表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/125

第31章:ガルガンチュアの忘れ去られた守護者(第3部)

I. 鋼鉄の地平に降る火雨


 砂漠の果てに現れたのは、論理を越絶した構造物だった。雲の彼方へと消えていく巨大な鋼鉄の塊――ガルガンチュアの足元。境界線を越えた瞬間、大気は機械的な唸りに包まれた。数十年の眠りについていたアトラスの防衛システムが、機関銃の咆哮と共に目を覚ましたのだ。


「耐えろッ!」アンキロスが吠えた。


 アルテミスは不可能とも思える回避機動を繰り出し、降り注ぐ弾丸と朽ちた重機の残骸の間を跳ね回る。薄暮の空に、幾筋もの火線が描かれた。アンキロスは歯を食いしばり、手を突き出した。重厚な重力の波動が空中で弾丸を氷結させたかのように静止させ、無害な鉛の雨として砂の上にぶちまけた。


II. 巨人との邂逅


 銃撃が突如として止んだ。油切れで悲鳴を上げる油圧ハッチが開き、そこから威風堂々たる人影が姿を現した。  それは、アトラス (ATLAS) だった。  かつては眩い輝きを放っていたであろうその装甲は、今や継ぎ接ぎの補修跡と錆に覆われている。侵入者を捉えた光学センサーが、微かな赤色の光を点滅させた。


 アトラスは沈黙した。目の前の光景が信じられず、その電子頭脳が処理を急ぐ。足元には三人の預言者。彼のプロセッサは預言者クリスタルの姿を記録していた。だが、変わり果てた彼女の姿に、アトラスは自らの今の姿を重ね合わせた。デジタルな精神の中に、一筋の共感の火が灯った。


III. 敗北者たちの哀願


 アンキロスは己の疲労を押し殺し、一歩前へ出た。 「アトラス……リヴァイアサンの残骸は、今まさに喰らい尽くされようとしている」彼は枯れた声で語りかけた。「巨大な暗黒の樹と紅の預言者が、終わりのない感染を解き放ったんだ。俺たちはアルファ#1へ行かなければならない。**『虚空の子ら』**と接触したいんだ……奴らだけが、この疫病を止められる」


 アトラスは意識のないクリスタルを見つめた。彼の記憶バンクが、かつての彼女の映像を投影する。 「……虚空の子らだと?」アトラスから静電気のようなノイズが漏れた。「最後に信号を捉えてから、既に百年が経過している。この場所は天からも地からも忘れ去られたのだ。だが……もし預言者の血が今も流れているのなら。確信は持てぬが……あるいは、奴らも貴殿らの声に耳を貸すかもしれぬ」


「……連れて行こう」


IV. 錆びついたガルガンチュアの栄光


 アトラスは身を引き、巨大な構造物の深淵へと彼らを招き入れた。内部へ足を踏み入れた瞬間、凄まじい退廃の光景が広がっていた。


 「空への架け橋」と謳われたガルガンチュアは、今や廃墟に等しかった。通路には横転し、錆びついたメンテナンスロボットが転がり、剥き出しのケーブルが死せる巨人の神経のように火花を散らしている。大気にはオゾンと腐った油、そして朽ちゆく金属の臭いが充満していた。  アトラス自身も機械的な足取りを乱し、時間を限界まで削り取った己の存在を引きずるように歩く。


「上昇プロトコルの準備を」アトラスが告げると、非常灯が琥珀色に点滅した。「貴殿らをアルファ#1へ運ぼう。だが、そこにあるのが、逃げてきた地獄よりもマシな場所である保証はどこにもない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ