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不遇のネルフィス その2

「今度こそ俺に相応しい女性と再婚する。お前とは離婚だ」

「そ、そんな。突然言われても!」


「もう決定だ。明日出ていけよ」

「……そんな、酷い……」


「そもそもお前の不貞が原因なのに、見苦しいぞ! 離婚届けに記入して荷物を纏めろ! 追い出されたいのか?」


「うっ、分かりました。明日出ていきます」


「ああ、良かったわ。不出来な嫁が居なくなって。せいせいするわ」

「ひ、酷いです、お義母様」

「鬱陶しいわね。もう義母なんて呼ばないで頂戴。あー、ヤダヤダ!」

「うっ、うっ」


 睥睨(へいげい)し罵倒する夫と姑に、言い返すことも出来ず伯爵家に戻されたネルフィスとリーネ。



 それを見てほくそ笑んだブルボンネは、ネルフィスに言うのだ。


「出戻りのあんたでも、後妻に欲しいスケベ親父がいるのよ。不貞女でも良いんですって。良かったわね。あんたなんかに無駄金は使えないから、近いうちに嫁いで貰うから。ほほほっ。貴族の癖に幸せになれないのね」


「うっ、そんな……。リーネはどうなるのですか?」

「あんたの娘は、下女として使ってあげるわ。安心なさい。子連れじゃ嫁にいけないでしょ?」


「あ、ああ。そんな…………」



 泣き崩れるネルフィスを見て、リーネは助けを求める為に走った。

 公爵家で使用人達と仲良くなった彼女は、女性に弱いロマンドのことを知っていたから。 


 彼のよく立ち寄るパン屋で待ち伏せていたリーネは、ネルフィスのことを話して協力を要請した。


 頭を思いきり下げ「お母様を助けて下さい。お願いします」と涙ながらに訴えて。


 ロマンドはネルフィスの境遇に動揺したが、二つ返事で了承して、お金を銀行でおろしてリーネと共に侯爵家に足を運んだ。


「僕はネルフィス嬢と結婚の約束をしました。これは支度金です。すぐに籍を入れたいので彼女を引き取らせて下さい!」


 ドンと金貨の入った袋を、案内された応接室のテーブルに置くロマンド。

 予測していない事態に、たじろぐブルボンネ。


「あ、あんな傷物で良いなら、どうぞ持っていってよ! でももうお金は返さないからね。カルドネも良いでしょ?」

「あ、ああ。まあ良いだろう」


「じゃあ、この証書に結婚を認めると署名して下さい。支度金の金額も記入してありますから!」

「……ずいぶん準備が良いんだな。書けば良いんだろ、面倒だな。たかがネルフィスごときに」


「…………(なんて酷い言いぐさなんだ。本当に父親なのか?)ありがとうございました。では、これで」



 そう言って相場の三倍の支度金をブルボンネとカルドネに渡し、二人を馬車に乗せ宿屋に向かった。


「悪いのだけど、娘に、アンシェルに話してから迎えに来るから、数日待っていて下さい! このお金でドレスを買って、食事をして待っていて。

 きっと大丈夫だよ。娘は少し顔は怖いけど優しいから。

 絶対に力になるから待ってて。じゃあね」


「ありがとう、ロマンド様」

「あ、あの、ありがとうございます。でも良いのですか? こんなにして頂いて。私なんかに……」


「良いんですよ。学園のマドンナを助けられる栄誉を与えられたのだから。ね、リーネちゃん」

「うん。そうだよ、お母様。今は助けて貰おう」

「……そうね。ではよろしくお願いします」


 精魂尽きた表情のネルフィスは、倒れそうになりながらロマンドに感謝し頭を下げたのだった。



 その後心身ともにボロボロだったネルフィスは、一週間程宿屋で休息し、何とか気力と体力が少し回復した。

 その期間にリーネの情報網からアンシェルのことを聞いたり、リーネにカーテシーを教えて過ごしたのだった。


 緊急で強引な手段だった為、勿論二人は入籍していないし、これから口裏を合わせていく予定だ。



 こうして再婚話は、冒頭に繋がっていくのだった。






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