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第16章:致命的な執着(第2部)

崩壊するビルの中、重力が失われた空間での激しい戦闘です。


それでは、重力なき落日の戦いをお楽しみください。


BGM: 致命的な執着

https://x.com/el_geoztigma/status/1998278899499778434


瞳は見開かれている、だが君は夢の中

Eyes wide open but you're not awake


君に見えるのは怪物、偽りの姿

You see a monster, you see a fake


凍てついた大地が震え出す

The frozen ground begins to shake


一歩近づけば、それが命取り

One step closer, a fatal mistake


その一撃を受け止め、痛みを飲み込む

I take the hit, I take the ache


君が生き残るため、君のために

For your survival, for your sake


鏡は割れ、視界の蛇が蠢く

The mirror cracks, the vision snake


俺はあとどれだけ、耐えられるだろうか?

How much damage can I take?



君の結晶の刃が、切り裂き、抉る

Your crystal shards, they slice and rake


雪の湖に続く、血の痕跡

A bloody trail in the snowy lake


壊れなかった絆など、もうない

There is no bond we didn't break


名を叫んでも、君は目覚めない

I scream your name, you don't awake



粉砕! 震動! 崩壊! 見捨てろ!

SHATTERED! SHAKE! BREAK! FORSAKE!


砕け散る前に、俺は屈しよう!

I will bend before I break!


悪魔を殺せ、その蛇を殺せ!

Kill the demon, kill the snake!


その痛みをすべて俺にくれ!

Give me all the pain you make!


これは悪夢だ、現実じゃない!

It's a nightmare, not awake!


君の心だけは、絶対に壊させない!

I won't let your spirit break!



崩壊... ダウン... 崩壊... ダウン...

Break... Down... Break... Down...



砕け散る前に、俺は屈しよう!

I will bend before I break!


悪魔を殺せ、その蛇を殺せ!

Kill the demon, kill the snake!


その痛みをすべて俺にくれ!

Give me all the pain you make!


これは悪夢だ、現実じゃない!

It's a nightmare, not awake!


君の心だけは、絶対に壊させない!

I won't let your spirit break!



砕け散る前に、俺は屈しよう!

I will bend before I break!


悪魔を殺せ、その蛇を殺せ!

Kill the demon, kill the snake!


その痛みをすべて俺にくれ!

Give me all the pain you make!


これは悪夢だ、現実じゃない!

It's a nightmare, not awake!


君の心だけは、絶対に壊させない!

I won't let your spirit break!



瞳は見開かれている、だが君は夢の中

Eyes wide open but you're not awake


君に見えるのは怪物、偽りの姿

You see a monster, you see a fake


凍てついた大地が震え出す

The frozen ground begins to shake


一歩近づけば、それが命取り

One step closer, a fatal mistake

【アンキロ : 追跡者】


遠くに彼女の姿が見えた。走っているのではない、滑るように移動している。何かが彼女の内側を食い荒らしているのだ。


「クリスタル! 一体どうしたんだ!?」 凍てつく風に向かって俺は叫んだ。


だが、彼女に俺の声は届かない。彼女の精神の中で、現実は地獄と重なり合っていた。俺がただの無人の通りを見ている場所で、彼女は『深紅の予言』を見ている。網膜に焼き付いた幻影の怪物、『灰の獣』から逃げているのではない。自らの精神という牢獄を破壊するために、絶望的な執念で怪物を追っているのだ。


彼女が跳んだ。 それは不条理なほど洗練された動きだった。錆びついた車からバスへ、そして彼女の重みで軋む街灯を足場に跳躍し、廃ビルの二階へと吸い込まれていく。


俺は後を追った。筋肉を酷使し、彼女の天性の身軽さを模倣しようとするが、俺のブーツの下で車の屋根は無様にひしゃげるだけだ。俺には彼女のような優雅さはない。あるのは腕力と、焦燥だけだ。


ビルに侵入する。廊下は暗く、カビと錆の臭いが充満していた。


二つの廃墟タワーを繋ぐ連絡橋で、ついに彼女に追いついた。両側の割れた窓は鋭利な牙のように並び、硝子のナイフとなって侵入者を待ち受けている。歩くたびに床が軋み、霜の結晶が砕け散る音が響く。


クリスタルが足を止めた。疲れたからではない。俺を「敵」だと認識したからだ。彼女は振り返り、完璧な格闘術の構えを取った。


その拳は構えられたまま動かない。無言の警告だ。「一歩でも間違えれば、そこで終わる」と。


薄闇の中で、彼女の蒼い瞳が光った。それは俺の仲間の目ではなかった。恐るべき**『制御予測コントロール・エスティメーション』**が発動している。ベクトル、距離、弱点……すべてを計算している目だ。手首には『念動力の腕輪サイオニック・ブレスレット』がない。だが、その全身が凶器であると雄弁に語っていた。


戦うなんて正気じゃない。俺は両手を下げ、説得を試みた。


「クリスタル……」声が震える。「俺は、君を想っている……君は俺にとって英雄だ、救世主なんだ……戻ろう、一緒に」


彼女は小首を傾げた。まるで別の周波数のノイズを聞いているかのように。


「私なんて……ただの怪物よ……飢えた虚空で造られた……」 壊れたレコードのように彼女は囁く。 「もう耐えられない。終わらせなきゃ。私が、救わなきゃ……」


「違う!」俺は強く言い返し、一歩踏み出した。「その幻覚を忘れろ、すべて君の頭の中だけの出来事なんだ。帰ろう」


俺は友愛を示すように手を差し出した。掌を見せて。平和の証として。


だが、クリスタルにその手は見えていなかった。彼女の狂気の中で、それは過去に彼女を傷つけた裏切りの手に見えたのだろう。


パァン!!


乾いた音が響く。彼女は俺の手を払い除けた。肌と肌がぶつかる音が、銃声のように錯覚するほど鋭い。


「私の目には、あなたたちはもう無限に死んでいるのよ……」 彼女の声の冷たさに、血が凍りつくようだった。 「私だけがあなたたちを救える。誰にも私を止めることはできない」


彼女の目を見た。絶対的な決意。かつて見たことのないレベルの『制御予測』。 拘束してでも連れ戻そうと前に出ようとした瞬間、彼女の殺気が俺の足を縫い止めた。


『アンキロ、一歩ミスをすれば、死ぬ』


死んだ二つのビルの間、世界が崩壊した場所で、二つの心臓が崖っぷちに立たされていた。


俺は一歩踏み出した…… そして二歩…… 三歩目。


クリスタルの表情が悲哀から、純粋な苛立ちへと変わる。


瞬き一つの間だった。空気を切り裂く払い蹴り。足場を奪われた俺は、一瞬だけ宙に浮く。その無重力の瞬間を見逃さず、彼女の二撃目が炸裂した。


衝撃で3メートル後方へ吹き飛ばされる。地面を転がり、生存本能だけで立ち上がった。橋が揺れ、肋骨が悲鳴を上げるが、体はまだ動く。


顔を上げた瞬間、拡大した彼女の瞳孔が目の前にあった。


右ストレートが来る。視界が揺らぐ。 ガードを上げる! 遅い。腹へのボディブロー、逸らした拳が肋骨をかすめ、顎を砕こうとするアッパーカットが襲う。


体勢が崩れた。


クリスタルは俺の首を掴んでガードを強制的に下げさせると、強烈な膝蹴りを胸板に叩き込んだ。肺から空気がすべて吐き出される。


だが止まらない。運動エネルギーを殺さず、彼女はその場で回転した。完璧な暴力の360度ターン。回転蹴りが俺の側頭部に直撃する。


防御が崩壊した。


弾き飛ばされた俺の背中が、割れた窓枠に激突する。ガラス片と金属がスーツに食い込む。衝撃で脳が揺れる。 最悪だと思った瞬間、さらに彼女は追撃してきた。躊躇も、迷いもない。 顔面への蹴りが俺を襲い、同じ窓枠に何度も叩きつけられる。俺はロープ際で滅多打ちにされるボクサーのようだった。


必死に腕を上げる。だが無意味だ。体を守れば膝が飛んでき、顔を守れば重力を無視したような連続蹴りが側面から襲う。


俺はシステム的に解体されていた。まるで欠陥品のドロイドのように。


もう耐えられない。視界が赤く染まる。


俺は最後の切り札、『元素の腕輪』を限界までチャージした。 腕輪が唸りを上げ、運動エネルギーと重力エネルギーを充填する。そして、その時だった。


俺の『制御予測』が、人生で初めて起動した。


世界がスローモーションになる。宙を舞う埃が静止する。感覚が痛いほどに鋭敏になる。


——全部吹き飛ばしてやる、クリスタル。 ——させない。 ——やるんだよッ!!!


俺は全サイオニック・パワーを解放した。制御された重力パルス。


ズドォォォォン!!


橋が悲鳴を上げ、崩壊寸前まで歪む。 クリスタルはその人間離れした反射神経で直撃を察知し、コンマ一秒で回避行動をとったが、衝撃波までは避けきれなかった。彼女は10メートル後方の壁まで吹き飛ばされた。


彼女が地面に落ちる。その怒りは明白だった。


一息つく。どうにか引き剥がした。だが、彼女を見て悟った。終わりではない。彼女の『制御予測』は混沌を食らい、さらに強大になっている。


クリスタルが地面に手をつく。散らばった破片に映る彼女の顔はやつれ、髪が狂気のベールのようにシルエットを覆っている。 ゆっくりと彼女が立ち上がる。膝をつくのをやめた。


構える。言葉はない。ただ「死」だけがそこにあった。


「止まれ、クリスタル!」


彼女が突っ込んでくる。


覚醒したばかりの俺の『制御予測』が脳内で叫ぶ。 『時間は糖蜜のように遅い』 彼女の攻撃のディテールが見える。足の運び、位置取り、踵を軸にした回転、全体重を乗せた鞭のような右ストレート。


見える……


だが、俺の体は生身の肉と骨だ。視覚の速度に追いつけない。彼女は速すぎる。この領域で生きてきた女だ。


慣性だけで一歩下がる。拳が鼻先をかすめ、風圧で皮膚が切れる。


クリスタルは回転を止めない。加速させる。360度回転蹴り、かわす。さらに蹴り、かわす。手足の竜巻だ。 体勢を戻す。左の正拳突き。 見える。 俺は右のカウンターを合わせる。 数ミリの差でかわされた。


ドガッ!


彼女の一撃が入る。歯が砕けるほど食いしばり、耐える。


「止まれッ!」


止まらない。


反撃しようとするが、彼女は未来のさらに三手先にいる。 屈んだ。下からの垂直蹴りが顎へ向かってくるのが見える。俺の攻撃に対するカウンターだ。


直撃。


平衡感覚を失い、よろめきながら数歩下がる。口から血が溢れる。


本能的に腕輪を二度目のリチャージ。 一瞬、未来の糸が光る。 『見える!』 俺が直線的に撃てば、彼女は左に回り込んでトドメを刺す。その未来は、俺の死だ。


解決策! 彼女を狙うな、世界を狙え!


クリスタルが全速力で迫る。殺意と技巧の機関車。 俺は両手を床につけた。


掌が触れた瞬間、波動が放たれた。 地面がゼリーのように波打つ。 構造体全体が激しく揺さぶられた。建物の破片、剥がれた塗装、埃、ガラス、古い椅子、湿った書類……固定されていないすべての物が重力に逆らって舞い上がった。


ビルが裂けるような音を立てる。浮遊する瓦礫の雲が廊下を埋め尽くした。


クリスタルが足を止めた。浮遊する混沌の中で標的を見失い、冷静さを欠いた。


彼女の『視界』を封じた。 次は、反撃だ。


すべてが浮遊していた。世界はアンカーを失った。 俺は腕輪を使って、近くに浮いていた錆びた椅子を掴んだ。狙うはクリスタル。彼女の足は、かつて天井だった場所に触れている。


俺のテクノロジーの下、重力は消滅した。ここからは三次元の戦いだ。 「空は限界ではない。単なる別の方角だ」


「これを食らえ!」 俺は椅子を暴力的に投げつけた!


クリスタルは天井を蹴って加速し、猫のように身をひるがえしてかつての床へと着地、攻撃を難なく回避する。


三度目のリチャージ。右手で射撃準備、左手で反重力を維持する。 固定されていないありとあらゆる物を引き寄せた。 机、マーカー、古いPC、腐った家具、配管、鉄パイプ。 すべてを弾丸に変える。


「止まれぇぇぇッ!!!」


暴風のような瓦礫と鉄の嵐を、クリスタルへ放つ。


だが彼女は天井と床の間を跳ね回り、無重力下で人間をやめていた。俺の放つ攻撃は空を切るだけだ。クリスタルは跳弾リコシェする弾丸そのものとなっていた。俺の小細工は通用しない。


「遊びは終わりだ!」


右の腕輪を四度目のリチャージ。 今度は家具ではない。土台を狙う。 構造体の鉄筋コンクリートに亀裂を入れる。ビルが断末魔のような轟音を上げる。鉄が捻じれ、石が割れる音。


ビルの巨大な塊が剥がれ始めた。砂埃の薄闇の中、彼女の蒼い瞳だけが光跡を残す。彼女は天井に逆さまに張り付いていた。上も下も関係ない。彼女が常に支配者コントロールだ。


剥がれたコンクリートと鉄骨のすべてを、彼女に向けて撃ち放つ!


「これで……終われッ!!」


隕石群のように、瓦礫がクリスタルへ殺到する。 彼女は単に距離を取るだけだった。迫りくる瓦礫を足場にして加速し、反応速度を極限まで高めている。床を、天井を、壁を擦り抜け、論理を無視した機動で再配置していく。


その時、巨大な瓦礫が天井を突き破った。 構造バランスが崩壊する。 ビル全体が、落ち始めた。


最初はゆっくりと、やがて致命的な加速と共に。 ビルが90度から80度……70度……60度へと傾く中、クリスタルは壁を走り始めた。 地平線が傾く。ビルが倒壊していく中、俺は虚空を蹴って彼女を追った。


崩落するトンネルを駆け上がる、壁と天井を破壊するつむじ風。重力はない。あるのは慣性と暴力だけ。クリスタルは俺が投げるすべての障害物を飛び越えてくる。


予測不能のバウンド。速すぎる。警告なし。 彼女を落とすことに集中しすぎて、彼女の攻勢を見落とした。


ドゴォォッ!


顔面への二段蹴り。 鼻が砕ける音がした。血の滴が飛び散り、液体のルビーのように目の前に浮かぶ。もう限界だ。


ビルと共に落下し続ける。90度の上昇だった壁は45度の坂となり、衝突の瞬間には0度の平地となるだろう。


当たらない。また跳ね返された。 彼女は空中で俺の体に掴まった。鳩尾みぞおちへの打撃で息が止まる。通り過ぎざま、垂直軸で回転し、自由落下の中で45度の角度から蹴りを放つ。


完全防御で受け止めたが、衝撃で俺たちは激しく降下した。 喉が焼けるような悔しさが込み上げる。 「クリスタルは諦めない!」


自由落下の中、俺は腕輪をリチャージした。彼女は俺のガードを殴り続けている。 終わらせるしかない。 蹴りの最中の彼女の足を掴み、引き寄せ、俺の掌を彼女の腹部に密着させた。


彼女の目を見た。そこには狂気がある。だが、痛みもあった。


「ごめん、クリスタル……」 風にかき消されるほどの声で囁く。


さよなら


全運動エネルギーを解放する。


ズガァァァァァァン!!!


衝撃は壊滅的だった。ビルの最上階5フロアが、まるで内部で爆弾が爆発したかのように天井から弾け飛んだ。


クリスタルは弾き飛ばされた。何メートルも、何メートルも彼方へ。 彼女の足は壁面を捉え、凄まじい慣性で滑りながら階層を駆け上がり、猛スピードで遠ざかっていく。 ビルの断面、クレーターの縁に彼女は到達した。建物はすでに傾き30度を切っている。地面とのキスは目前だ。


慣性が彼女を引きずり、俺から引き離していく。 だが、彼女は前を見なかった。 その視線は俺に固定されていた。迫りくる落下の運命に背を向け、かつての相棒に顔を向けて。


すべてがスローモーションになる。 重力の支配が弱まり、俺の力も尽きる。ビルは死への加速を増す。すべてが崩れ落ちる。


奈落の縁で、消え去る直前。クリスタルが身を起こした。 そして、最後の別れのように、一瞬だけ瞬きをして。


彼女は俺に贈った。 憎しみではない。怒りではない。 心からの、幸福な笑みを。


ビルが0度に達した。 世界が暗転する。 すべてが俺たちの上に崩落した。


空を指していた天井が地面に叩きつけられる瞬間、彼女の安らかな表情だけが、最後の記憶として俺に焼き付いた。


愛する者と殺し合うために、どれほど強い信念が必要だったのだろうか?


俺は残った最後のエネルギーを使い、捨て身の重力パルスで自分自身を瓦礫の雨から守った。 闇。土煙。静寂。


[...]


数分後、俺は廃墟の中で立ち上がった。 「クリスタル……?」


彼女の痕跡はない。 幽霊のように、彼女は塵と混沌の中に消えていた。


俺は足を引きずり、血を流しながら、残りのチームの元へ戻った。だが、砕けた体よりも心臓の方が痛かった。 クリスタルは逃げた。 だが、あの落下と俺の最後の一撃だ。彼女も俺と同じくらい、いやそれ以上に壊れているのは確実だった。

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