第3話 激辛焼きそばを食べてみた
うーん、おかしいな。動物の動画、それも子供の物は確実にウケるテッパン中のテッパンだと思ったんだけどなぁ……。
まぁYouTuberとしてデビューしたばっかりだし最初はそんなもんか。早いところ次のネタを探さないとな。
4月も後半戦に入り、廃部の危機だからと頼まれて入った文化系サークルでも立ち位置が決まり、何かいいネタはないか? と大学近くの町を歩いていた。
先輩からは「ふーん、お前YouTuberやってるの? その割にはこうやってしゃべってても全然面白くないぞ。まぁお前はまだ18歳だから、頑張ってみろ」
とやる気が無さそうなテンションだだ下がりな声で言われたが。
(へぇ。こんなところにもコンビニなんてあったんだ)
越してきたばかりの町は歩いていても発見の連続だ。のどが渇いたので飲み物でも買おうかとコンビニに寄った時、それを見つけた。
「激辛焼きそば、か」
俺の目に映ったのは辛いことで有名なインスタント焼きそば。そういえばみんなこれを食った感想を述べる動画があったな。
「よし決めた。次はこれだな」
次の動画のテーマが決まった。家に帰ると早速カメラを3脚で固定し、下宿先のアパートの中で昼間だというのに撮影を開始する。
「はいどうもー。マックスありさわでーす。今日は、ジャン! 激辛焼きそば実食リポートですー。パチパチパチー。じゃあ早速お湯を入れていきますねー」
お湯を入れて待つ間、俺はサークルの先輩が言うにはつまらないらしいが、自分としては上々だと思っているトークで3分をしのぐ。
そして……。
「はい出来上がりましたー、早速食べてみたいと思います!」
そう言ってようやく実食を開始する。
「うっ!」
1口食べた瞬間、箸が止まる。何とか噛んで飲み込み、感想を述べる。
「なんだこれ、舌をナイフで切り裂かれるような感じ。えー、何というかもう「辛い」んじゃなくて「痛い」って感じ。
あー、確か辛さって本当は痛さであって脳が微妙に勘違いしているから、ってのは聞いたことがありますね」
それでも撮影中である。YouTuberである。俺は何とかこらえて食リポ……といえるほど上等なものではないが、それを続ける。
舌やノドが痛みを訴え、思考が回らない。トークしなくてはいけないのに途切れ途切れになって場が全くつながらない。
「うわ、まだ半分かよ」
食レポを開始して10分……まだ半分もあることに絶望する。股間は完全に萎えていた。
すでにトークのネタは尽きており、それ以前に舌やノドに居座り続ける激痛といえる辛さでトークをする気力も体力も萎えており「お通夜状態」で黙々と食事をとる光景がビデオカメラに映っていた。
「あー痛い……舌もノドも痛い……」
食レポを開始して30分。もはやうめき声以外は何も言えずに黙々と食べ続け、何とか完食した。
「うー……やっと終わった。何とか完食出来ました。あー、もう何も言いたくねえわ。
はい、そんなわけで今日の動画は以上となります……この動画が良いなと思った方は、チャンネル登録と高評価を是非よろしくお願い致します……。
チャンネル登録の後、ベルのマークの通知をオンにしていただければ最新の動画も見れますのでそちらもよろしくお願いします……。
こんな企画してくださいとか、コメントも何でもOKですのでお待ちしています……。
それではご視聴ありがとうございました……」
ほぼ死にかけであるものの、最後の締めの言葉は忘れない。
早速ビデオカメラをパソコンにつないで編集作業を開始する。
舌やノドにビリビリした「辛さ」を通り越した「痛さ」を感じているせいか集中力は今1つで8時間ほどかかって編集作業を終えた。
痛みは引いたが編集が終わったのは夜中。力尽きる前に動画を上げて眠りについた。
これだけ苦労したんだから誰かは見てくれるはず。そう期待して翌朝を迎えたわけだが……。
『マックスありさわ 激辛焼きそば実食リポート』
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