第33章:錆びついた亡霊の昇天 (第3部)
I. 鋼鉄の獣の目覚め
その昇天は、宇宙開発の優雅さとは無縁だった。それは「制御された震災」と呼ぶべき暴力的な揺れと共に始まった。プラットフォームが動き出す前、最初の予兆が響き渡った。ガルガンチュアの巨大構造全体を跳ね返る、規則的で重く、そして遅い槌音。それは、油圧ロックが外れる音――あるいは、その残骸が立てる悲鳴だった。音は深淵から組織的に迫り、足元の金属を震わせる重砲の如き打撃音となって私たちを襲った。
非常に重く、無骨なマグネットブーツが電気的な音と共に起動し、その衝撃が骨の髄まで突き刺さる。それは過ぎ去った時代の遺物であり、その電磁力はあまりに暴虐で、足首が金属の格子にめり込むかのように感じられた。クリスタルは意識を取り戻し、顔色の悪さは隠せないものの、確かにその瞳に光を宿していた。アンキロスは彼女を己の胸へと抱き寄せ、これから訪れる慣性の衝撃から守るべく、自らの肉体を「盾」とした。人間の姿となったアルテミスは毅然と平静を保ち、その周囲では、セクター全体に響き渡る真紅の昇天警報が、金属の軋み音と混ざり合って絶叫を上げていた。
突如、最初の牽引が襲った。衝撃はあまりに鋭く、世界が傾いたかのように錯覚する。全員が一度に叩きつけられたが、ブーツの磁力が私たちを表面に繋ぎ止めていた。滑らかさなど微塵もない。限界まで引き絞られた古びたケーブルの軋みと、大気そのものを引き裂かんとする牽引音だけが支配していた。
II. 死霊の絶叫(10km〜43km)
高度10キロメートル。風はもはやそよ風ではなく、実体を持った「敵」へと変貌した。不必要に巨大なプラットフォームは、リヴァイアサンのクレーターから立ち昇る熱気流の直撃を受け、激しく揺さぶられ始めた。本来なら安定を保つはずのガイドケーブルは、構造物を打ち据える鞭と化し、剥がれ落ちた錆びた外装を破片のように撒き散らした。
「速度、時速97キロ……重力抵抗95%……」 錆びついたスピーカーから、ノイズにまみれたアトラスの声が漏れる。 「累積慣性、限界値の55%……」
高度43キロメートルに達した時、騒音は耐え難いものとなった。それは「死を告げる女精」の叫び――精神を凍てつかせ、真空ヘルメットを通り抜けて耳を苛む鋭い風切り音だった。薄くなっていく空気は、プラットフォームの亀裂を抜けて狂暴な音を立て、私たちの肌を剥ぎ取らんばかりに吹き荒れた。ガイド構造に据え付けられたエンジンは赤熱し、火花と黒煙を吹き出しながら、ガルガンチュアが耐えうる極限の慣性の下で悲鳴を上げていた。振動は視界を奪うほど激しく、構造物のすべてのネジと、私たちのすべての骨を粉砕せんとする絶え間ない打撃が続いた。
III. 虚無の境界(70km)
速度は時速160キロまで上昇した。高度70キロメートル。気温はマイナス50度まで急降下し、吐き出す息は瞬時にバイザーの上で凍りついた。アンキロスは眼下を見下ろした。リヴァイアサンのクレーター、あの惑星規模の巨大工業の塊が、遠くで赤茶けた霞のような点へと縮小していく。
累積慣性は限界の98%。プラットフォームは、あらゆる安全計算を無視した張力の下で呻き声を上げていた。空気はもはや存在しないに等しいが、大気の最期の残滓が、最後の暴力的な振動と共に構造物を叩いた。露出した神経のように引き絞られた牽引ケーブルは、断続的な青い光を放っていた。それは、電磁エネルギーが「技術的奇跡」によって辛うじて稼働している証だった。
そして、静寂が訪れた。
それは最初の牽引と同じくらい強い衝撃だったが、正反対の性質を持っていた。バンシーの叫び声は瞬時に死に絶えた。風が消えた。世界が沈黙した。私たちは境界を越えたのだ。
IV. 星々への漂流
もはや音は何もなかった。ただ自分たちの心臓の鈍い鼓動と、真空の抱擁の中で急速に冷えていく金属が立てる軋み音だけが聞こえていた。高度120キロメートル。部分的な無重力状態の中、マグネットブーツだけが、私たちを暗黒への永遠の落下から繋ぎ止めていた。
アンキロスは微かに息を吐き、自分たちを引き揚げていたケーブルが、もはや蓄積された慣性だけで動いているのを見つめた。目的地に近づくにつれ、速度は段階的に落ちていく。星々の無限の闇の中に、一つの黒い影が浮かび上がった。アルファ#1。それは月に刻まれた開いた傷跡のように見えた。泰普伊#1を支えるその張力は、惑星を二つに引き裂かんばかりに巨大だった。
かつてアトラスが語ったように、天を奪う天使などではなかった。私たちは、後ろに残してきた世界と同じくらい死に絶えた目的地へと、一本の鋼の糸を頼りに這い進む鋼鉄の漂流者だった。




