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第21章:錆と骨の典礼(第3部)

I. 影の巡礼


 大いなる闇の樹が息を吸い、そして吐いた。  その吐息から生命は生まれず、触れるものすべてを腐食させる茶褐色の風だけが吹き荒れた。  数世紀を耐え抜いた鋼鉄のはりが数秒で空洞化し、赤錆びたレースとなって風に触れただけで崩れ去った。


 リックはどうにか身を隠した。空気は徐々に、そして確実に腐食性を増していた。


 時間が経過した。  その異様さは遠くからでも視認できたため、何が起きているのかを確かめようと、様々な派閥のグループが少しずつ大樹へと近づいてきた。  狂信的なカルト信者たち、そして下水道からは『モグラ』たちが集まってきた。  彼らは遠くに紅の預言者の姿を認めたが、腐食性の空気が充満しているため、それ以上近づくことはできなかった。


 やがて、大樹の呼吸が止まった。腐食も止まる。  黒い樹が再び息を吐くまでの、束の間の休息だった。


II. 33体の嘔吐


 樹が息を止めるやいなや、その枝が根元からひび割れ始めた。  高速道路ほどもある太い下の枝が瞬時に枯れ果て、灰色に変色して脆くなった。大地を割るような轟音とともに、それらは折れて落下した。衝撃で黄土色の土煙が舞い上がった。


 だが、枝は死んではいなかった。  枯れ木は身をよじり、軋み、再構成された。樹皮から四肢が生え、節から胴体が現れた。  **33体の『枯れ木の巨人』**が立ち上がった。  顔を持たず、体中に穴と空洞を穿たれた巨神たち。そして、生物学的な粛清の儀式として、33体は一斉にその垂直の顎を開いた。


「グオオオオオ……」


 彼らの喉から、人間の骨の滝が吐き出された。  大腿骨、頭蓋骨、白く清潔な肋骨が地面に落ち、足元に山を築いていく。  彼らは、樹が成長するために消費した「人間性」を自らの中から排出したのだ。今や彼らは純粋な存在となった。


 巨人はそれぞれ、自らの体から木片を引き抜いた。木片は形を変え、脈打ち、**『肉と鉱物の剣』へと変化した。柄に眼球を持ち、鋭利な骨の刃を持つ生きた剣だ。  彼らは完璧なシンクロで剣先を大地に突き立て、大樹の心臓部を守る鉄壁の防御円陣を組んだ。  彼らこそ『沈黙の番人』**である。


III. 少女と死んだ馬


 この退廃のオペラの中、リックの視線は論理を拒絶するような光景に釘付けになった。それは呪われたキャンバスに描かれた絵画のような構図だった。


 錆びた瓦礫の丘の上に、一頭の馬がいた。  死に絶え、ミイラ化していた。皮膚は肋骨に張り付き、古い革のように黒く硬化している。脚は硬直し、地面に突き刺さっていた。  そして、その死せる獣の背に、一人の少女が乗っていた。


 死体ではない。彼女は純白のドレスを纏っており、汚れた砂嵐の中でそれが静かにはためいていた。顔は割れた陶器の仮面か、あるいはひび割れた彼女自身の皮膚によって隠されている。  彼女はリックを見ない。巨人たちも見ない。  その瞳――無限の闇を湛えた二つの井戸は、ただ紅の預言者だけを見つめていた。  彼女は許しを乞わない唯一の静かな目撃者であり、帝国が滅ぶのを見届ける彫像のような忍耐で、ただ観察していた。


IV. 地上の新たなる人工神


 玉座に座る紅の預言者は、崇拝を受け入れた。  笑顔はない。その表情は絶対的な憂鬱に満ちていた。


「救済を乞うな」


 彼の声は、金属を錆びさせる風そのものだった。


「忘却を乞え。救済には痛みが伴う。忘却こそがギフトだ」


 カルト信者たちの祈りは預言者を鎮めることができず、彼らは大樹の根に襲われた。同化されようとする信者たちが次々と犠牲になっていく。


 だが、その混沌の中、いにしえの影が立ち上がった。


 バチバチと火花が散り、謎の人物が雷撃の力で捕らえられた信者たちを救い出した。  彼は顔を上げ、紅の預言者と対峙した。  それは雷の預言者、シーザーだった。


 彼の左手首には1つの**『サイオニック・ブレスレット』。  だが右手首には2つ、合計で3つのブレスレット**が装着されていた。  追加された3つ目の腕輪はひび割れ、ボロボロの状態だったが、機能していた。それは過去の遺物レリックだった。


 リックは悟った。二人の巨神タイタンが正面衝突しようとしているのだと。  教団の教授であるトレバーは、シーザーに深く感謝し、震えていた。


 紅の預言者の視線と、シーザーの視線が交差した。

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