そろそろ約束の時間だし、彼女も来るでしょう?」


そういって連を見上げると連はにっこり笑って私の肩に手を置いた。


「今日の香澄も可愛い。誰にも見せたくないくらい」


一言目からそれか。っていうか、質問に答えろよ。

と怒鳴ってやりたくなるが、いつ彼女が来るかわかったものじゃないのでやめておいた。

これも彼女に見せ付ける為のものかもしれないと思ったから。


「・・・ありがとう。連もとってもかっこいいね」


そう言いながらきょろきょろとあたりを見渡す。

まだ、それらしき女性の姿は見えない。


「香澄。香澄。きょろきょろしなくても大丈夫だよ」


そう言って顎を掴まれ連の方へ向かされる。


「ちょ!やめてよ!!痛いじゃない!」


連の手を振り払おうとするが思ったよりも力が強く振りほどけなかった。


「・・・離して!」


「嫌だ」


連の言葉に青筋が浮かぶ。


「何ふざけてんの?っていうか、彼女はどうしたの?」


顎を掴まれたまま思い切り睨んでやるが、連はにこにこして私を見ていた。


「ふふ。俺の為にこんな可愛い恰好してくれたんでしょう?あーホント閉じ込めちゃいたい」


言っていることがいつもよりもかなり危険だ。


「連・・・。どうしたの?何かあった?」


なんだか、いつもと違う連にそう問いかける。


「ん?何か?そうだね。何かあったよ?」


そう言うと連の手が私の顎から外れた。

ほっとしたのも束の間、今度はしっかりと手を握られた。


「れ、れん?」


いつもと様子が違う連に少し焦ってしまう。


「ねぇ、香澄。今から俺の家に行こうか?」


そう言うと私の返事も聞かずにつないだ手を引っ張って歩き出した。


「連!痛い!離して!」


街の真ん中だと言うのにも関わらず思わず大きな声が出てしまって、すれ違う人達から白い目で見られて、思わず口を噤んだ。

だけど、連はそんな事には構わずどんどん家に向かって歩いていく。

そんな連を見て私はため息をつき、諦めて家までついていく事にした。

それに気付いたのか、連も先程よりはゆっくり歩いてくれるようになった。


「・・・・ごめん。香澄」


連の家に着くと、連は玄関に入るなり私に頭を下げる。

いつものことだけど、連は頭に血が上ると勢いに任せて行動する事が多い。

だけど、冷静になるとちゃんとこうして自分の非を認めて謝ってくれる。


「ねぇ、連?一体どうしたの?」


連の謝罪を受け入れその理由を聞くが連は黙ったままだった。


「連?言いたい事あるなら言わなきゃ分かんない。いくらずっと一緒に居るって言ったって連の考えてる事まで解るわけじゃないんだから」


優しく出来の悪い弟を諭すようにそう話しかける。

すると連は顔をあげ私と目を合わす。


「・・・香澄。一体、どんな奴?」


聞かれた問いに思わず首をかしげる。


「は?何が?」


そう答えると冷静になっていた連が私を睨む。


「だから、香澄が好きになった男ってどんな奴だよ!」


連の口から零れた言葉に思わず目を丸くする。


「な・・・なんで、そんな事アンタに言わなきゃなんないのよ!!」


まさか、そんな事を聞かれるとは思っていなかった。


「俺に言えないの?そんなにその男がいいんだ・・・」


そうつぶやくと連は私を抱き寄せた。


「その男のどこがいいの?顔?性格?」


いきなり連の力強い腕に抱きしめられていることに驚いて声が出なかった。


「俺よりいい男ってそうそう居ないと思うよ?そんな男、香澄にふさわしくないよ」


そう言うと今度は私を引き剥がし、両手が私の両肩をつかむ。

驚いている間もなく、連の顔が近くなってくるのを見て思わず顔をそむけた。


「いやっ・・・」


自分でも驚くほど小さな声だった。

だけど、その言葉を聞いて連は顔を歪めた。


「・・・・俺とキスするのはそんなに嫌?」


ぽつりとつぶやく連の言葉に慌てて連の方を向いた。

連が泣いてるかと思ったから。

だけど、連はその瞬間を逃しはしなかった。

すかさず顎をとらえるとその唇を私の口に押し付けて来たのだ。


「ん!!」


連から逃れようと必死で抵抗するが、もう片方の手でしっかりと後頭部を押さえられてしまってはどうにもできない。

押さえつけられる唇に思わず息をするのも忘れる。

苦しくなって両目をギュッと瞑れば少し連の唇が離れた気がして思い切り息を吸う。


「・・・っはぁ!」


息をした瞬間、開かれた口の中へ連の舌が侵入してきた。

温かい連の舌が私の舌をとらえようと動きまわる。

上へ下へと。まるですべてを食べつくそうとしているかの様に激しく口内を貪られながら私は連に翻弄される。何度も何度も角度を変えながら。連が解放してくれた時には腰が抜けていた。


「・・・んふぅ」


思わずこぼれた自分の声に恥ずかしさが募る。


「・・・香澄。可愛い」


連のキスによって抜けた腰を支えながら連は耳元でそうつぶやく。


「・・・いや・・・・」


耳元で喋られた声に背中がぞくりとした。


「可愛い。可愛い。香澄。誰にも渡さない」


そう言うと連は私を抱えて寝室へと足を運ぶ。

いくら腰を抜かして自由が利かないからと言って、さすがにこれは不味いと呆ける自分を叱咤して連の腕の中で暴れる。


「連!連!まって!お願いだから!!」


必死で訴えても連は全く聞いてくれない。

そうこうしているうちにベットに下ろされ連が私の上へと覆いかぶさる。


「連!!連ってば!お願い!お願いだから私の話を聞いて」


私の言葉が届かない連に必死になって訴えながら思い切り連に抱きついた。


「連・・・お願い・・・」


ぽたりと連の肩に涙が零れた。


「・・・・・香澄」


ぎゅぅっと抱きつく私の耳元で連の優しい声が聞こえた。


「香澄・・・。香澄。ごめん・・・・」


そう言うと私をそっと剥がして体を抱き起こしてくれた。

いつもの連に戻った事にほっとしたのか、更に涙があふれて来た。


「・・・・ごめん、香澄。泣かないで・・・。ごめん・・・・」


そう言う連はいつもの連に戻っていた。

目の前では落ち込んでいる大型犬とでもいうのか、しょぼんとした連が頭を垂れて私に謝った。

涙は止まらないけれど、そんな目の前に居る大型犬に伝えなければいけないと思った。


「・・・連。・・・・ひっく・・・。こんなのは・・・いや・・・・」


「・・・・・うん・・・・・・」


更に落ち込む連。


「・・・・・ちゃんと・・・・ちゃんと好きって・・・言って?」


私の言葉に項垂れていた頭がぴょんと起き上がり、目を丸くしていた。

私は鼻をすすって、涙を止めるとにっこり笑って言った。


「・・・・連。ちゃんと言って」


連は安堵したような、困ったような顔をして笑顔で言ってくれた。


「香澄・・・。香澄が一番好きなんだ。お願い、本当の彼女になって」


「・・・・私も連が一番大好きよ!」



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