第39章:強奪(第3部)
アンキロス:アルファ#1の背徳者
事務用品や重機で封鎖した正面入り口に、「皮を纏いし者」たちが群がっていた。
奴らは力任せに押し入るのではなく、鉄の棒やバールを使い、執拗に扉を解体し始めていた。感染した群衆の雪崩が私たちを飲み込むのは、もはや時間の問題だった。
「ダニカ、奴らは……人間か? それとも人間ではないのか?」 私の問いは、倫理の境界に漂う疑念だった。
「正直に言って、私には分からないわ。……だが、私にとって奴らはもはや人間じゃない!」 ダニカは突き放すように言い放った。
扉は絶え間なく軋み、ガラスが砕ける音が響き続ける。この障壁は遅かれ早かれ崩壊するだろう。 私の「制御演算(推定制御)」が発動し、時間の知覚が極限まで引き延ばされる。
扉が、ついに限界を迎えようとしていた……。
クリスタル:アルテミスの守護者
アルテミスの出血を部分的に止めることには成功したが、彼女は依然として意識を失ったままだ。 壁を這い登り、建物のわずかな隙間を探して侵入しようとする「皮を纏いし者」たちの姿が視界に入る。
私はこの場所を動くことができない。逃げようとすればアルテミスを危険に晒し、戦えば同じように彼女を守りきれなくなる。私たちは袋のネズミだった。
「制御演算」が告げる。数秒後、航空ドローンから私の位置へロケット弾の斉射が来る。
アルテミスを死なせるわけにはいかない。私は持てる力のすべてを注ぎ込み、自身の肉体と彼女を覆うように結晶の装甲を極限まで強化した。そして、衝撃の瞬間を待った。
次の瞬間、ロケット弾の奔流が周囲を蹂躙した。ドローンたちの攻撃が建物を部分的に破壊していく。その轟音の中で、アンキロスがその力を解放し、数千もの「皮を纏いし者」を圧殺する気配がした。
だが、抗う術はなかった。
天井が凄まじい音と共に崩落し、私は床へと叩きつけられた。結晶の抵抗力によって命は繋ぎ止めたものの、私は重い瓦礫の下に埋没した。
そして、「皮を纏いし者」たちは――瓦礫の中にいる私には目もくれなかった。
奴らは私を無視し、私の演算が導き出した「アルテミスの推定位置」へと一斉に雪崩れ込んでいった。
「戦闘で負傷したアルテミスを抱えた状況は、私を逃げ場のない**『詰み』**の状態へと追い込んだ。私は無防備に晒され、もはや選択肢は残されていなかった。」
「もし私が降り注ぐロケット弾の雨を食い止めなければ、アルテミスは間違いなく命を落としていただろう。だが、その代償として……今、私は瓦礫の下に深く埋もれている。」




