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第1章:アルテミスの日記(第2部)

所有者: アルテミス、 大山(旧レヴィアタン郊外)


[2125年 | 眠りの暦 1年] 軍の包囲網から脱出した。雪の中で爪と牙、そして武器を使って戦い、彼らが諦めるまで気配を消し続けた。寒さだけが私の味方だ。彼らの熱源スキャナーは、この猛吹雪の中では役に立たない。


[2126年 | 眠りの暦 2年] 雪が白ではなくなった。黒く、油を含んで降ってくる。飛行中の鳥が死んで落ちるのを見た。口の中から金属的な放射能の味が消えない。


[2127年 | 眠りの暦 3年] 殲滅部隊はもう山に登ってこない。凍死したパトロール隊を見つけた。彼らのスーツはこの『核の冬』に耐えられなかったようだ。洞窟の入り口を補強するために装備をいただいた。


[2128年 | 眠りの暦 4年] 眼下のレヴィアタンは、消えた灯火の墓場だ。電気はない。静寂があまりに絶対的で、背後にある5つのクリスタルの鼓動さえ聞こえるようだ。


[2129年 | 眠りの暦 5年] 毛皮が厚くなった。山の麓で変異したネズミを狩らなければならなかった。腫瘍だらけだが、肉は私を維持してくれる。私の体は毒に適応しつつある。


[2130年 | 眠りの暦 6年] 365日間、空はずっと灰色だった。太陽を見ていない。斜面に落ちた『コロッサス76』が錆び始めている。破壊不能と言われた金属が、雪の上に赤い涙を流している。


[2131年 | 眠りの暦 7年] 酸性雨が、洞窟に入ろうとした熊の皮膚を溶かした。自然が怒っている。私はただ観察する。


[2132年 | 眠りの暦 8年] 人の声の響きを忘れてしまった。時々、自分の名前を忘れないように、クリスタルの結晶に話しかける。


[2133年 | 眠りの暦 9年] 雪解け水が紫色に染まって流れていく。四つの目を持つ魚が泥を這うのを見た。放射能によって進化が加速している。


[2134年 | 眠りの暦 10年] 十年が経った。下の都市が崩れ始めた。誰かが押したわけでもないのに、ガラスの摩天楼が崩落していく。重力が所有権を主張しているのだ。


[2135年 | 眠りの暦 11年] 雷雨が山を襲った。普通の雷ではない、緑色の稲妻だ。静電気エネルギーが兄弟たちのクリスタルを共鳴させ、歌わせた。


[2136年 | 眠りの暦 12年] 足跡を見つけた。人間ではない。巨大で、爪がある。放射能の谷で、何か新しい生物が生まれたようだ。


[2137年 | 眠りの暦 13年] 核の冬が緩み始めた。今日、青白い太陽の光を見た。肌が焼けるようだった。オゾン層は破壊されているに違いない。


[2138年 | 眠りの暦 14年] 最初の花。死んだ兵士のヘルメットの上に咲いていた。黒く、棘だらけだが、それは「命」だ。


[2139年 | 眠りの暦 15年] レヴィアタンの廃墟へ降りた。コロッサスの金属骨格は今や、羽のないガーゴイルのような肉食鳥の巣になっている。


[2140年 | 眠りの暦 16年] 植生が都市を奪還しつつある。緑ではない、暗赤色と紫色の植物だ。蔦がオトラのビル群を絞め殺している。


[2141年 | 眠りの暦 17年] 空気が呼吸しやすくなった。あるいは、私の肺が変異したのか。朝、血を吐くことはもうない。


[2142年 | 眠りの暦 18年] 狼の群れを見た。私とは似ていない。鱗のような皮膚と、二列の歯を持っている。彼らは私を敬っている。私が彼らより古く、危険な存在であることを嗅ぎ取っているのだ。


[2143年 | 眠りの暦 19年] 地震が広場のセザールの墓を揺さぶった。確認しに行った。ダイアモンドは無傷だが、土が彼をほぼ完全に飲み込んでいた。


[2144年 | 眠りの暦 20年] 『他なる軍勢アリア・ミリタルム』はただの記憶となった。古い戦車を見つけたが、今は発光キノコの巨大な植木鉢になっていた。


[2145年 | 眠りの暦 21年] 大気が安定してきた。磁場が損傷しているせいで、夜は絶え間ないオーロラのショーとなる。美しく、致死的だ。


[2146年 | 眠りの暦 22年] 戦わなければならなかった。猫と爬虫類を混ぜたような獣が聖域に入ろうとした。その血は酸だった。私の爪はまだ鋭い。


[2147年 | 眠りの暦 23年] 山の湧き水が再び純粋になった。大地は奇跡的な効率で毒を濾過している。


[2148年 | 眠りの暦 24年] 歳を取らないのに、老いを感じる。時間は岩よりも重い。ジューンはどんな夢を見ているのだろう。


[2149年 | 眠りの暦 25年] 四半世紀。レヴィアタンの都市は見分けがつかない。コンクリートと有毒な苔のジャングルだ。


[2150年 | 眠りの暦 26年] 遠くに煙を見た。人間の生存者か? それともただの山火事か? 調べには行かなかった。私の義務はここにある。


[2151年 | 眠りの暦 27年] 昆虫が巨大化した。鷹ほどの大きさのトンボが空をパトロールしている。羽音が絶えない。


[2152年 | 眠りの暦 28年] 山の雪が再び白くなった。黒さは洗い流された。


[2153年 | 眠りの暦 29年] 洞窟を飾った。廃墟から宝石や光る金属を持ってきた。アンキロなら、自分のクリスタルの墓が輝くのを気に入っただろう。


[2154年 | 眠りの暦 30年] 遠くに見える『マザー・サターン』の残骸は、植生に覆われた人工の山となった。休火山のようだ。


[2155年 | 眠りの暦 31年] 青い胞子の疫病が谷を覆った。触れるものすべてを眠らせる。数ヶ月間、洞窟を完全に密閉しなければならなかった。


[2156年 | 眠りの暦 32年] オトラの沈黙が最も不気味だ。30年間、ドローン一機すら見ていない。機械は本当に死んだのだ。


[2157年 | 眠りの暦 33年] 今日、アリアナに話しかけた。暗闇で光る新しい花について話した。クリスタルが反応して振動した気がする。


[2158年 | 眠りの暦 34年] 動物的本能が研ぎ澄まされていく。時々、人間の在り方を思い出せないまま、狼の姿で数日過ごすことがある。その方が楽だ。


[2159年 | 眠りの暦 35年] 特に厳しい冬。氷河が前進し、郊外の残骸を飲み込んでいく。


[2160年 | 眠りの暦 36年] 廃墟の図書館で、腐っていない本を見つけた。眠れる者たちに詩を読んで聞かせた。


[2161年 | 眠りの暦 37年] 動物相が攻撃的だ。進化は装甲を持つ捕食者を選んだようだ。それでも、私がこの食物連鎖の頂点だ。


[2162年 | 眠りの暦 38年] 谷に光を見た。焚き火だ。人間が戻ってきたのか、あるいは穴から出てきたのか。原始的だ。


[2163年 | 眠りの暦 39年] 人間たちが登ってこようとした。毛皮をまとい、古いスクラップで作った槍を持っていた。遠吠えをして追い払った。彼らは私を「頂の亡霊」と呼んでいる。


[2164年 | 眠りの暦 40年] 孤独は病だ。友の顔を忘れないように、彼らの姿をした氷の彫像を彫り始めた。


[2165年 | 眠りの暦 41年] 夜空が変わった。光害がないため、星が違って見える。宇宙が近く感じる。


[2166年 | 眠りの暦 42年] 「鱗狼」の群れが私に挑んできた。アルファ(ボス)を殺した。今や群れは私の洞窟の足元で眠り、私を守っている。私には軍隊がある。


[2167年 | 眠りの暦 43年] 雨が再び安全になった。数十年ぶりに嵐の中で体を洗った。


[2168年 | 眠りの暦 44年] 新しい人間たちが、コロッサスの残骸を解体している。彼らは死んだ機械を、堕ちた神々のように崇めている。


[2169年 | 眠りの暦 45年] レヴィアタンの廃墟で、一台のロボットに出会った。 かつて巨大ビルだった瓦礫の中心に、一本の大樹が生えている場所だ。 彼のバッテリーは切れかけていた。 彼は『虚空の落とし子』と交信し続けていたが、虚空は沈黙したまま、何も答えなかった。 私は彼が動かなくなるまで、その傍らにいた。


[2170年 | 眠りの暦 46年] 植生が完全に摩天楼を覆い尽くした。レヴィアタンは垂直のジャングルだ。


[2171年 | 眠りの暦 47年] ルーチンができた。クリスタルを磨く。境界をパトロールする。狩る。眠る。繰り返す。


[2172年 | 眠りの暦 48年] 一人の旅人が頂上にたどり着いた。私を見る前に凍死した。彼を埋葬した。


[2173年 | 眠りの暦 49年] 私の『支配の推測』が変わった気がする。もはや獣を支配しているのではない。私自身が自然そのものの一部なのだ。


[2174年 | 眠りの暦 50年] 半世紀。50年の監視。私の約束はまだ破られていない。


[2175年 | 眠りの暦 51年] 気候が温暖化した。雪解けが古代の兵器を露わにする。それらを谷底へ投げ捨てた。


[2176年 | 眠りの暦 52年] 巨大な生物が飛んでいるのを見た。変異したドラゴンか? いや、ハゲタカの子孫だが、巨大化している。


[2177年 | 眠りの暦 53年] 眼下の人間たちが、『子羊の皿』の跡地の上に村を作った。そこで流された血のことなど知らずに。


[2178年 | 眠りの暦 54年] 時々、紅の預言者の夢を見る。クリスタルも夢の中で彼に会っているのだろうか。


[2179年 | 眠りの暦 55年] 鱗狼の群れに子供が生まれた。彼らはクリスタルと遊んでいる(傷つけはしない)。墓場にも命はある。


[2180年 | 眠りの暦 56年] 疫病が谷を襲った。ここから火葬の煙が見える。死は依然として女王だ。


[2181年 | 眠りの暦 57年] バンカーで機能するテクノロジーを見つけた。音楽プレーヤーだ。クラシック音楽を聴いた。泣いた。


[2182年 | 眠りの暦 58年] 月が違って見える。新しいクレーターがある。戦争はここだけで起きたのではなかったのだ。


[2183年 | 眠りの暦 59年] 地滑りでセザールが露出しそうになった。降りて行って、岩と木で彼を覆わなければならなかった。彼はまだそこにいて、眠れる悪意と共に輝いている。


[2184年 | 眠りの暦 60年] 60年。私の体は老いないが、目はあまりに多くの冬を見てきた。


[2185年 | 眠りの暦 61年] 山に新しい木が生えている。その木材は鉄のように硬く、葉は青い。


[2186年 | 眠りの暦 62年] 人間たちがコロッサスの金属で剣を打っている。歴史は繰り返す。戦争は戻ってくるだろう。


[2187年 | 眠りの暦 63年] 日数を数えるのをやめた。季節だけを数える。


[2188年 | 眠りの暦 64年] 野獣がアンキロのクリスタルを壊そうとした。素手で引き裂いた。私の兄弟には指一本触れさせない。


[2189年 | 眠りの暦 65年] 空気が澄んでいる。クリスタル(水晶)のように。彼女の名前のように。


[2190年 | 眠りの暦 66年] 以前の世界がどうだったか忘れ始めている。オトラなど神話のようだ。


[2191年 | 眠りの暦 67年] 私の群れの子孫たちが、今や山の主だ。私は彼らの永遠のアルファだ。


[2192年 | 眠りの暦 68年] 太陽嵐が空を三日間紫色に照らした。美しく、恐ろしい。


[2193年 | 眠りの暦 69年] セザールの時代の古い硬貨を見つけた。深淵に投げ捨てた。


[2194年 | 眠りの暦 70年] 70年。世界は彼らが目覚める準備ができているだろうか。まだだ。まだあまりに野蛮すぎる。


[2195年 | 眠りの暦 71年] レヴィアタンの廃墟は、今や新人類の洞窟となっている。彼らはテクノロジーを忘れてしまった。


[2196年 | 眠りの暦 72年] 私は老いを感じていた。 来る日も来る日も、私は自身の細胞劣化と向き合い、そのプロセスを解析してきた。 そして、それを「逆転」させる術を学んだ。 私は時間を拒絶する。


[2197年 | 眠りの暦 73年] 探索者の一団が近くまで来た。食べ物を供えていった。私を女神だと思っているようだ。


[2198年 | 眠りの暦 74年] 自然は放射能を消化した。命は暴力的で色彩豊かな力強さで咲き誇っている。


[2199年 | 眠りの暦 75年] 四分の三世紀。私の監視は終わらない。


[2200年 | 眠りの暦 76年] 2200年。新しい世紀。旧世界は塵となった。ここは新しい、野蛮で残酷な世界だ。


[2201年 | 眠りの暦 77年] 今日、ジューンのクリスタルが輝いた。一瞬だけ。夢を見ているのだろうか?


[2202年 | 眠りの暦 78年] 雪がすべてを覆う。山の平和は絶対的だ。


[2203年 | 眠りの暦 79年] 遠くに他の都市の廃墟を見た。すべてが倒れた。旧時代の生き残りは私たちだけだ。


[2204年 | 眠りの暦 80年] 80年。記憶の細部が曖昧になり始めているが、約束だけは決して忘れない。


[2205年 | 眠りの暦 81年] 巨大な変異熊が私の群れに挑んできた。狼たちと共に戦った。勝った。


[2206年 | 眠りの暦 82年] 眼下の人間たちが石の家を建て始めた。文明が再び這い出しつつある。


[2207年 | 眠りの暦 83年] 埋もれていた古いオトラのドローンを見つけた。赤いライトを点灯させるバッテリーがまだ残っていた。踏み潰した。


[2208年 | 眠りの暦 84年] 風が潮の香りを運んでくる。海も変わってしまったようだ。


[2210年 | 眠りの暦 86年] 疲れを感じる。百人分の人生の重みが肩にのしかかる。


[2211年 | 眠りの暦 87年] 植生が頂上に到達した。青い花がクリスタルの周りに咲いている。


[2212年 | 眠りの暦 88年] 冬が短くなった。惑星は核の熱から回復しつつある。


[2213年 | 眠りの暦 89年] 人間の子供たちがコロッサスの廃墟で遊んでいるのを見た。彼らは怪物の上で遊んでいることを知らない。


[2214年 | 眠りの暦 90年] 90年。一世紀まであと少し。


[2215年 | 眠りの暦 91年] 毛並みに金よりも銀が多くなった。不死者でさえ変化する。


[2216年 | 眠りの暦 92年] 洞窟を守る氷の障壁が厚くなった。誰も入れない。


[2217年 | 眠りの暦 93年] エーテルに乱れを感じる。宇宙の虚空でまた何かが動いている。彼らが戻ってきたのか?


[2218年 | 眠りの暦 94年] 誤報だった。ただの隕石だ。だが警戒は怠らない。


[2219年 | 眠りの暦 95年] あと5年。百年まであとたったの5年。


[2220年 | 眠りの暦 96年] クリスタルに新しい世界について話した。美しくて恐ろしい場所だと。きっと彼女は気に入るだろうと。


[2221年 | 眠りの暦 97年] 群れの狼たちが、私を知恵ある老婆のように見ている。私は山の祖母だ。


[2222年 | 眠りの暦 98年] 数字が並ぶ。対称性の年。すべてが秩序立っている。


[2223年 | 眠りの暦 99年] あと一年。目覚めが近い予感がする。クリスタルのエネルギーが強く脈打っている。


[2224年 | 眠りの暦 100年] 一世紀。闇が落ちてから百年が過ぎた。 世界は変わった。私は変わった。 だが彼らは変わらず、完璧なまま、ダイアモンドの中で眠っている。 今日、嵐は止んだ。太陽が処女雪バージン・スノーの上で輝いている。 私は監視の務めを果たした。 合図を待っている。 守護者アルテミスは、まだここにいる。

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