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髑髏王と枇杷の姫  作者: べにいろたまご
第九幕 終焉の序曲
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9-5 小聡明い謀

第九幕 終焉の序曲

五章 い謀




 広間では、大天使の言葉に導かれ、期待が少しずつ強まり濃くなりはじめていた。しかしまだ、すべてを肯定はできない。光を奪われたロウクワット一族は、表向きは俯き、従順を装う。だが胸の奥では、失った力への苛立ちと誇りの反発心が渦巻いていた。


 スノウはゆっくりと歩みを進める。白磁の肌に光が反射し、純白の髪が微かに揺れる。銀色の瞳は一族の奥底にある傲慢さと怒りを見据え、内心では歓喜の火花が散っていた。


 ――さあ、もっと僕の言葉に、耳を傾けろ。僕のために、お前たちのその恐怖を自尊心で砕け。


「あなたがたが抱く不満や怒り……それは決して無駄ではありません」

 スノウの声は柔らかく、慈愛を帯びている。だがその響きは、一族の心に微かな炎を灯す毒でもあった。


 ルビアが顔を上げ、目を見開く。


「……無駄ではない、ですか?」

「ええ。むしろ、今こそ活かすべき時です」


 スノウは一歩前に出て、広間を静かに見渡す。


 その目は慈愛に満ち、同情しているように見える。だが、心の奥では狡猾な策が渦巻く。

 ――髑髏王への雪辱を果たす方法……この言葉を口にすれば、彼らの正義感も傲慢さも、復讐心も、すべて僕の道具になる。


「髑髏王は恐ろしい。誰もがその前に屈し、力を奪われました。けれど、方法さえ知れば、彼に雪辱を果たすことも可能です」


 スノウは微笑み、手を軽く掲げて見せる。

 その仕草は、慈愛深く、天使の導きのように見える。


 ルビアは息を呑む。胸の奥で、怒りと誇り、失われた力への渇望が一気に燃え上がる。

 ――方法がある……僕たちが髑髏王に立ち向かえる方法が。


「どうすれば……?」

 一族の声が重なり、緊張と期待が広間に満ちる。

 スノウは微笑を深める。

 ――彼らは正しい方向へ導かれると思っている。しかしその先にあるのは、僕の欲望を満たすための罠だ。


「まず、心を澄ませ、過去を忘れてはいけません。光を奪われた屈辱を胸に、正しい行動を選ぶのです。そして、私が示す小さな策を活用してください」


 言葉は穏やかで純真な響きだが、内側には巧妙な焚き付けが含まれている。


 ルビアは顔を真っ赤にし、拳を握る。


「……正しい行動……策……!」

 胸の奥で、力を取り戻すための計略が鮮明になり、怒りと復讐心が熱を帯びる。


 スノウの微笑は、慈愛と狡猾さの完璧な混合だった。

 表向きは導き手、裏では操り手。胸の内でスカーレットを傍に置ける瞬間を夢見て、狂気と歓喜が渦巻く。


 「髑髏王に雪辱を果たす……それが叶えば、あなたがたは再び力ある者として、この世界に正義を示すことができるでしょう」

 甘美な言葉は、一族の心に正義感と傲慢さを混ぜ合わせ、さらに深い復讐心を芽生えさせる。


 広間の空気は熱を帯び、静かだったはずの沈黙は、微かな高揚に変わる。

 スノウは内心でほくそ笑む。すべては予定通り。怒りも誇りも復讐心も、僕の欲望の糧となる。


 一つずつ、スカーレットを手にするための舞台が整う。

 この小さな策が、大きな狂気の序曲となることを、彼らはまだ知らない。

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