第28章:運命の短絡(第3部)
I. 壊滅への秒読み
ジューンが到着し、辛うじて敵の戦線を削り取った。だが、それも一時的なものに過ぎない。怪物の群れが再びその陣容を立て直すのは、もはや時間の問題だった。
シーザーは、意識の朦朧としたクリスタルをその腕に抱き、静かに立っていた。 アルテミスはクリスタルの治療のために駆け寄り、アンキロスは次なる死闘に備えて身構える。
しかし、ジューンがシーザーの言葉を遮るように割り込んだ。
「……かつて、お前は俺を救ってくれた。その借りを、今ここで返すぜ……」 シーザーが呟く。だが、ジューンは首を振った。 「今のままでは勝機はないわ。このまま挑み続ければ、私たちもヤナと同じ運命を辿ることになる」
アルテミスが必死にクリスタルに応急処置を施す中、シーザーは指示を出した。 「逃げろ、クリスタル。アルファ#1へ行き、ロッホ・シュタインを探し出すんだ。あいつに、俺たちが感染の脅威に晒されていると説得しろ。それが叶えば、**『虚空の子ら』**の掃討艦隊と殲滅部隊が救援に来てくれるはずだ」
アルテミスは抗議を続けた。 「お姉ちゃんをあの預言者と一人で戦わせるわけにはいかない!」 「そうしなければクリスタルが死ぬわ! 彼女を救って、ここから連れ出すの。シーザーの言う通り、アルファ#1へ向かって!」 ジューンの理性的で、しかし悲痛な叫びに、アルテミスは断腸の思いでクリスタルの治療を続け、彼女を連れ出す準備を整えた。
II. 最後の一瞥
ジューンは紅の預言者と対峙すべく、歩を進めた。 その隣に、蒼い電光を纏ったシーザーが並び立つ。
二人は最後の人としての共感を示すように、互いの手を強く握りしめた。 「……行け! もしあいつが生きてるなら、ロッホ・シュタインを連れてこい!」 「アルファ#1へ! 今すぐだッ!!」
シーザーとジューン。二人の預言者は、真の魔王を前にして孤立無援の戦いに身を投じた。 それから数日間、不眠不休の戦闘が続くことになる。際限なく押し寄せる異形の獣、そして紅の預言者の人知を超えた暴力。 遅かれ早かれ、この地獄が二人を飲み込むことは明白だった。
III. ガルガンチュアへの道
クリスタル、アルテミス、そしてアンキロスの三人は、巨大な狼となったアルテミスの背に乗り、戦場を脱出した。
彼らは、かつての文明の残骸である**『廃墟』を抜け、侵食された『森』を越え、峻険な『山脈』を登り、狂った『密林』を切り裂き、そして灼熱の『砂漠』**を渡った。 目指すは、遙か彼方の地――ガルガンチュア。
天へと続く架け橋……。 果たして、その先にアトラス (ATLAS) は待っているのだろうか。




