第32章:鉄骸の廃景(第3部)
I. 錆びついた巨躯 (A Rusted Mass)
ガルガンチュアの主要施設に足を踏み入れた瞬間、その光景が私たちの目の前に叩きつけられた。かつての清潔な面影は、もはや微塵もない。視界のすべてが、オレンジと黒の厚い錆に覆われていた。かつて誇らしげに天を支えていた巨大な支持梁は、今や深い亀裂が走り、歳月によって無残に剥がれ落ちていた。
床は古いオイルとよどんだ水の罠と化していた。見上げれば、天井は死んだ金属の密林のようだった。数千のケーブルが蔦のように垂れ下がり、その多くは不規則に断線しては、床に届く前に消えゆく微かな火花を散らしている。樹木の幹よりも太い他のケーブルは、首を跳ねられた蛇のごとく床に横たわり、私たちの歩みを阻んでいた。
II. 合成人間たちの末路 (The Agony of the Synthetics)
何よりも不気味だったのは、シンテティコス(合成人間)たちの姿だった。彼ら全員が停止しているわけではなかった。多くは今なお整備任務を遂行しようとしていたが、その結果は惨憺たるものだった。
銀色のオートマトンが、錆に侵食された金属の肌を晒しながら、既にそこにはない梁を溶接しようとしていた。その腕からは電気的な唸りが絶え間なく響くが、炎は出ず、ただ黒い煙が上がるだけだった。また別の者は、空の物資箱の周りを円を描くように歩き続け、機械的な脚を金切り声のような音を立てて引きずりながら、中身のない積み込み作業を何度も繰り返していた。彼らには予備の部品もなく、新しいオイルもない。ただ、崩れゆく肉体の中で、死ぬことを拒むプログラムだけが空虚に動き続けていた。
III. ネットワークの崩壊 (Network Failure)
かつて無限のデータを映し出していた制御コンソールは、今や画面が割れ、絶え間ないエラーを示す赤色の光を点滅させていた。空気は重く、金属の塵とショートした回路の臭いが混じり合っていた。アトラスはその惨状を無視して歩き続ける。まるで、自らの「家族」が崩壊していく様を見慣れているかのように。
システムが再起動を試みるたびに、構造物の深部から歯車が砕けるような轟音が響いた。ガルガンチュアはただ古いだけではない。いつ崩壊してもおかしくない、末期的な「技術的奇跡」の下で辛うじて動いているのは明白だった。




