第13章:揮発性 ―道は進むものではなく、昇るもの―(第1部)
私たちはさらに上の階へと進んだが、騒ぎを感じ始めた。
至る所でガラスが割れる音が響く。
アンキロが階段のドアを少し開けて様子をうかがう。
「クソッ……」
ロボット蜘蛛の群れが、全方位からビルを取り囲み、壁を破って侵入してきていた。
あらゆる種類のシンセティックがなだれ込んできているに違いない。
階段を登り続けるしかない。遅かれ早かれ、奴らは追いついてくる。
82階まで来たとき、恐れていたことが起きた。
すべての階段が封鎖されていた。
下から登ってくる音と、上から突入してくる部隊の音が聞こえる。
包囲された。もう上には行けない。
私の体調は最悪だった。
ちょうど階段のドアの一つを通り過ぎようとした瞬間、私のすぐ横でドアが爆発した。
衝撃で壁に叩きつけられ、耳鳴りが激しく鳴り響く。
方向感覚を失った。
アンキロがライフルを乱射しているのが見えた。一発、二発、三発、四発。
彼は格闘して一体のユニットを階段から突き落とし、私の名を叫んだ。
「クリスタル! しっかりしろ! 殺されるぞ!」
その時、私に向けられた銃口が見えた。
発砲された。
時間が、完全に停止した。
ガラス片が空中で回転しながら飛び散っている。
その破片の中に私の姿が映り、この紛争のすべてが反射しているのが見えた。
遠くで、ジューンが背中にロケット弾を受けながら、あらゆる回避行動をとっているのが見える。
紛争は完全にエスカレートしていた。呆然とする。
弾丸がゆっくりと私の顔に近づいてくる。
私はただ本能で、まるで邪魔なものを避けるかのように、単にそれを通り過ぎた。
哀れなアンキロが床に倒れ、二体のスパイダーに押さえつけられながら、上に乗ったシンセティックに向けてピストルを撃っているのが見えた。
上階では待ち伏せ部隊が降下準備を整えている。スパイダーは至る所にいた。
その時、私は理解した。
後戻りはできない。
あの反乱の日と同じだ。私はまた、袋の鼠だ。
戦わなければならない。
私は最高の祈りを込め、特別なクリスタル・レインフォースを作り出した。
長さ1メートルの、ダイヤモンドの刃。
それを鎖と手で支え、対人用の巨大な刃物として、スパイダーたちをブリキ缶のように切り裂き始めた。
アンキロを解放する。
他のスパイダーが網を放つが、投げナイフで逸らす。
シンセティックたちが壁に張り付き、発砲してくるが、彼らも、その弾丸も、私にとっては止まっているだけだ。
机を蹴り飛ばし、宙に舞わせる。書類とカオスの間に身を隠し、視界から消える。
ダイヤモンドの刃を一体に突き刺し、引き抜き、鎖を引いて戻す。
アンキロはようやく起き上がり始めていた。
彼が階段で援護しなければ殺されると気づいた私は、引き返し、獣のように階段を飛び降りて近接戦闘に突入した。
今の状態の私に、奴らが勝てる見込みはない。
組織的に、登ってくる敵を解体していく。
最初の一体は、垂直に刃を頭上から突き刺し、方向感覚を奪う。
二体目は鎖で絡め取り、階段の外へ押し出し、一瞬だけ宙吊りにする。
慣性の引力を感じた瞬間、鎖を放し、ユニットを虚空へと落とす。
突破口を開いた。
アンキロに近づくと、時間は正常に戻っていた。彼はリロード中だった。
「神に感謝だ、お嬢ちゃん!」
アンキロが叫んだ。
「お前がフラッシュみたいに動く時のそれ、大好きだぜ。特に俺の首が飛びそうな時はな。ああ、助かった、ハハハ!」
「喜んでる場合じゃないわ。上で待ち構えてるし、もっと多くのスパイダーが入ってくる」
アンキロは見事にピストルをリロードし、ライフルを構えた。私も同じく構える。
私たちは困難ながらも階段を登り続けたが、再び包囲され始めていた。
アンキロが言った。
「無理だ。誰かがテラスまでの階段を一掃しない限り、たどり着けない」
私は彼を見つめた。
「何の話?」
アンキロは皮肉っぽい口調で答えた。
「ライフルの先だけじゃこれ以上速く進めないし、重力エンジンを使えば、ただでさえボロボロの階段を崩落させるだけだ」
「もし、強力な突撃能力と潜入能力を持った『誰か』がいれば話は別だがな……」
私のことだとわかっていた。
本当にできるかわからなかったが、私はリーダーだ。
分別よりもプライドが勝った。
「何を言ってるの、アンキロ?」私は挑発に乗った。「誰がここの『師』か見せてあげるわ」
私は自殺的な突撃を敢行した。
全速力で駆け上がる私に、弾丸の雨が降り注ぐ。
正直、あまり制御できていなかった。
アンキロは登ってくる敵に対処し、私は降りてくる敵を排除しようとしていた。
単純に、あまりにも困難だった。
すべての鎖と短剣を空中に放ち、至る所に突き刺して滑車として使う。
銃声が絶え間なく響くが、『支配の推量』は戻ってきている。もう当たらない。
最初の一体、単純なスパイダーは、投げるためのガラクタとして使った。
次は近接戦闘。短剣を刺そうとするが、すべて弾かれる。
ダイヤモンドの刃を使い、胸部から床へと貫通させ、縫い付けた。
引き戻し、再び距離を詰める。それを弾除けの盾にし、進みながら数体を道連れにする。
敵の真ん中にいた。捕まえようとしてくるが、無理だ、遅すぎる。刺そうとしてくるが、無駄だ。撃とうとしてくるが、同じことだ。
喉元に刃、胸へと切り下ろし、回路を引き抜き、強化された拳で顎を砕き、鎖でバランスを崩させる。
そして一体の頭を引きちぎると、赤い流体が噴水のようにあたり一面に飛び散った。
狂乱状態だった。止まる時間などない。
戦闘用インスタンスたちが血で滑り、ある程度制御された不均衡の中で階段を転げ落ちていく。
髪が「血」で濡れていく。武器を握る掌に赤い点が落ちるのが見える。
停止した時間の中で、一瞬それを見た。我に返り、即座に次の動きを実行する。
胸への蹴り、壁へのバウンド、拳の強化。
次の一体の胸郭を一撃で粉砕し、壁まで貫通させ、コンクリートの壁にクレーターを残す。
残りのスパイダーは撤退し、再編成を図ろうとしていた。シンセティックたちはすでにボロボロだった。
私たちは登り続け、147階まで来た。
途中、突入してくる特殊部隊、強襲部隊、装甲部隊を解体し続けた。
一瞬振り返り、バラバラになった死体を見た。
「人間だった」
「私が今殺したのは」
「考える時間さえなかった」
死体は瓦礫とインスタンスの部品の間に散らばっていた。
視線を下げ、アンキロの絶え間ない足取りを追い、テラスへ続く階段を登る。
私たちは非常に特殊なポイントに到達していた。
階段を出て、デスクが並ぶ広いオフィスフロアと廊下を通り抜け、その正面にあるテラスへの直通階段まで行かなければならない。
だが、ドアを開けようとした瞬間、アンキロが私を引き戻し、炎と弾丸の雨がドアを吹き飛ばした。
待ち伏せしていた装甲インスタンスだ。
アンキロの弾薬は尽きていた。彼は首を横に振るだけだ。
私の短剣はボロボロで、鎖もほとんど残っていない。ダイヤモンドの刃も欠けてきている。
あの廊下を渡るのは自殺行為だと明らかだった。
巨大なヘリコプターのローター音が聞こえ始めた。
どこから来ているのか正確にはわからなかったが、あの最後の通路が完全な待ち伏せポイントであり、オトロラが全戦力と策略を注ぎ込んでいるのは明白だった。
私は血まみれで、階段中に撒き散らした血とオイルで靴が滑りそうだった。
装甲ユニットは一体だけ。簡単そうに見えるが、そうではない。罠だ。
罠にはまらなければならない。だが、うまくやる必要がある。
私はアンキロに言った。
「ここにいて。私が何とかする。階段に隠れて出てこないで。ひどいことになるわ。もし私が死んだら、窓から飛び降りて、最後の賭けで照明弾を上げて」
アンキロには弾薬がなく、ビルを崩壊させる恐れがあるため重力エンジンを使いたがらなかった。
それでも、彼はそれを使うことを天秤にかけていた。それが彼に残された最後の切り札だったからだ。
地球の重力を一点に集中させ、地面に押し潰す『重力摂動』。
それが彼の最後の隠し玉だ。
私は全速力で階段から飛び出した。
装甲ユニットがマシンガンの全弾を毎秒の勢いで解き放つ。
私は通路から通路へ、デスクからデスクへと移動する。すべてが宙に舞う。
それでも、私の時間制御と視覚の方がはるかに上だった。
突然、十分に近づいた時、装甲インスタンスの弾幕で宙を舞うデスクの下をくぐり抜けながら、最後の、傷だらけの鎖を投げた。
オフィスの偽天井、パイプの間に結びつける。
騒乱の中を引き寄せ、カオスの中から亡霊のように、装甲ユニットの目の前に現れた。
最後の動きで、装甲ユニットはそれを予測し、私の鎖を撃ち抜いた。
私は空中に吊り下げられた。掴まるものもなく、行動するための時間は無限にあるのに、選択肢なく浮いている。
そして、ゆっくりと、しかしはっきりと、ロボットの声が聞こえた。
『私はオトロラだ。降伏しろ、クリスタル』
私のダイヤモンドの刃は装甲兵の頭まで数センチのところにあった。
そして彼は、ゆっくりとマシンガンを私の胸に向け直していた。
私の『支配の推量』による時間変容の作用でゆっくりと。だが確実に、発砲する決意を持って。
自分のゲームに嵌められた。
オトロラの計算能力は、少なくとも思考においては、私と同じかそれ以上に速かった。
彼の旧式な関節やモーターを持つ機械は、私の生体的なそれとは比較にならないが、精神的には、彼の速度は私と同等だった。
彼は時間を稼ぐだけでよかったのだ。皮肉なことだ。
彼のマシンガンがゆっくりと定まる。私の刃が彼の顔に近づく。
衝撃から身を守るための強化を作ろうとする。私の運命は決まった。間に合わない。
突然、気づかぬうちに、展望台の窓全体が爆発し、数千のガラス片が制御不能に回転しながら宙を舞った。
反射の中にすべてが見えた。軍隊だ。ほんの一握りの。
人間の特殊部隊の3人が、爆弾でビルの階のガラスと窓を破ったのだ。
彼らが降下してきたヘリコプターの横に据えられたマシンガンが、私に向けて発砲を開始し、オトロラの装甲兵も私に向けて発砲した。
オトロラの弾丸が、展開中の私のクリスタル装甲を砕いた。不完全だった。弾丸が次々と私を貫く。
私のダイヤモンドの刃は彼をかすめただけで、滑ってしまい、装甲に突き立てる力がなかった。
オトロラの弾丸の衝撃で私は後ろに飛ばされ、ヘリコプターの弾丸がオトロラの装甲兵のいる位置をすべてなぎ払った。
軍用ヘリの炎と弾丸の嵐が通り過ぎた場所で、彼は赤熱して溶け落ちた。
私はデスクの間に倒れ込み、軍人たちがロープで私たちのいる階に侵入してきた。
私は重傷を負い、急速に出血していた。トンネル視(視野狭窄)が始まり、時間はあまり残されていない。
大量出血を止めるために傷口を結晶化し始めた。
軍人たちが私に近づいてくる。彼らの声が聞こえる。
「逃げ切れると思ったか、お嬢ちゃん?」一人が言った。
「お前はその器じゃない。裏切り者のアマにはお似合いだ」
彼は私の髪を掴んだ。まだ傷を塞ぎきっていない。
乱暴に床に押し付けられ、私は喘いだ。「離せ、クソ野郎!」
軍人は演説を続けた。
「お前みたいなアマをどうするか知ってるか? 誰が飼い主か教えてやるんだよ」
後頭部に銃の冷たい感触を感じた。
その場で処刑されるのは明らかだった。
すべてが再び麻痺したが、もう戦う力はなかった。
『支配の推量』のせいで、私の処刑は永遠に続くかのように感じられた。トンネル視が止まらない。
ヘリコプターのローターのくぐもった音が聞こえる。近くにいるから凄まじい音のはずだが、すべての音が歪み始め、今や視野は点になりかけている。
気絶する──。
その時。
(アンキロが重力デバイスを手に取り、重力波を準備した。わずか数秒の出来事だが、クリスタルにとっては永遠だっただろう)
重力波が落ちた。
まるで天の頂から降り注ぐような、言葉にできない重力の凝縮。
それが落ちた瞬間、私たちがいた階でビルの一部が崩壊し、ヘリコプターは制御を失って緊急離脱した。
兵士たちは衝撃を感じてバランスを崩した。
私に聞こえるのは、激しさを増して叩きつける雨の音と、ビルの金属が悲鳴を上げ、軋む音だけだった。
人間の兵士たちが体勢を立て直そうとしている間に、アンキロは静かに一人ずつ刺し殺し、窒息させていった。
ビルの軋み、露出し、割れ、ひびが入った窓から入り込む絶え間ない雨音、そして天空にこだまする重力波の轟音の中で。
彼は3人の兵士を、完全な沈黙の中で殺した。
私はすでに泣いていた。涙が勝手に溢れてくる。
頬に温かい手のひらを感じ、誰かの声がした。
「お嬢ちゃん! お嬢ちゃん、おい、クリスタル!」
「美しいお嬢ちゃん、起きろ!」
最後の一言が聞こえ、力を振り絞って焦点を合わせた。アンキロだった。
私たちがいた階はほぼ半壊し、すべてが剥き出しになり、雨と湿気が入り込んでいた。
数匹の小型スパイダーが近づいてくる。偵察用であることは明らかだった。
このビルにはもう戦闘部隊はいないようだ。
アンキロは言った。
「へっ! 『美しいお嬢ちゃん』には反応したな? 女性にはいつだって効果てきめんだ。どうだ、やったか?」
「まだよ……でも、なんて幸運なの。もうテラスに上がる必要はないわ。もうないもの」
「重力パルスを放ったら、まあ、テラスと上層階が崩落しちまった。ここからなら問題なく照明弾を撃てる」
「じゃあやってよ、何を待ってるの?」
「何でもないさ。お前が完全に気絶しないようにしたかっただけだ。ほら、傷を塞ぎ終えろ。早くしないと失血死するぞ」
私は腹部の結晶化プロセスを続けた。オトロラの装甲兵が真っ二つになり、もう赤熱していないのが見えた。
そしてついに、アンキロが照明弾を発射した。
永遠のように感じられた。私は安堵のため息をついた。
時間が過ぎ、もう一発、そしてもう一発。
「セサルは……頼りになるのかしら?」
時間が過ぎても、何も起きない。
絶望し始めた。
……
アンキロは座り込み、照明弾を床に落とした。私の額に触れ、熱を測ろうとしている。
雨は止まない。
とっくに夜になっており、空には月がはっきりと見えた。
ヘリコプターが戻ってきた。攻撃準備をしているが、意味はない。
アンキロは屋外にいる。自分の武器で自滅させる方法はない。
遠くからハエのように撃ち落とすだろう。いつもの仕事のように。
その時。
私の脳裏に、あの悪夢の歌が響き始めた。遠いこだまのように。
わずかに覚えている言葉の断片が、意識の底から浮かび上がる。
"With... a Thunderous..."
(雷鳴のごとき……)
"Break... the chains... that bind..."
(鎖を……断ち切る……)
"My Music... Defines..."
(私の音楽が……定義する……)
口ずさもうとしたが、声にならなかった。唇が震えるだけだ。
私は確信した。もうすぐ、死ぬのだと。
この冷たい雨に打たれる死の床で、私はあの旋律が、もう一度だけ頭の中を駆け巡るのを聞いていた。
【BGM・イメージソング】
冷たい雨に打たれ、薄れゆく意識の中で。
クリスタルが死の淵で聴いた、最期の幻聴。
それは、虚空が歌う子守唄であり、鎮魂歌でもありました。
幽玄で、悲痛な女性ヴォーカルバージョンです。
この絶望の余韻を、楽曲と共にお楽しみください。
「Shattered Reality (The Last Breath)」
(Atmospheric Female Vocals)
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(※推奨:読了後、雨音と共に浸ってください)




