婚約者が「愛してないの反対だ」と言ってくる
何か思い付きました
私は、うんざりしていた。
「愛してないの反対の反対の反対の反対の反対だよ」
婚約者が、ニッコリ笑いながら言った。
婚約者同士、2人でお茶会中である。
「愛してないの反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対だよ」
もう一度言って、私の反応を確かめる。
顔を合わせる度に、小学生男子みたいな事を言う婚約者に、本当にウンザリしていた。
していたが、貴族なので、感情を顔に出してはいけない。
営業スマイルで
「今日も面白いですね」
と、社交辞令を言う。
私は転生者である。
平成育ちの私には、時代遅れのこの世界に、がんばって馴染んだ。本当にがんばった。
ただ、10歳で決まった婚約者には、本当にウンザリしている。
好きな子には意地悪したくなるタイプなのか?
ただの反抗期なのか?
12歳だったから、仕方ないかもしれないが。
「お前が婚約者になって嬉しくないの反応だよ」
初対面で、そう言われた。
「まぁ、面白い方ですね」
と、社交辞令を言ったら、ウケたと思ったのだろう。
毎回言うようになった。
ちなみに、私の両親も、婚約者の両親も、恥ずかしがり屋ね〜と笑っていた。
「お前が婚約者になってくれて嬉しいの反対の反対だよ」
学園に入るようになると
「愛してないの反対だよ」
と、言い出した。
13歳…厨二病かな。
我が家や、婚約者の家でなら問題ない。
問題は、私が学園に入ってから。
私は、婚約者の2歳下。
学園で、顔を合わせる度に
「愛してないの反対の反対の反対だよ」
それを聞いていたクラスメイト達が、微妙な顔をしている。
私が恥ずかしい。
婚約解消したい。
1度、「それ言うのやめて」
と言ったら
「冗談が通じないつまらない女だなぁ」
と言われた。
両親に相談しても、照れているだけだと聞いてくれない。
両親に婚約をやめたいと言った。
もうこれでダメなら、ぶっ飛ばすしかない。
「どこが不満なんだ」
「愛してないの反対…って言うところ」
「照れてるだけじゃないか。婚約者を支えるのがお前の役目だろう?」
「もう子どもじゃないのよ」
「うるさい!親の言う事を聞け!」
「周りがどんな顔をしているのか分かってるの?あんな子どもじみた人が婚約者なんて家の恥よ!皆にバカにされてるのよ!それなのに気付いてもいないんだから!」
私の必死の叫びに
「…そんなにか?」
「クラスメイトに聞いてよ!だいたい、来年は成人よ!そんな事言う人に仕事任せたいと思うの!?そんな領主と取り引きしたい!?そもそも、そんな恥ずかしい事を言うのはやめろって言ってくれる友人もいないのよ!どうやって社交するのよ!」
「う〜ん…そうだなぁ…」
「婚約解消できないなら、学園で、皆の前で殴りつけて大騒ぎして暴力沙汰おこしてやるわ!」
私はキレた。
「待て!早まるな!」
「じゃあ、皆の前で言う時に、愛してないになったら婚約解消にして!」
「…分かったよ」
「伯爵様にも言ってね。婚約者には言わないでよ」
「分かってる」
父の了解は取った。
「愛してるの反対の反対の反対の反対だよ」
「愛してないの反対の反対の反対の反対の反対だよ」
ドヤ顔で言ってくる。
頭の中で数えているのかな?
面倒だったから、今までは数えなかったけど、これから数えて、最終的に愛してないになったら婚約解消してもらおう。
他の人にも数えてもらわなきゃ。
クラスメイトにもお願いしよう。
あとは…護衛かな?
とうとうその日がやって来た。
「愛してるの反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対だよ」
「私も同じよ!」
「本当か!」
「良かった〜それじゃ、私は用があるから帰るわね」
「え?あぁ…」
さっさと帰って、婚約解消してもらおう!
やったわ〜!
証人は我が家の護衛と御者と、婚約者の家の護衛と御者よ。
家に帰り、父に報告する。
「では、婚約解消の手続きをしよう」
「ありがとうございます!」
嬉しくて、飛び跳ねた。
「そんなに嬉しいのか…」
父は、婚約者の家に行き、婚約解消の手続きをした。
相手の両親は、不甲斐ない息子ですまない、と言っていたらしい。
「愛してないの反対の反対の反対の反対の反対だよ」
「…」
返事せず、通り過ぎた。
「おい!返事くらいしたらどうだ」
「話しかけないでくださいませ」
「何だと!?」
「貴方といると恥ずかしいので、話しかけないでください」
「照れているのか?」
「まさか!貴方みたいな人と婚約していたなんて恥です」
「はぁ!?」
「婚約は解消されました。2度と話しかけないでください」
「婚約解消だと!?何故だ?」
「愛してないの反対なんて言うからです」
「何が悪いんだ」
「悪いと思っていないところですよ。周りを見てください。バカにしてますよ皆」
「そんな事あるか!」
「そんなバカな事しか言わない人と付き合いたくないから、友人がいないんでしょう」
「友人くらいいるさ」
「それは、愛してないの反対なんてバカな事を言うな、なんて貴方の将来を心配して言ってくれる友人ですか?」
「将来を心配?」
「そんなバカな事を言う人に仕事任せたくないし、そんな領主と取り引きしたくないし、社交は無理でしょう」
「そんな事は…」
「理解できなくても、結構です。婚約は解消されました。2度と話しかけないでください」
「ちょ…」
私は無視して、元婚約者の前から去った。
その後、社交が絶望的な元婚約者は、後継者ではなくなり、弟が後継者となった。
学園では、周りから白い目で見られていた事にやっと気付き、しばらくしてから元婚約者は退学した。
私は周りから同情されたが、さっさと忘れる事にして、楽しく学園生活を送った。
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